ノトス王国の旅路(2)~ みんなでお化け退治(中編)~
お久しぶりでございます(*- -)(*_ _)↷
「いない…」
「出ない……」
「「はぁ……」」
タイタ〇ック号のような豪華客船を探索し始めて早一時間。
所謂"出そう"なところは粗方制覇してしまったアミスたちは途方に暮れていた。
―訂正。アミス以外が途方に暮れていた。
「ねぇ、きっとこの船に幽霊なんていなかったのよ。もう諦めて寝ましょう?」
ね?と、優しく笑うアミスは探索中とは比べ物にならないほど嬉しそうだ。
「うぅ…でもなぁ。折角ここまで探したんだ…あと少し!あと少しだけ探そうぜ」
「―っ!うん!まだ行っていない東の旧倉庫フロアへ行ってみよう!」
うげぇ…旧倉庫フロアって私が地図を確認した時に"一番可能性がある"って思って、わざと避けていたところじゃんっ!
「ま、いいんじゃね?」
「うん、グレンが満足するまで付き合うよ」
うわぁんっ、今だけはラヴィルとキースの優しさが鬼に見えてくるよ~!!
「はぁ…じゃあ私は後ろからゆっくりついて行くから」
なるべく関わらないで、というアミスの言葉は嬉々として先頭を進む二人にはきっと届かなかっただろう。
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「うっわ、埃だらけじゃん!本当に放置されていたんだね」
「うん。みんな気を付けて進もう」
レグルが魔法で作り出した炎が、ぼんやりと五つの影を映し出した。
ワクワクと随分先を進む二人、のんびりと後を追う二人、そして猫背になって四人の後を付いて行く者一人。
「うっ、うぅぅぅぅ…」
少しずつ〈浄化〉の魔法を振りまきながらビクビクと最後尾を歩く少女は、いつもの面影を全くと言っていいほど残していなかった。
「―?アミス、レグルが右か左かって悩んでいるけど…アミス?」
「ふぇぇぇッッ!!きゅ、急に振り返らないでよぅっ!?」
他に意識を散らしていたアミスは、いつの間にか自身を見ていた二つの瞳に酷く動揺した。
「?お前、今日様子おかしくねぇか?」
「にゃっ、なにを言っているのよ!私はいつも通り―」
ガタンッ
「みぎゃぁぁぁぁぁあああああああああッ!?!!?!」
急に立った音にアミスは叫びながら前方の二人に抱き着く。
どうやらネズミが通ったせいで立て掛けてあった木板が倒れてしまったらしい。
「……………アミス」
「……………………まじかよ」
ラヴィルとキースは自身に抱き着いて震えているいる少女を眺めながら同時に溜息をついた。
「―――はぁ。やっぱりな。こういうことか」
「―うん。イベント好きのアミスが"幽霊退治"なんて面白いイベントに乗り気じゃなかった理由がようやくわかったよ」
しんみりと重大な何かを告げるような雰囲気で二人は呟き―。
「「まさか、幽霊が怖いだなんて……ぶはっっ!」」
同時に噴出した。
「~~~~ッッ!!わ、笑わないでよっ!?」
ぎゅっと掴んだ二人の服はそのままに、アミスは涙目で二人を見上げた。
「ふふっ、まぁ苦手な物は誰にでもあるからね」
「あぁ、例えそれが何時も冷静沈着で大胆不敵な奴だったとしてもな」
手のかかる可愛い妹を見るようなラヴィルと、優しく不敵に笑うキースの視線の温かさにアミスの羞恥はどんどん大きくなっていく。
「~~~~っっ!!」
いつも大人ぶっているだけあり、こういう場合の対処法が分からない彼女は赤面を隠すように二人の腕の中で俯いた。
「おーい、ラヴィル、キース、アミスー!どうしたのー?」
「おい、置いて行くぞ」
二人がアミスをからかっている間に、大分先を進んでいた二人が戻ってきた。
「あぁ、レグル、グレン。実はな、アミスって―」
"早く伝えたい"と言わんばかりに告げようとするキースにアミスは勢いよく顔を上げた。
「なぁっ!!?言っちゃダメぇッ!!」
背を伸ばして彼の口を塞ごうと試みるが、残念ながら腰が抜けてしまっているアミスはしっかりと立つことさえままならなかった。
「?どうしたのさ。アミス」
レグルとグレンもそんなアミスの異変に気が付いたらしい。心底不思議そうな顔をしてアミスを見ている。
「べっ、別に!?特に何もなかったけど!?」
実際に"姉"という立ち位置にあるレグルには特に知られたくないのだろう、羞恥で真っ赤なままの顔をツンと背けて言い放った。
「うん。特に何もなかったね。アミスが勝手に腰を抜かしただけだもんね?」
「~~~っぅ!?!!」
どうして言っちゃうの~ッ!!と目で訴えるアミスをスルーして、ラヴィルは目を丸くしている二人に視線を移した。
「腰を抜かしたぁ?そりゃまた何で」
「コイツ、幽霊が怖いらしいぞ」
「「!?」」
さも当然のように爆弾を落としたキースに、レグルとグレンは絶句してアミスを見つめた。
「ななななななななな―何を言ってんだよッ?!わ、私が怖いなんて、そんなわけあるわけないわけ、わけで…」
羞恥と困惑、そして"今幽霊が出るかもしれない場所にいる"という恐怖でアミスは上手に言葉を紡ぐことが出来なかった。
そんなアミスを見て確信したレグルとグレンはニヤリと顔を見合わせ―
「「うわっっっ!!」」
グルグルと混乱しているアミスの背後へ回り、大きな声で叫んだ。
「ふにゃぁぁぁぁあああああああっっっ!!!?!?!」
どことなく猫を連想させる悲鳴と反応を残して、アミスは再びキースとラヴィルを力なく抱きしめた。
「「「「ぶはっっ!!」」」」
いつもとは違い過ぎるアミスの反応に四人は噴出した。
「なっ、ま、マジで幽霊が怖いとか…っ!」
「あはははは…っ!アミス可愛いすぎっ!!」
「かっ、かわ!?ふみゃぁぁぁ~~~!!」
さらなる混乱に陥るアミスを他所に四人は気が済むまで笑い続けた。




