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少女と新しい戦友


「へい、連れてきましたぜ。親頭」


大男の声が廃工場に響いた。


「へぇ、今回は大漁じゃないか。その銀髪と女顔は高値で売れそうだねぇ」


うわお、人が変わっても私は銀髪でキースは女顔かよ。

これでもキース君、兄ポジションのキャラとして人気だったんですよ?


「ねぇ、私の妹はどうなるの?」


あくまでか弱い乙女を演じながら問う。


「妹?チビたちは奴隷商人に買い取って貰うさ。安心しな。ちゃんと売りさばいてやんよ」


奴隷商人に売りさばく、ということは……


「……貴方たちは誘拐集団なの?」

「そうさね。アタシらは【緑の攫い手】と呼ばれる山賊さ」


緑の攫い手…山賊。

うーん、この世界って中二病って概念あるのかな。

まーいいか。


「ずっとこうして子供たちを攫って奴隷として売っていたのね?」

「あぁ、ゲルバニアでは奴隷は当たり前だからな。しかも子供となれば簡単に攫えて、売り手はどこにでもある!アンタたちも良いところに売ってやるから安心しな!」


…なんでだろう。

なんか段々優しいオバサンに思えてきた。

この人宿屋の女将さん向いてるわぁ。


「了解。じゃあ罪状は誘拐および人身売買ね」

「あ゛?やるって言うのかい?嬢ちゃん」

「そうよ。そのためにわざわざ捕まったんだから。【緑の攫い手】五十三名。全員牢屋に入ってもらうわ」


全員に聞こえるように声を張って、嘲笑する。

オバサンが殺気立ったのを確認してから手の拘束を解いた。

解く…と言っても力技なんだけど。


「おいお前らやっちまいな。顔は傷付けるんじゃねぇぞ。存分に傷みつけてから最悪の相手に売り飛ばしてやるんだからな!!」


ぞろぞろと集まってくる男たち。

手早く空間魔法を発動させて敵を確認する。


(炎魔法使いが一人、土魔法使いが二人、六人が剣士で、残りが喧嘩得意組ってところね)


これなら五分もいらないだろう。


「ねぇキース。本当の魔法使いっていうのを見せてあげる」


迫ってくる男たちから視線を外してキースに向かってふわりと微笑めば、彼も苦笑い交じりの笑みを返してくれた。


「……あぁ、分かった」


返事を受けて空気中の魔力を練る。


「ホーちゃん、私の流れ弾が当たらないように子供たちを全力で守って」


(了解シマシタ。味方ト認識スル者ニ最上級結界ヲ展開。自動モードデ保護ヲ開始シマス)


「じゃあそっちはよろしくー!」


(オ任セ下サイ)


「おいガキ、さっきからブツブツうるせーんだよ!」


叫びながら拳を振り飾すユー君1。

取り敢えず拳と足を凍らせる。


「…なっ!?」

「アンタうるさいわ。よくよく集中していないと貴方たちの心臓まで凍らせてしまいそうなのよ。黙っていてくれる?弱者くん」


半径十キロは余裕で氷漬けに出来る魔力を弄びながら、男たちを煽る。


「…なッ!この糞尼ーァァァア!」


そう言って剣を抜くのはユー君8。


「だから、うるさいわ。もう少し静かにしていて下さる?」


一人一人相手にするのが面倒臭くなってきた。

…もういいや、みんなまとめて凍っちゃえ★


「〈氷薔薇の庭園〉」


ぼそりと呟いて足で床を突く。


すると私を中心に大きな氷のバラが広がっていった。

軍用A級拘束魔法、氷属性〈氷薔薇の庭園〉。

バラの蔓で敵を拘束しながら、棘で攻撃。

拘束しながら攻撃を与える一石二鳥の自己流魔法。


「な、んだッ!これはッ」

「動かない…?!」

「おい、マリス!早く炎を出せっ!!」


軽い混乱に陥る【緑の攫い手】の皆さん。

あと、炎の魔法使いがいることなんてとっくに把握済みですからね?


私がぼんやりと炎魔法師・マリス君を眺めていると、詠唱が始まった。


「〈燃えよ 燃えよ 燃え上れ 敵を滅せよ 火の子(ファイヤー)〉!!」

「…………」


え、マジ……?


「おぉぉお!流石はマリス!ほら早く解かせ!!」


え、マジでッ!?!?


「なっ、と、解けない…だと!?何故だッ!」

「おい、この氷おかしいぞ!」


騒ぎ出す誘拐犯一味。

でもアミスは倒すことなど忘れるほどに驚いていた。


(はぁあああああああああッッッ!?!?!何アレ!何アレ―ッ!あれは火の子じゃなくて、火の粉!!!ヒのコナだわッ!なに!?あんな中二病みたいな詠唱して出した魔法が火の粉!?しかもユー君たち大絶賛じゃん!頭おかしいのか!?)


「……キース。何、アレ」


おかしいのはアイツらだ、と思ってくれる仲間が欲しい。


「炎魔法だな。あの人あんなに若いのに下級魔法を省略呪文で…すげぇよ」

「……うそでしょ。キース本気で言っている!?あんな火の(こな)を見て何でそんなこと言えるの!?」

「え、いや。だって中級魔法を使えたら宮廷魔法師のトップ。下級魔法を省略詠唱で使えたら魔法師のエース…だぜ?」

「ぁ…………」


ダメだ、頭がパンクしそう。

つまりは火の粉でも魔法を使えているアイツはエースなの?

もうヤダ。帰りたい。

魔法をなめすぎでしょう。


「……おい、アミス。どうした?」

「…の」

「?」

「こんなの認められるかぁあああああッ!!魔法をなめすぎだッ、お前らッ!いいぜ、こうなったら全員丸焼きにしてやるッッッ!!」


怒りで思考は短絡化。

もはやアミスを止められるものはいなかった。


(発動させる魔法は炎属性の上級魔法以上全て。超上級も最上級もSSS軍魔法も全部合わせて炎地獄にしてやろう)


「えーっと?なんだっけ?〈燃えろ 燃えろ 燃え上れ お前ら全員丸焼きじゃぁあああああ!!〉」

「ちげーよッ!全然呪文ちげーよッ!ってか戻ってこいッ!!お前それマジでやべーから。本当に世界壊れちゃうからなッッ!?」


キースの叫びを無視して青白い炎はどんどん燃え上る。


「行くぞーッッッ!!!!」


アミスの叫びによって、氷薔薇の蔓を溶かそうと頑張っていた誘拐犯は彼女の手にある巨大な熱量の塊に気づく。


「「「「ぎゃぁあああああああああ!!!!!!!!」」」」


そこからは阿鼻叫喚。

炎属性だけでなくほぼ全属性のSS級魔法を乱発するアミスと、恐怖で失神したり神に許しを請ったりする誘拐犯。


しかしそんな地獄でも、気を使ったホロビーロによって奇跡的に死人はゼロ。

それこそ本当に世界を壊しかねないアミスは、これまた気を使ったホロビーロに呼ばれたレグルによって回収。


こうして【緑の攫い手】五十三名全員、無事に牢屋に入れられたのだった。

そしてアミスとキースの誘拐事件は幕を閉じた―



**



「…おい」


誘拐犯の投獄とレグルの長々とした説教を受け終わったアミスは、キースによって呼び止められた。


「あらキース、どうしたの?」

「……お前は本当にすげぇ魔法使いだ。だから、お前に頼みがある」


…ふむ。

魔法に関係があること、だよね?


「俺に魔法を教えてくださいッ!もう二度と誰も失わない力が欲しいんだ!」


そう言って思い切り頭を下げるキース。

隣にいるレグルは何事かと固まり、アミスはキースを見つめて思考に耽った。


「―分かった、貴方に魔法の何たるかを教えてあげるわ。そしてそれを学びながら考えなさい。貴方が守りたいものは何か、どうしたら守れるのかを」

「…っ!ありがとう!アミスッ!!」

「…と、言うことなんだけど。訓練にキースも追加していい?レグル」


勝手に許可してしまったけど、大丈夫か?


「はぁ…許可しちゃった後で言うんだね?いいよ。僕も競える相手がいるのは悪くないし」

「よしっ!じゃあキース明日からファルファード家で訓練よッ!!」


レグルと互角にやり合えるくらいに育てないとッ!

【闇属性】と相性が良いなんて珍しいもの!!


「えっ、はぁ!?ファルファード家ッ!?〈武の公爵家〉ッ!?ってことはコイツって…」

「お初にお目にかかります。ファルファード公爵家が三男、レグルです」

「…ぁ。マジか。こちらこそ初めまして。〈知の公爵〉カエルム公爵家の長男、キースです。よろしくお願いします」


おぉ、流石猫かぶりの達人。

インテリの見た目と相まって完璧に公爵家のご子息だぁ。


アミスが感心していると、キースの自己紹介を聞いたレグルの空気が固まった。一緒に誘拐された友達が〈知の公爵〉のご子息で、明日からファルファード家で一緒に訓練するってなったら驚くに決まっているのだが。


「………アミス?僕聞いていないよ?」


…お説教追加の気配がするぞ?

うへぇ、さっきまでたっぷり一時間使ってお説教していたのに。

…よしッ!ここは逃げよう!


「……じゃあ取り合えずお祭りに戻りましょうか!!私まだ綿あめとチョコバナナ食べていないのよ」


必殺★話題転換ッ!!

お祭りは深夜まで続くらしいし、食べたいのも事実だし!!


「………はぁ、分かった、そうしようか。でも、そのあからさまな逃げが何回も通用するとは思わないでね?」

「…ひッッ!?」


やばい、やばいよ、この子。

目が完全に笑っていないし、何よりオーラが黒いッ!!

戦いになれば余裕で勝てるだろうけど、なんか怖いよッ!?


「ほ、ほら、き、キースも行きましょう?」


この大魔王様と二人きりとか、ちょっと……

折角の友達だしね?うん。仲良くしようぜッ!?

…つまりは……道ずれじゃぁあああああああ!?!


「…アミス。後半に本音漏れちゃってる」

「!? マジか!!」

「ぷッ!…まぁいいや。ほらキース様も行きましょう」

「…ぁ、あぁ!」


幸せに満たされた表情でアミスの元へ駆け寄るキース。


笑いあう三人の姿を大きな月が照らしていた。




To be continued………




いつもありがとうございます。

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