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少女と建国祭


「んん~ッ!このサンドイッチ美味しいよ!レグル」

「へぇ~ってアミス!僕はトマトが苦手だと知っているじゃないか!あぁ!それッ、仕返しだ!」

「あーッ!私アボカド嫌いなのにッ!レグルひどいッ!」

「さきにやってきたのはアミスだろう!?」

「はいはい、食事中は静かに。レグル、アミス」

「「はーい」」


麗らかな春の日差しを受けながら中庭で昼食をとるアミスたち。

まぁ昼食といっても、サンドイッチのような簡単なものなのだが。


わいわいと四人で騒ぎながらとる昼食は、とても楽しそうだ。

権力があるためこのようなことをやったことがない三人と、戦争中だったため硬い保存食を戦友とかじったことしかないアミス。

初めての経験にみんな胸が躍っている。


「そういえばラヴィル。もうすぐ建国祭なんだって?」

「あぁ、そうだよ。三日後に城下でね。たくさん出店も出るから結構盛り上がるよ」


出店…?

わたあめ、りんご飴に焼きそば、焼きトウモロコシ、チョコバナナ…

射的や金魚すくい、投げ輪……

ーつまり、そういうのだよねッ!?

これは行くしかないよッ!


「……レグル」


必殺★涙目O NE DA RI 

涙目で少し首をかしげるのがポイント。

技を発動させたら、相手の目を見つめてじっと待ちましょう。


あざとい、キモイというコメントは受け付けておりません。

予めご了承ください。

…それに美少女だからいいの。

あざといもキモイも可愛いになるのッ!(多分)

あ、いや、別にね。

折角美少女に転生したんだから、って調子に乗っているわけではないよ!?

例え前世が男勝りな平凡女だったからと言って、決して調子に乗っているわけでは…というか!いいの。

美貌で敵を滅せなかった三千年前と違って、今は使い道があるんだから。


「…………人多いし、迷子になるよ」


じー


「…………レグル」

「………はぁ、分かったよ。どうせこういうときのアミスには敵わないんだから…ラヴィルやグレンは行くの?」


えっへん、勝利なり。

やっぱり諦めも大切ですよね!


「あー、お前たちが行くなら行こうかな」

「そうだね。みんなが行くのであればきっと楽しいし」

「やったー!みんなで一緒に回れるねッ!!」


一度も行ったことのないお祭りを思い浮かべてワクワクする。

うー、待ち遠しい。


ワクワクしている私を見て、何故か妹の面倒を見る兄のような顔で苦笑いするレグルとラヴィル。

けれどすぐに直し会話を再開する。


「お祭りは六時からだっけ?」

「うん、広場で点灯式をやってからお祭りが始めるからね」


へぇ、点灯式なんてやるんだ。

なんかお洒落。


「じゃあ六時にその広場に集合しようか」

「分かった。抜け道を使えるようにしとかないとだね、グレン」

「…そうだな」


素っ気なく答えているけど、僅かに口角が上がっていますよ?グレン。

ふと隣を見ると『手のかかる弟だ』とでも言いたげにレグルも笑っていた。


**


「うわぁ、たくさんお店並んでいるよ~!」


建国祭当日。

白いブラウスにひざ丈の赤いワンピースの平民姿で集合場所へと向かう私たち。自慢の白銀髪は後ろで三つ編みにしている。

一方、レグルは群青色のトップスに黒のズボン。

何気に平民に溶け込んでいるのだから、彼の変装技術は侮れない。


「あ、アミス。あの広場だよ!」


キョロキョロと見渡しながら歩いている私に、用意された舞台を指さすレグル。


確かにたくさんの人が舞台を見ているようだ。

舞台の上には点火台と小さな子供が五、六人集まっていた。

恐らくあの子たちが火をつけて、お祭りを始めるのだろう。


「ラヴィルやグレンはもう来ているかなー?」

「うーん…お忍びだし髪の色とか変えちゃっている可能性もあるからね…二人がアミスの白銀髪を見つけてくれることに期待するしかないんじゃないかな」


…私の髪ってそんなに目立つか?

まぁ確かに、それ以外目印がないことも事実なんだけどね。


「あ!分かった!空間魔法と光魔法を合わせて私たちが注目されるように仕向けようか?それか精神干渉魔法とか」


精神干渉魔法は【空間属性】と【闇属性】【雷属性】の複合で成り立つ。

闇魔法で相手の神経に干渉し、空間魔法で掌握、雷魔法で指示を送る。

簡単に言うようだが、見境なしに魔法を発動させるより細々と気を付ける精神干渉魔法の方が大変だ。


「……普通にラヴィルたち目指して転移すればいいんじゃない?」


いや、ここは人も多いしやめた方が…

という私の否定は後ろからかけられた声によって、喉の奥へ消えていった。


「いや、そんなことする必要ないよ」

「「え?」」


揃って振り返れば、深緑色の髪をした双子が立っていた。


「こんばんは、レグル、アミス」

「よう」

「ラヴィル、グレン!よくこの人混みの中見つけられたね!」


今まで髪の色で見分けていた節もあったのに、髪と瞳が同じになってしまった二人は雰囲気で見分けるしかなくなってしまった。


「まぁ…アミスの髪は目立つから……」

「……そう。それは…よかったわ」


うっわ…なんかとても心中複雑なんですけど。

いやさ、別に。

「アミスならどこにいてもすぐに見つけられるよ」

みたいな臭いセリフを求めているんじゃないの。

ただ、ね。

寄ってたかって人の髪色を目立つだのなんだのって…

「髪以外にも言うことがあるでしょうッ!」

って叫びたくなるんだよね……はぁ。


「あぁ、そうだ。ここからはラビとレンと呼んでね」


くそう、人の気も知らないでッ!

って、もういいや。

ラヴィルが()()で、グレンが()()…だね。


「それじゃあ、行こうか」


ラヴィルの一言によって、活気づいた屋台へ足を踏み込む。

会話をしている間に点灯式は終わってしまったらしい。

前を行く三人越しに人で賑わう屋台が見えた。




ふとその情景に足が止まった。

暖かな光が溢れる様子に目を見開く。


『あぁ、望んでいた場所はここにあった』


と、暖かい感情が胸に広がる。


急にどうしたのか全く分からない。

どうして胸が苦しく締め付けられるようなのに、嬉しく思うのか。

自分が何を望んでいるのか。何故この感情を懐かしく思うのか。

無意識の中まだはっきりとしないけれど、この暖かな風景の中にずっとレグル達がいてくれることを真に願った。




To be continued……

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