少女の目覚め(1)
青い結晶石がきらきらと照らす洞窟の中を一人の少年が歩いていた。
ランタンを掲げ行く先を照らしては、何度も地図と比較している。
「うーん……さっきのところからずっと一本道だよねぇ。もうそろそろ氷の大広間についてもいいころだと思うんだけど……」
困惑した様子で辺りを見渡し氷に手をあてる少年。
「ふむ…何千年か前に大魔法使用の痕跡あり……うー、やっぱり前に進んでみるかぁ」
お化けを怖がる子供のような様子で再び少年は足を進める。
淡い青白の光が七歳になった少年の背に影をつけていた。
「…ん?出口だ……!」
今までとは比べ物にならないほどの光に思わず目を細める。
すると細い道から一変、開けた先には大きな空間が広がっていた。
魔素の影響なのか、まるで太陽のような明るさで結晶石はソレを照らし出す。
「…氷像………?」
青白の光を受け輝く巨大な氷。
縦三十メートル、横八十メートルくらいの氷像にしては不格好な氷。
しかし青いクリスタルの光を受けて輝く氷はとても幻想的なモノだった。
―それは少年が思わずため息をついてしまうほどに。
しかし一分もすれば、少年は氷から目を離し大広間を歩き始める。
あちらこちらに人の骨のようなものが落ちているが見ないふりだ。
あとは、鉛玉のようなものやナイフらしきものなどもチラホラと見えた。
一番驚いたのは失われたといわれている大魔法の魔法陣跡。
大きさから考えると、五、六人の術者の命が必要になってくる。
一体どんな敵を殺したのやら。
そこまで考えたところで少年はふと顔を上げた。
視線の先にはさっきまで見ていた大きな氷。
床の魔法陣とその氷を見つめては何やら考えている。
「え………?」
おそらく術が発動したであろう場所から氷へ向かって視線を這わせていくと、何か認めたくない現実を突きつけられたような表情をして少年は一歩退いた。
その顔には困惑の表情が強くにじみ出ている。
「おんなの…こ?」
ようやく絞り出したようなその声は困惑と恐怖で震えていた。
少年の紅い瞳は氷の中央にいる一人の少女に釘付けになっている。
さっきまでは神聖さすら感じていたその氷像は、今やその少女をとらえる牢獄にしか見えなくなっていた。
「!」
しっかり三分は経った時、なにを思ったか少年は駆け出し氷像に手を当てて呟いた。
「〈融けよ〉」
無駄に溢れている大気中の魔力を全開に使って〈魔法〉を発動させる。
大火災が発生したわけでも、大地震が起きたわけでもないのに巨大な氷は見る影もなく融け去っていく。
「よっと」
「親方ー空から女子がー」的な感じに少年は少女を受け止める。
「……………え」
のちに少年は語る。
ここで気絶しなかったことが今回最も褒められるべきだった、と。
「うそ……生きてる……………」
自分の腕の中ですぅすぅと寝息を立てる少女。
極寒の氷の中に閉じ込められていて、今息をしている――
「え、なんでぇ………」
あまりに荒唐無稽な話に少年の呆けた声が広間に反響した。
To be continued・・・・・