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少女と救出(1)

★レグル視点です


「アミス―ッ!」


急に駆けだしたアミスを追いかけて噴水までやってくる。

―何かを考えている彼女の横顔は、見たことがないほど辛そうだった。


…本当に、今日はどうしたんだろう。

約二年間一緒に過ごして、彼女のことは大体わかってきたつもりだ。

いつも明るくて前向き、考えることは明らかに異質で突拍子もないことばかり。

でも彼女の隣にいると、とても心地が良かった。

彼女は何でも認めてくれる。

他人が畏怖するようなことも、笑って認めて手を取ってくれる。


でも、彼女はたまに遠いどこかにいる様な目をしていた。

ココじゃない、遠い、遠いどこか。

明るい顔をしていても、心の深くに影を落としている何かがあった。

彼女はそれを絶対に隠す。だから、僕も踏み込みはしなかった。

でも―今日の彼女はおかしい。

何かから目をそらしているような、でもどうにかしようとしているような、そんな葛藤を感じる。

だから、彼女が口を開いたとき嬉しかった。

なのに――


「…どうした?」


アミスの尋常じゃない雰囲気を見取ったグレン様が、アミスに問いかけた。

噴水の中央の像から視線を外し、彼女の瑠璃色が僕たちを見抜く。


「…レグル、グレン様。ここからは危険が伴います。覚悟を、決めてください」


…何が彼女をそんな顔にさせるのだろう。

今にも壊れて、崩れ落ちてしまいそうな危うい顔。

泣きそうなのに、それを必死にこらえて我慢している、そんな顔。


君が言ったんじゃないか。

一人じゃない―って。


「…覚悟なら、生まれた時からきまっている」

「うん。大丈夫だよ、アミス。僕たちは一人じゃない」


少しだけ、アミスが目を見開いて微笑んだ気がした。

…願望かもしれないけど。


そして、彼女は目を閉じて深呼吸をした。


「…うん、行こう。王子殿下を助けに…ッ!」


今回はちゃんと微笑んだ。



***



「…王宮にこんな場所があったとはな……」


薄暗い道を歩きながらグレン様が呟く。

煌びやかな王宮とは異なり、ここは迷宮のような雰囲気を持っている場所だ。


「アミス、よくこんな場所知っていたね」


ここは温室の地下通路。

双子の噴水にある像を動かすとここに入る階段が現れる仕組みになっていた。

―明らかにヤバい雰囲気はするんだけどね。


「…殿下がヒントをくださったじゃない。だから分かったのよ」

「ヒント…?あぁ『水の双子に眠る』ってやつね」

「そう、温室にある水は噴水だけ。双子に眠るっていうと大体隠されているモノを指すわ」

「…なるほど」


…本当、彼女の思考は計り知れないな。

天才っていうか、鬼才っていうか…


「―ッ!扉よ!!」


彼女の視線をたどると、確かに扉が見えた。

やっぱりココって元は迷宮か何かじゃない?

なんかボスモンスターの扉って感じなんだけど。


「…何か物音がしないか?」

「物音―?」


訝しそうに前を見て聞き耳を立てるアミス。

こんな状況だけど、耳に手を添えている姿に思わず「可愛いな」と思った。


「…確かに、人の気配はするけど……」


あと二十メートルほどに迫った扉を見て首を傾げるアミス。

まぁ、入ればわかることか。

そう思った直後だった。


「うわああああああああああああッッ!」


幼い少年の声―少し低めのアルトが扉の向こうから響いてきた。


「―ッ!」


一瞬息をのんでから駆け出すアミス。

慌てて僕とグレン様も走り出す。


無詠唱の風魔法で扉を吹き飛ばして中に突進する彼女。

この間僅か一秒。


「殿下ぁあああああああああッッ!」


珍しく本当に慌てたアミスの声。

視線の先には、金属で出来た『何か』が殿下へ向かって腕を振り下ろしているところだった。

そして――



どっしーんッ



地面にクレーターを作り上げるソレ。


クレーターの少し向こうには、殿下を横抱きにしたアミスがしゃがんでいた。

うーん、絵ずら的にはアミスと殿下の立場逆だと思うんだけど。


「大丈夫ですか!?殿下ッ!アミスッッ!」


気が付けば、無詠唱の転移魔法で隣に座っていた二人に声をかける。

二人とも極度の緊張から解き放たれたようで、立ち上がれないらしい。


「私は大丈夫よ…殿下は―」

「あ、あぁ。大丈夫です…」


思わす胸を撫で下す。

間に合ったのか――


「あ…少しケガしていますね―〈治癒(ヒール)〉」


殿下の腕や膝の擦り傷を光が包んでいく。

すると、隣にしゃがんでいるアミスが話しかけてきた。


「うーん…レグルは本当に〈癒〉が苦手よね。中級魔法までは全属性無詠唱必須よ!」

「うぅ…分かっているんだけど扱いにくいんだもん。そういうアミスだって〈雷〉はたまに詠唱しているじゃないか」


言い訳気味に師匠唯一の欠点を指摘する。


「…あれは上級レベルよ」

「アミス、間があったよ…はい殿下、治療終了です」

「……君たちはすごいんですね」


いつも通り軽口をたたいていると、殿下が驚いた顔をして僕たちを見ていた。


「そうですか?王国の剣としてこれくらい普通ですよ」


まぁ、アミスの訓練は本当にきついんだけどね。

でも、ここはやせ我慢してでも格好つけ…


「といいつつ、本当はすごく嬉しいのよね、レグル」


格好つけたかったんだけど…ッ!


「こらッ!余計なこと言わないッ!」

「うわぁー、怒られたー」


棒読みだよ、アミス。


思わずジト目で彼女を見ていると、「あ」と何か思いついたような顔をしてアミスは殿下に向き合った。


「そういえば自己紹介がまだでしたね」


あ、そういえば。


「私はファルファード家のレグル様専属護衛、アミスです。以後お見知りおきを」


胸に手を当ててお辞儀するアミス。

メイド服を着ているのに護衛―なんか変なの。


「僕はファルファード家第三子、レグル=ファルファードです。どうぞよろしくお願いします」

「では改めて。私はカナストル王国第一王子、ラヴィレント=ピル=カナストルです。二人ともこれからよろしくお願いします……そういえば、どうしてグレンはココに?」

「…俺はアミスに付き合わされたんだ」


バツが悪そうな顔をして親指でアミスを指すグレン様。

……前アミスが言っていた『ツンデレ』ってやつかな。


「まあまあグレン様。私たちは友達なんですし、いいじゃないですか」

「……嫌だとは言っていない」


待て、グレン様スルーしたけど、え?友達?


「……アミス、グレン様と友達って……」

「あぁ、レグルと私が友達だって言ったら、グレン様もなりたいって言ったから」

「軽いなッ!?」


殿下たちがいるにも関わらず素で突っ込む。


にしても、王子と友達…

あー、でもアミスだからな。

うん。深く考えることはやめよう。


すると、グレン様が慌てた声で怒鳴った。


「ていうか、おいっ!アレはどうするんだ!?」


…アレ?

そう思ってグレン様の指さす方を見ると、こちらに向かってきている金属の塊(ソレ)

…正式名称知らないし指示語になってしまうのは仕方ない。


「んー、私の拘束魔法解けちゃったか」

「…いつの間に」

「殿下をお姫様抱っこしてすぐ」


あっけらかんと言い放つアミスに殿下が俯いて頬を赤くした。

そりゃ、自分よりも小さくて細いアミスにお姫様抱っこされるのはキツイよね…





To be continued………

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