少女と赤髪の少年(2)
「…勝負したところで私に利がありません」
「お前が勝ったら名前で呼んでやる」
「別に、呼んでほしいわけじゃないんですけど」
「ほら、やるぞ」
人の話きけよ、残念王子!
あー、もういいや。私大人だし?
ぱっぱと終わらせて第一王子探そう。
「剣は真剣ですか?」
「…そうだな。木刀は今持っていない」
「了解しました。じゃあ私も真剣にします」
空間魔法〈マジック・ホール〉(私命名)を発動させて愛剣を取りだす。
説明しよう!
マジック・ホールとは三次元と二次元の隙間に空間を作り出し、物を保管・収納する魔法だ。
マジック・ホールの中に入っているものは時間が停止するから古びない、腐らない、劣化しない、の実用性抜群!
「……魔法か」
「はい、私は魔法師なので」
まぁ、正しくは〈精霊使い〉なんだけど。
「じゃあ行くぞ」
仕方ないので、双剣を構える。
うー、気が乗らない。
「はぁ、どうぞ」
相手一応王子だし手加減しなきゃ……面倒臭いなぁ。
少しむっとした顔で踏み込むグレン。
三十メートルの間合いを一気に詰めると背後からの一撃。
うん、レグルより戦略はいいかな。
初撃を難なく流して、私も反撃をお見舞いする。
「―ッ!」
あまり力がないと考えていたのか、食らった反撃の重みに目を見開いている。
さて、これからが本番だよ。
魔法を使えば瞬殺だが、剣で勝たないとこの残念王子の鼻っ柱を折れない。
ふっふっふ、やることは一つ!
圧倒的差を見せつける!!
「―はっ」
息継ぎをして一秒の休憩を入れる。
そして、超高速連続攻撃を発動。
私命名剣技〈時雨〉。
一秒に三回の速さで相手を斬りつける(今回はグレンの剣が対象)技。
王子をケガさせるわけにはいかないけど、私の剣、受けてもらいます!
「マジか……」
〈時雨〉発動二十秒で剣を落としたグレン。
信じられないのか、その顔には驚愕が強く浮かんでいる。
レグルでも三十秒持つか持たないかだし、この子いい線行っている。
そしてお決まりのように座り込むグレン。
なに、私と戦った後はみんな座り込みたくなるの?
「では、約束通りアミスとお呼びくださいね」
剣を鞘に納めながら言う。
まぁ、呼び方なんてなんでもいいんだけど『お前』はあまりいい気がしないしね。
「…分かった」
おやや?
これは…一応フォローに回るべきか?
それとも良い機会だし本格的に鼻折っとくか?
……うーむ、シンプルに講評しておこう。
「グレン様は力任せになっている面があります。もう少し精密な動きをマスターするべきでしょう。基礎体力はありそうなので、瞬発力や精密性を上げることをお勧めします。あとは、武器を変えるべきですね。グレン様だとその力強さを生かせる矛や斧が良いかと」
ずっと思っていた、グレンに剣ってあっていないんだよね。
剣が折れないように加減して、本当の力を出せていない気がする。
「……アミス、お前何者だ?」
私は一回戦うとなにかしらの秘密を垣間見られる気がする。
レグルと戦った後は『戦場に立ったことあるの』だったし。
「レグル様専属の護衛です」
ここでメイドって言っても説得力に欠けるよね…
いつかバレたとき面倒だし、本当のこと言っちゃおう。
「……なるほど」
何故か神妙な顔で頷くグレン。そして大切なことを思いだす。
「あ、やばい、第一王子を探さないといけないんでした!……グレン様」
「………また助言してくれるのなら手伝おう」
うわぁ、その呆れた顔レグルにそっくり。
「はい!もちろんです。じゃあ、第一王子のいそうな場所教えてください!」
「うーん…アイツなら大図書館か温室だな。ちなみに、ここからだと大図書館の方が近い」
流石双子の兄弟。良く知っているぅ!
でも、弟が素振りしているときに兄は大図書館か温室……
まるで正反対だな……
「よし!じゃあ大図書館をめざして出発です!」
「俺も行くのか……」
何を当たり前なことを。
第一王子のことを知っているのはグレン様なんですからね。
そしてグレンの後について行きながら考える。
もし……もし、第一王子がラヴィレント様だったなら―
乙女ゲームが、スタートする………?
To be continued ……




