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少女と赤髪の少年(1)


「おい、行くぞ」

「はいはい、何時でもどうぞ」


そう言って向き合う私とグレン。

春の風が私たちの勝負を見守っている。



はぁ、本当に―どうしてこうなった……



****



「この先に、殿下が……」

「どうしたの、レグル。緊張している?」


王宮について早々、ここまで連れて来られた私たち。

―でも先からレグルの様子が少しおかしい。


「あ、当たり前だよッ。相手は生涯の主だよ?緊張もするさ……」


まぁ、確かに?

でも私、初めて陛下に挨拶に行ったときあんまり緊張しなかったよ。

戦争中だったのもあったからかな?

主に媚びを売るより、敵を滅することしか考えていなかったんだよね。


「平気よ、レグル。生涯の主だからこそ、失敗しても何回でも挽回できる。それに、心を開いて真に向き合えば何事も伝わるわ。あと貴方は決して一人じゃないこと、忘れないで」

「………そう、か。うん。僕は一人じゃない…大丈夫だ」


力強く頷くレグルに、私も頷き返す。

そして、レグルは扉をノックした。

少しだけマシになった主の横顔を眺めながら相手の返事を待つ。


―待つ……


「「………」」


―あれ、返事が来ない。


「…ねぇ、レグル。殿下お昼寝でもしていらっしゃるのかしら」

「……それはないでしょう。入ってみる?」

「うん。なんか何時までも返事が来ない気がする」


扉に手を当てて押してみる。

少し空いた扉から、昼時の温かい日差しが廊下に溢れた。

そのまま一思いに扉をあけ放つ。


そして日の当たる部屋の中を見ると――



……I・NA ・I (い な い)




「えっ、殿下がいらっしゃらない……?」


唖然としている私の隣でレグルも驚愕に目を見開いている。


「あ、あれ!レグル、机に何か置かれているわ!」

「…本当だ、何だろう」


取り敢えず部屋の中に入り、執務机らしきものへ近づいてみる。


「えっと『はじめまして、私の剣。私はこの城のどこかにいるので、一時間以内に探し出してみてください。それじゃあ』」


「「………」」


あー、殿下ってそういう方なわけね。

一時間以内…今が大体十一時だから十二時までに探し出せば良い…と。


未だに何が起きているのか理解できていない(レグル)に作戦を伝える。


「レグル、ここは手分けして回りましょう。十一時四十分にバラ園の前集合。その時に来なかったら相手が殿下を見つけたと解釈しよう」

「―わかった。じゃあ僕は城の中を探してみるよ」

「了解、じゃあ私は図書館や温室をあたるわね」


あ、これだけは伝えておこう。


「レグル、焦らなくていいわ。さっきも言った、私たちは一人じゃない。だから安心していいよ。それじゃ」

「……うん」


扉を出て右に曲がる、とりあえず別館へ向かおう。

えっと、別館は東の方角だから―

頭に地図を展開して辺りを見渡す。

城内は広いのでタイミングを見計らえば人に見つからず行動を起こすことが出来る。


「よしッ、今は誰もいない!」


衛兵が消えるのを待って廊下の窓を開ける。

下は中庭になっているらしい、木々が植わっていることが確認できた。

木の陰にでもなっていない限り誰もいないはずッ!


「よっと」


ちなみに今私が飛んだ窓から中庭までは大体五百メートル。

私にとってはさして高くもないので風魔法は使わずに飛び降りる。

空中で壁をけって一回転すれば無事着地。


「さて、別館はあっちかな…?」


何事もなかったように東へ向かって歩き出す。

―が、三歩もいかないうちに呼び止められた。


「おっ、おい!お、お前ど、どっから降ってきたッ!?」


声のした方に体を向ければ、レグルと同い年くらいの少年が腰を抜かしていた。燃えるような赤色の髪、大きく見開かれている目はエメラルドグリーンをしている。

…んん?この子、どこかで見たことがあるような気がするぞ?


「…大丈夫ですか?蜘蛛でもいました?あ、虫退治は苦手なので庭師でも呼んできます」


すこし震えている少年の原因を察し、再び足を進める。


「ちょ、待て!蜘蛛も虫も苦手じゃねぇッ!勝手に話を進めるなッ!お前が急に降ってきたから驚いたんだッッ!」


あぁ、そういう理由でしたか。

それは失礼。

でも、初対面の相手に対してその態度はどうかと思いますよ。

最近の親は躾が出来ていませんねぇ~。


「女の子が降ってきたくらいで腰を抜かさないでください。女の子だ、ラッキー!くらいにでも思っておけばいいんです」

「いや、普通の女は空から降ってきたりしない。ってか、本当にどっから湧いてきた!?」


うーん…この俺様系、赤髪少年やっぱりどこかで見たことがあるような……?


「人をネズミみたいに言わないでください。あ、ちなみに私が飛び降りた窓は北の第一王子の書斎です」

「はぁ!?あそこからここまで何百メートルあると思っているんだ!着地に失敗したら骨折れるぞ!?」

「大丈夫です、そんなヘマしませんよ。それに、折れたら直せばいいだけです」


本格的に死んでいなければどんな怪我でも直せるからねッ!

えっへん。


「……お前、変わっているな」

「よくレグルに言われます」


そんなに変じゃないと思うんだけど、呆れた顔でよく言われるんだよね。

まぁ、二年も言われ続けていれば慣れてくるけどさ。



「レグル…?あ、そういえばお前の名は?」


…そういえば名乗っていなかったっけ?

なんか乗りが旧来の友達みたいで気にしてなかったや。


「私はファルファード家がメイド、アミスです。貴方は?」

「俺はカナストルの第二王子、グレンだ」

「王子………」


あー、そうだ。思い出した。

昔やっていた乙女ゲームに出てくる攻略対象の一人だ。

グレン=ピル=カナストル。

野性的な風貌で、メインヒーローの双子の弟。

あれ、でもこの世界って設定が同じなだけなんじゃなかったっけ?

いや、でも現に顔だけ良い残念俺様系少年がいるわけだし…

うーん?よくわからんぞ…??


とりあえず、考えるのは後回しだ。

今はこの残念俺様美少年を何とかしよう。


「おい、なんだその目は」

「いえ、特に何も思っておりません」


そうそう、残念な美少年だなって考えているだけ。

あ、残念なのは性格ね。

ツンデレ拗らせ過ぎて面倒な性格になっちゃってるが故のあだ名。


「いや、絶対何か失礼なこと考えているだろ」


残念はともかく、美少年は褒めていますよ?

―まぁ、面倒だから話題変えよう。


「そういえばグレン様は剣が使えるんですね」


素振りをしていたのか、手には剣が握られているし。


「あ?あぁ、腕には結構自信あるぞ。…お前は?ファルファードの人間なら剣くらい使えるだろう?」


おう、俺様系って本当に態度がでかい。

あ、それとも王子様って大体こんな感じなのか?

三千年前にいたあのバカ王子がおかしかっただけ…?


「お前ではなく、アミスです。まぁ、使えることは使えますが…」

「よし!じゃあ勝負だ」


………どうしてそうなった?






To be continued ……


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