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03.アーサーと俺のスキル授与

 



 アーサーが中へ入ってから、一、二分後。


 教会の扉の隙間から紫色のような光が漏れ出たと同時に中からどよめきの声が聞こえてきた。


 今までの奴らはこんな光なんて漏れていなかったぞ?いったいアーサーに何が起こってるんだ…?!



「ちょっと君、勝手に開けちゃ……――!!」



 気になって中に入ろうとした瞬間、横にいた聖職者に呼び止められたが、そいつは俺の顔を見た途端に静止した。


 そうなんだよ。俺の親父は公爵で、母さんが聖女のようなスキル持ちなんで、教会の人間には俺も含めて家族全員顔が知れてるんだよー。



「し、失礼しました! グライムス公爵家御子息様!ど……どうぞ」



 え?入っていいんだ?

 なんか権力を笠に着るようで嫌だが、アーサーの事が気になるので遠慮なく入らせてもらいます。


 扉を開けた音に気づいたのか、祭壇の前で既に祈り終わったアーサーがこっちへ振り返る。

 アーサーの体からは淡い紫色の光が輝いていた。それはまるで後光がさしているかのようだった。



「アーサーそれ大丈夫なのか?」


「……ああ、問題ない」



 心ここに在らずな表情をしているが、何ともないなら良かった。

 しかしこの光は何なんだ。アーサーは金髪碧眼の整った顔立ちなだけにやけに神々しいな。


 周りの聖職者や護衛の騎士達はアーサーの輝きを見て唖然としている。

 神官は驚きつつもこの光の正体を丁寧に教えてくれた。


 まず国内ではスキルを大まかに分類しているらしく、ノーマルスキル、レアスキル、ユニークスキル、スペシャルスキルの四つ以外に、更に最上級のスキルがあると言う。


 それが“ゴッドスキル”。


 その名の通り神の領域に達する程のスキルの事だ。

 神官が言う伝承には、ゴッドスキルを授かった瞬間に体から能力の色が光り輝くように放たれるそうだ。


 じゃあアーサーは間違いなくゴッドスキルという事か。凄いな……。


 神からのお告げであるスキルの名前は自分だけに聞こえると言う。

 神官は恐る恐るアーサーにスキル名を尋ねた。

 アーサーはそれにしれっと答える。



「【未来予知】だそうだ」



 はぁ〜〜〜なるほど。確かに神の領域だわ。未来は神のみぞ知るってか。流石アーサーだな。


 尋ねた神官も時が止まったように口を開けて驚いていた。


 今後近い未来に国王陛下となるアーサーにとって、この国の民を導いていく為にはこの上ないスキルだろう。

 これから王宮は大変な騒ぎになりそうだな。


「うむ」と言って、少し嬉しそうな顔をしたアーサーがまた俺の方へと振り返った。



「未来予知だぞ、アルト」


「おう、凄いスキルだなアーサー」


「それもそうだが、この状況の話だ」


「は?」


「スキルを授かる前から既に私は未来予知をしたかのようではないか?」



 アーサーはまるで子供のように自慢げな顔をしている。


 ああ、そういえば教会に入る前に、“皆が驚くスキルを得て、俺に目にものを見せてやろう”だかなんだか言ってたな。

 まぁ、予知っちゃ予知なのか?


「ハハッ、確かにな。目に物見せてもらったわ」

「フッ、そうだろう。分ったならよい」


 アーサーは急に澄ました顔をしたけれど、興奮して耳元が真っ赤になっているし、口の端が嬉しそうにピクピクと動いていた。

 ホントこいつって偉そうだけど面白いんだよな〜。


 そして後が詰まっている事に気付いた神官が、慌てて俺を祭壇の前へと呼んだ。

 その時アーサーがすれ違いざまに俺を見て、「虹……」と一言呟いて去って行った。


 おい、虹って何だよ。まさか未来予知??スキルのレベル初期は天気予報なのか?!


 とりあえず祭壇前に着いた俺はゴクリと息を呑む。


 人生で一度きりしか貰えないスキルだ。家族のスキルを聞いた限り俺もそこそこのスキルを貰えると思うが、やっぱり緊張するな。


 もしも、いつの日にか、俺が魔力を扱えるようになったとしたら、俺だってスキルをもらう意味はある……。

 今までわざと期待しないようにしていたが、直前になると自分の正直な気持ちが前に出てきた。

 アーサーのようにゴッドスキルとまでは言わないが、俺にも家族のみんなをビックリさせられるようなスキルが欲しい……!!!


「ではアルト・グライムス殿、無事成人となれた事を神に感謝して祈り、祝福を受けたまえ」


 俺は目を閉じて手を祈るように組んだ。


 あ〜〜神様、十五歳まで無事に存命させて頂き誠にありがとうございます!

 俺はだいぶ不器用なのか、魔力を全く使うことが出来ませんが、これからも諦めず努力をして何とか生き抜いていこうと思うので、なにとぞ今後とも宜しくおねが……


「「ザワザワッ……」」


 いきなり周りの人が騒ついたので、俺は目を開けた。



 うわっ!!……え、嘘だろ?!!



 俺の体からは眩しくてまた目を閉じてしまうほど強烈な虹色の光が放たれていた。

 神官や周りの人達も眩しいのか目を(しか)めている。


 アーサーが言ってた虹ってこの事かよ。それにしてもアーサーの光と比べ物にならない位眩しいんだけど!!なんだこれ?!


 そう思った時だ。俺の脳裏に女のような男のような中世的な声が響いてきた。



『おぬしは【全属性魔法レベルMAX使用可能】じゃ』



 え?



『以上!!』



 ……んへ?



『だ〜か〜ら、おぬしのスキルは【全属性魔法レベルMAX使用可能】なのじゃ。良かったな! 今からこの世の全ての魔法が使い放題だぞ? にゃっはっは! まぁ、決して悪いことには使うでないぞよ〜? と、とりあえず言っておく! ぐふふ。では私は忙しいのでこれにて失礼! じゃあな〜っ』



 …………はへ?




『うおーーいっ!! 聞いて無かったのか?!だからだからだ〜か〜ら〜っ……――』



 何か聞こえてくるがイマイチよく分からない。

 俺はあまりの出来事に神様であろうその声が耳に入ってこなかったのだ。


 自分のスキルは未だ理解できないが、神様ってのはだいぶ変わってる奴だという事だけは理解できた。





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