「死」
「その必要はない」
そこにいたのはガタイのいい男だった。
「誰だあんた」
蒼慧の目には殺意がこもっていた。隼矢の目には恐怖があった。
「俺か?俺はラックの四天王の一人。ランルだ」
「ふ~ん、ご丁寧にどうも。」
「お、おい蒼慧!四天王だぞ!?怖くないのかよ…」
「ああ、怖くないね。狩りの時間だと思うとゾクゾクするね」
「はっはっはっ!!いい度胸だ。ガキが調子に乗るにはちょっと早いんじゃないか?」
ランルは余裕の表情で蒼慧に迫ってきた。背中に担いでいる大剣を振り下ろすスキも見て蒼慧の短剣がランルの手にあたる。
「うっ」
蒼慧の剣はランルの鎧にはじかれる。
「嘘だろ!?」
「当たり前だ。そんなちゃっちい剣で俺の鎧は貫けん!」
そのとき隼矢が叫んだ。
「蒼慧!!背中だ!背中を狙え!この世にある大体の鎧は背中に弱点がある。製造過程での仕方のない弱点だ!」
「オッケー、」
ランルの姿が消えたことに蒼慧が気付いたのは、すぐだった。隼矢のすぐ後ろにランルの大剣の影がうつる。
「え?…」
「残念だったな小僧。余計なことを言わなければいいものを」
そのセリフと共に隼矢の背中に剣が刺さる。隼矢の首がうなだれる。
「ふっ後は貴様だ。蒼慧とやらよ」
「ふざけんな…」
「なんだ?」
「ざっけんなてめええええ!!!!」
蒼慧の剣が宙を舞う。
「これで攻撃のつも…ん?」
背後に人の気配を感じたランルは後ろに勢いをつけて大剣をふるう。だが外れる。
「どこに行きやがった。」
「ここだ」
上からの声が響き渡る。その声には残虐な殺人鬼のような冷え切った声だった。
剣の先には血がついている。
「ふん、すこしかすっただけか。大したことないな」
「ホントか?」
「なん…ぐわあああ」
血の噴水が出来上がった。蒼慧がかすったのは首の大動脈、人ならすぐに死ぬ。
「隼矢………」
反応はもちろんない。隼矢の腰にある元の世界でのお守り。二人が同じ学校を受験するときにお互いで買いあった大切なお守り。
「悔やんでもしょうがないんだ!前に進むだけだ」
独り言を言い残し、隼矢の死体に背を向けた。
〇
「さて、どうしたもんか。一回国に帰るか…」
隼矢がいない、そうなれば蒼慧にはパートナーがいない。そこで国に戻って新しいパートナーを探すのが最善である。国王には気が向いたら城に来いと言われているので早速、言葉に甘えることにした。
〇
「あ、蒼慧さん!」
「ホントだ。早くないか?」
「あれ?隼矢さんがいない?」
「なにかあったのかな」
蒼慧の帰還には町は祝福してくれたが、今の蒼慧はそんな気分ではない。
城についた蒼慧はまず国王に全てを打ち明けた。
「そうか…彼は死んでしまったのか。辛かっただろう?まずはゆっくり休んでくれ」
「はい…」
蒼慧は寝室に向かった。力のない歩みにはメイドも心配するほどだ。
次戦いを仕掛けるときは四天王のあと三人に注意をするしかない。蒼慧は相手の国について学ぶことにした。