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3話 賑やかな街

 あちこちで元気のいい大声を出して商売をしている人達がいる。

 それに釣られるように足を運ぶ人、たくさんの荷物を持って人混みから出て行く人たちの波に流されないようにアリスさんの後を歩く。

「あの、どこに向かっているんですか?」

「ん?ああ、『ギルド』の方よ」

「ギルド?ギルドって何ですか?」

「簡単に言えば集会所よ。魔法剣士や魔法使い、騎士、あと他にもいろいろいるけど、私たちはギルドに加入することでギルドにあるクエストを受けたり、ギルドから支援を貰ったりできるの」

「クエストって何ですか?」

「街の人たちの困っていることを解決すること。特にモンスター退治が多いかな。他にも輸送馬車の護衛とか野菜の収穫のお手伝いとか他にもたくさんあるわ」

「そうなんですか」

 つまりギルドはお手伝い屋さんということか。

「到着したわ。ここがギルドよ。私の家から近いでしょ」

 着いた場所は、周りの建物より一際大きな建物だった。

 大きな扉を開けて中に入る。たくさんの人がガヤガヤと騒いでいた。すごい量の人だ。

「いらっしゃい!ごめんだけど今席がいっぱい・・・あ、アリス!やっと来たね、待ちくたびれちゃったよ!」

 たくさんいる人を掻き分けてメイド姿の女の子がこっちに来た。

「お待たせハンナ。今日は人が多いわね」

「そりゃ、ライカンスロープが消えたんだ。大きな問題が一つ消えて皆嬉しいのさ。おや?その金髪の子がアリスが言ってた例の子?思っていたより背が小さいね」

「こんにちは」

「うん。あいさつできて良い子だね、お菓子食べるかい?」

 ハンナさんはポケットからクッキーを取り出した。それをありがたくいたたいだ。

「それで、報酬の方は?」

「そうだった。奥に用意してあるよ。ついておいで」


* * *


「これが今回の報酬よ!驚きなさい!」

 連れてこられた先は集会所から少し離れた所に建つ小屋だった。中にはいろいろある。

「これ全部?!中にある素材とかも?」

「そう!この小屋ごと!あと、50万Gの報酬もあるよ!」

 ハンナさんは手に持っている袋を振ってチャリチャリと音を鳴らした。

「あの、この小屋の中の物やそのお金ってどこから来た物ですか?」

「これらは街の皆からの寄付だよ。あの森には皆がお世話になっているんだけど、ライカンスロープが現れて以来あまり人が近づけるような場所ではなくなってしまって困ってたんだ。依頼は来るけど誰も倒してくれなくて、報酬だけ増えてさ。だから、ライカンスロープを倒してくれてほんと助かるよ」

 ハンナさんが頭を撫でてくれた。

「それより、早く手続きをして受け取りましょう。この後も行かなくちゃいけない所があるから」

「そう?じゃあ仕方ないね」

 ハンナさんはこちらに袋を渡すと、ポケットから紙を一枚取り出した。

「ほい、契約書。ここにサインして」

「・・・あの、ペンは無いんですか?」

「そんなの要らないよ。ここに指を置くだけ」

 そう言って強引に手を取り、親指を紙の隅に押し当てる。離してみると指紋の後が赤く着いていた。

「これで終わりだよ。あと、これ小屋の鍵ね。さーて、私は休憩してこうかな」

 鍵を渡し、契約書をポケットに仕舞って、スキップをしながらハンナさんはどこかに行ってしまった。

「不思議な感じの人ですね」

「彼女はハンナ・スコッティー。ギルド精鋭部隊の一人で、アサシンをやっているわ」

「アサシンって何ですか?」

「アサシンは素早さと特殊攻撃に特化した人たちよ。彼女の攻撃はすごいわよ、まるで獣みたい」

「それは、一度見てみたいです」

 ハンナさんって実はすごい人だったんだ。普通のメイドさんだと思ってた。

「そういえば、さっきの契約書は何だったんですか?内容を読まずにサインしてしまったんですが」

「ギルド入会の契約書よ。これで私とあなたは正式にパーティーになったわ」

「パーティー」

 お互いを助け合う。

「さて、私たちもそろそろ行きましょうか」

「はい。今度はどこに行くんですか?」

「着いたらわかるわ。それ貸して」

 アリスさんは鍵を取ると、小屋の扉を閉め、錠前をかける。鍵はアリスさんが持つようだ。

「さて、行きましょう」

「・・・はい」


* * *


 先ほどより人がいなくなった街を歩きながら、お腹が空いていることに気づいた。

「どこかにおいしいお店はありませんか?」

 自分で言っておいて、何を言ったのか自分でも意味は分からなかった。お店は食べられないのに。

「食事できるお店はいっぱいあるわよ。私のオススメはクレアのところかな。あそこのパフェがとても美味しいの!」

「そうなんですか」

 クレアと言うところのパフェ。ちょっと気になる。

「着いたわ。ここよ」

 アリスさんは立ち止まって、剣が描かれた赤い看板のお店を指さす。

「ここは何のお店ですか?」

「武器屋『パンドラ』よ。ここはいろんな武器や防具、アクセサリやそれぞれの武器と防具の装飾品なんかを取り扱っているお店なの。ボク君もこれからはクエストをたくさん受けると思うから今のうちに作っておいてもいいかなって思って。どうかな?」

「武器に防具ですか」

 あの森で目覚めた時も武器らしき物は持っていなかった。今後何があるか分からないし、確かに持っていて損はしない。

「そうですね。ちょうど武器を持ちたいと思っていました。いい機会ですし、作りたいです」

「よし。それじゃ、入ろうか」

 アリスさんは目の前の大きな扉を開けて入っていく。その後に続いた。

「・・・すごい、こんなにたくさん」

 中に入り、壁に掛かっている武器たちを見て、思わず声が出た。広いわけでもない空間で、壁や棚に綺麗に並べられている。

「久しぶり。元気だった?」

 アリスさんは店の奥へと進んでいく。そこには白髪でタンクトップの男が座っていた。筋肉隆々の男だ。

「おお、アリスじゃねえか!久しぶりだな!お?その小さいの誰だ?」

 男は立ち上がってこちらに近づくと、珍しいものでも見つけたかのようにじろじろ見る。

「まあいいか。で、今日はどうした?剣が折れちまったか?それとも防具が破損したか?」

「どれも違うわ。この子の装備を用意して欲しいの。一番いいやつで」

「それはいいが、金はあるんだろうな?」

「はい、1000Gくらいは出せます」

「それだけありゃ十分さ!さて、何がいいかね」

 男が壁にかかっている武器を一つ取って、見せてくれた。

「この剣なんてどうだ?名前はアイアンソード。素材は鉄で出来ていてとても頑丈だ。普通の剣より幅が広いから、攻撃にも防御にも使える。ほれ、持ってみろ」

 剣を持たされた。

「・・・意外と重いです」

 そのまま剣を返した。

「はっはっは!やっぱ子どもにはまだきついか。ところで、剣と魔法どっちが得意だ?」

「分からないけど、たぶん魔法の方が得意です」

「分かった、ちょっと待っていろ。最近いいのを仕入れたんだ」

 そう言って男は店の奥に行ってしまった。男が戻ってくるまで少し暇になる。

「ヴァルデさん、すごく楽しそうでしょ?彼駆け出しの騎士とか魔法使いが来ると楽しそうに武器や防具を紹介してくれるの。それに、彼の作る武器や防具もすごいわ」

「そうだろ!なんてったって俺は武器職人の中の職人だからな!」

 いつの間にか戻ってきていた。手には白い杖を持っている。

「こいつはホワイトラックって言う武器だ。光属性の魔法を強化し、闇属性の魔法を無効化にしてしまうらしい」

 属性?聞いたことない。

「アリスさん、属性ってなんですか?」

「属性はそれぞれに備わっている性質よ。すべての生き物やモンスターなんかにも備わっていて、体内にある魔力を魔法として出すときに関係してくるの。例えば、ボク君が風魔法を使おうとするとき、ボク君の中にある魔力がその風魔法に対して弱いと出せないし、その魔法属性に対して有利の属性が強いと全然痛くなかったりするわ。今発見されているものは、順に炎、水、雷、土、風、木がサイクルしていて、光と闇だけは相互関係にあるわ」

「そういうものもあるんですね」

 つまり、属性とは魔法の区別のこと。

「この杖の特徴はそれだけじゃない。なんと、とても丈夫だから打撃攻撃も可能なんだ!」

「それは魔法使いに必要ない情報ね」

「そうだな!」

 はっはっは、とヴァルデさんは大声で笑った。

「これください」

「小さいの、これはお高いぜ。5800Gだ」

「これで買えますか?」

 とりあえず袋をそのまま渡した。

「これどっから持ってきた?駆け出しにしちゃ持っているな。待っていろ、今数えるから」

「すごいでしょ。この子、ライカンスロープを二体も倒したのよ」

「なんと!あの足の速い奴を倒せるなんて。武器要らないんじゃねえの?」

「いえ、やっぱり持っているのといないのでは全然違いますから」

「そうかい?はいよ、おつりだ」

 ヴァルデさんから袋を返してもらった。

「防具の方はどうする?今ならいいのがあるんだが」

「そっちの方は作製をお願いするわ。ライカンスロープの素材があるから」

「ライカンスロープか。こりゃ、良いのが作れそうだ!」

 ヴァルデさんは嬉しそうな顔をすると、また店の奥に行ってしまった。

「あの、そろそろお腹空いてきたのですが」

「あ、ごめん。もうちょっとかかるかも」

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