セカンドライフ
人類がいま知り得る知識では、人の命は一人に一つが理りであると言う事、思想的概念では転生と言われる言葉もある。ただし、これは生物学的にはまだ実証されていない。
人は、生まれた日から生き絶える日までを命と言う。それならば、俺は転生したのであろうか?
4月6日、俺は駅から会社に向かって歩いていた。その時何かが光った。その瞬間、俺は自分の体が横たわっている姿を見つめていた。
この時期でもまだ冷たい雨。人々が群がり、一部では悲鳴も聞こえている。俺の肉体は半身が焼けただれ、見るも無残な姿になっている。その傍で俺はただ立ち尽くしているしかなかった。今の自分が持っていたのであろう傘が風で木の枝に引っかかっていて、4月とは思えないほど冷たい雨を、傘もなしで浴びていた。
頬を伝い雨が滴り落ちるほど、俺の体は雨を浴び冷たくなっていた。そんな時、サイレンと共に人の海を掻き分け救急隊員がやって来た。
「すみません!!大丈夫ですか?」
放心状態で立ち尽くす俺と、俺の身体に話しかけて来た。
「はい、大丈夫です・・・。」
聞きなれない声で返事をした。
「ご自身で病院に行けますか?」
隊員は放心状態の俺を心配して、さらに聞いてくる。
「俺は大丈夫ですが彼が・・・。」
隊員は機敏に動き、俺の肉体をタンカに乗せながら「知り合いですか?一緒にお願いします。」
俺は隊員の言われるまま、救急車に一緒に乗った。
車内は服の焦げた匂いと独特な消毒液の匂いがした。「ご家族ですか?」
「いいえ・・・。」
「では、この方のお知り合いですか?」
「あっ・・・いえ・・・。」
その時俺は未だにしっくりこないが、今まさに目の前で横たわっている俺自身と今の俺は別の人だと悟った。隊員は俺の歯切れの悪さを疑問に思いながら、救急処置を行っていた。
病院に着くと、看護師が既に待っていた。着くと同時に、俺の肉体は俺自身を置き去りにして連れて行かれた。
一人だけ残った看護師は俺の方を向き近づいて来た。「ご家族の方ですか?」
看護師は、先ほど救急隊員に聞かれた内容と同じ質問を問いかけてくる。
「いいえ、事故の場所に一緒に居合わせただけです。」
看護師は、ハッとした顔をして俺を院内に案内した。
「念のためですがCTを取られますか?」
「えっ?」
俺は何故?という顔で答えた。
「落雷の事故だと伺っていますので念のため。」
「分かりました、お願いします。」
内心、倒れた肉体のことの方が心配で今の俺は、と思ったが現状を飲み込めないのもあるし、一応CTだけでも受けてみる事にした。検査を受ける前に俺は問診票を渡された。当然ではあるが、名前が俺には分からない。ふと、ズボンのポケットに入っている財布に気づいた。・・・。東堂 仁!?俺と同じ漢字である事に驚きを隠せなかった。俺の今の身体は・・・。そう思い、近くにあるトイレに急ぎ足で向かった。・・・・・。