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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第三話・憧れを求める造形体(あこがれをもとめる ゼルレスト)
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25 玩具(おもちゃ)

相手の手元から放たれた二足歩行型のロボット達は宙を舞うと、ミニカー同様に地面へと到着する寸前で巨大化し四メートルを越す姿へと変貌した。玩具の色は全てバラバラで、一体は紫色、一体は赤色、そしてもう一体が青色の光沢に包まれ角ばった身体つきをしていた。しかし敵が放った言葉の通り何処か壊れかけており、ロボットの繋ぎ目なのであろうバネが見え隠れしていた。

再び放たれた敵影に対し一同は身構えると、鉄骨の上に座っていた創憎主はこう言い出した。

「不完全なモノって『しゅうあく』になりやすいんだって。意味は良く解らないけど、もう無理なんじゃないかなー……?」

「無理だなんて決めつけるのは早くてよ。車同様に壊した時、貴方はどうするのかしら?」

「その時はその時。 ……でももう玩具も少ないし、しばらくはそれで遊んでてよ。 ……行っちゃえーーっ!!」


【ギィーーーッ!!】

指示を受けたロボット達は奇声を上げると、猛スピードで彼等に接近し攻撃を仕掛けだした。紫色のロボットはサインナ達を襲い、青色のロボットはアリン達を強襲し、赤色のロボットはギラム達目がけて攻撃を開始した。



サインナとラクトに強襲をかけた紫色のロボットは右手でパンチを繰り出すも、命中する寸前で二人は後方へと避け、地面へと衝突した。重い一撃が撃ち込まれた白い大理石調の床は見事に凹んでしまい、彼等の放つ一撃がどれほどのものなのかを物語っていた。

「見た目にそぐう火力ね。……でも重い一撃の遅さは、私達には通用しなくてよ。ラクト!」

「『フィリー・氷柱(つらら)』!!」

そんな敵の一撃を目の当たりにするも、彼等は怯む素振りも見せずにラクトは攻撃を開始した。

右手の人差し指と中指を合わせたまま頭上へと掲げた彼は即座に手を振り下ろすと、空気中に含まれていた水分は一気に凝結し、円錐型の氷柱となってロボットに攻撃しだした。氷柱が命中した部位は即座に氷漬けとなって行き、徐々に相手の動きを封じるかのように足元を凍らせ、終いにはバネの出ている接合部までもが凍結していく。関節の無いロボットの接合部を封じてしまえば、相手が動けないと予測した結果だった。

「フフッ、氷漬けにしたら動けるかしら?」

「無駄だよ。」

「! お嬢!!」

しかし相手は動揺すらも無いまま言葉を放つと、ラクトは違和感を感じ咄嗟にサインナを庇う様に彼女の元へと跳び込んだ。両腕で相手を捕まえたまま地面を転る直後には彼等の居た場所に対してロボットが攻撃をした後であり、後少しでも遅れていれば一撃を逃れられなかっただろう。氷漬けになっていた脚すらも動かし、接合部の氷は気付けば粉々に砕けて地面を転がっているのだった。

「ッ! 接合部に当てたのに、動けるっていうの……!?」

「その子達は未完成品。既存の玩具に効く攻撃は一切効かない。仮に当てたとしても、こうすれば良いんだもん。」

そう言った敵の言葉に反応し、次の瞬間には紫色のロボットは腕の部位を切り離し、浮遊する形でその場に漂い出した。まるで見えない力によって支えられているかのように浮いており、先ほどの攻撃も同じ原理で無力化したのだろうと彼等は推測した。結果的に言うと『足止めが効かない』という事だ。

「だから言ったでしょ? 無理だって。」

「『ハイドラウィスチャ・渦潮(うずしお)』!!」

「無駄。」



パァーンッ!!


「…チッ、水すらも弾くのかあの身体は……!」

「そっちのお兄さんの仕える術でも、無理。氷も水も効かない。 ……早く、諦めちゃいなよ。」

「クッ……」

そんなロボットに対しラクトは地面を這う渦潮を放つも、先ほどとは違い両腕で渦を拡散させる様に殴り、雲散霧消させる始末であった。完全に自身の攻撃が無力化された事を知った彼は牙をむき出し、苦虫を噛み潰したような表情を見せるのであった。





【ギィヒヒヒヒ!!】

変わってこちらは、青色のロボットの襲撃を受けていたアリンとスプリーム達。巨体に似合わない俊敏な攻撃を避け続けるべく、スプリームは彼女をお姫様抱っこした状態で回避に専念していた。

「クソッ! これじゃキリがないぞ!!」

「あの攻撃を可能にしている場所を停止させないと、私達には勝ち目が無いですね……! ライトニング!!」

華麗かつ必死に避けていた彼に護られながら、彼女は両腕で握りしめていた日傘から右手を離し、相手に指先を向け魔法を放った。対象の頭上付近に眩い光が集まったかと思ったその時、突如室内に雷鳴が轟いた。



ドォーーーン!! バリバリバリバリ……!!


「!! 雷が効かない……!?」

「無駄無駄、なーんにも効かないよ。」

「雷が効かないなら……コレならどうだ!! 『ウィド・ラールクル(カズラ)』!!」



シュルルルル!! パシンッ!!


しかし攻撃が命中したのにも関わらず、ロボットは怯む様子も無いまま天井を見上げ、再び攻撃を開始しようと動いた時だ。一撃を受け動きが停まった瞬間を見逃さず、スプリームはアリンを丁寧に地面へと下した瞬間左手を握り瞬時に二度開閉すると、掌に空豆の様な物体を召還した。物体を手にしたまま彼はその場で華麗に一回転すると、勢いを利用して手のひらから鞭の様な植物の蔓が飛び出し、瞬時に相手の身体に巻き付き拘束しだした。蔓の先には朝顔が幾つも綺麗に咲く中、彼は両手で蔓を引っ張り相手が逃げない様力付くで足止めを駆けるのだった。

「へぇ、束縛何て出来るんだぁ……」

「『ウィド・ラールクル(オウ)』!!」

完全に動きを止めた事を確認した彼は蔓を地面へと打ち込むと、今度は左手で拳を作りながら力を込め、一気に放つように手を押し出しながら開いた。すると、彼の手元から幾多もの桜の花弁が渦を描く様に飛び出し、相手の視界を塞ぐように風に舞って攻撃を開始した。軽く追い風になる様に動きを止めた直後、彼の手元からは第二弾とばかりに巨大化した桜吹雪の塊が完成し、相手に向かって打ち込むのだった。

一撃をもろに受けたロボットはそのまま反る形で後方へと倒れ込むと、重量に見合う重い音を立てて転倒するのだった。

「魔法そのものの力は対した事無いが、使い方次第で何でも出来る。無駄も無理も、俺にとっては熱意に成る単語に過ぎないな。」

「すっごーい。でも残念だね。」

「何……?」

そんな攻撃を目の当たりにした敵は言葉を漏らすも、何処か勝ち誇る様に台詞を吐いた。その時だ。



【ギギギギ………】


「! スプリームさんのあの一撃を受けても、まだ動けるって言うんですか…!?」

「……あの身体の造りが、軽減させたのか…!! ならば削ぎ落すまでだ!」

ロボットは再びその場で身体を起こしだし、まだまだ動ける様にマッスルポーズを取るのだった。これには驚きを隠せないアリンではあったものの、隣に居たスプリームは怯むことなくメイスを手にし、そのまま相手に向かって突撃しだした。猛進する勢いで懐に飛び込んだ彼は、使い慣れた武器を勢いよく振りかざし一撃をお見舞いするのだった。

だが、



ガキンッ!!


「ッ!? 固い……!?」

「だから言ったじゃん、効かないって。帰ってー」

【ギギッ!】

「スプリームさん!!」

彼の放った一撃は相手に命中するも、対象の耐久力が上手であり反動で弾き返される始末であった。それなりに勢いがあったため軽くのけぞってしまうと、ロボットは彼を捉え吹き飛ばす勢いで身体を捻り、両腕ではじき返した。

吹き飛ばされる直前で受身を取った彼は空中で体制を整えると、飛ばされた反動で地面を滑る様に着地した。這う体制で着地した彼の元へアリンは慌てて駆け寄ると、無事を告げられ二人は再びその場に立った。

「私の魔法も、スプリームさんの打撃も効かないなんて………」

「……これは、相当厄介だな。共闘を組んで正解だった。」

「ほらほらぁ、逃げないとやられちゃうよーー?」

【ギィーーー!】

その後再び攻撃が開始されるのを見ると、スプリームはアリンを抱き上げ、再び攻撃を避けながら隙を伺うのだった。



そんな二組が苦戦を強いられていた頃、ギラムとグリスンも同様の攻撃に見舞われていた。



「うわわわわ!!」

【ギィヘヘヘヘ!!】

「チッ! やる事が創憎主なだけにやり過ぎだろ……!? グリスン! 大丈夫か!!」

「な、なんとかぁあーー!!」

赤色のロボットによる攻撃は相手の反撃すらも与えない、機敏な動きが特徴的だった。攻撃を避ける為に飛び込んだ先に狙いを定められているためか、グリスンは慌てながら一生懸命に避けるので手一杯となっていた。同様に隙を突くかのようにギラムにもその攻撃の波がやって来るため、こちらもゆっくりと相手の動きを観察する事が出来ずに居た。

『攻めに出るにも、身体が大き過ぎて敵う気がしねえな……! だが、あの動きを止めないと!』

しかしそんな相手に怯む彼ではなく、ギラムは使い慣れた拳銃を手元に生成し、狙いを定める様に両手で銃を握った。照準をガードの薄いであろう首元に狙いを定めると、彼は弾丸の威力を最大限に引き出そうと考えつつ、タイミングを見計らってトリガーを引いた。

「撃ち込んでやるよ!!」



バンバンバンッ!!


威力を重視した攻撃を数発お見舞いすると、拳銃からは普段使用する際には出ない硝煙が本物に近い量発生していた。完全に武器本来の力を引き出しただろうと彼は思いながら対象を視ようとした、その時だった。

「無ー駄。」



ガキンカキンッ!!


「!! この銃の一撃を弾くのか!? 嘘だろ!?」

「知ってるよー その銀の銃、火力特化型の銃なんだってねー 前に使ってたヒト、居たもん。」

「クッ…… 経験済だったのか……!!」

弾丸は命中するも全てはじき返されてしまい、周囲の地面や柱へと命中してしまうのだった。想定外の結果に動揺するギラムを見かねてか、グリスンは隙を埋めるべく前へと移動し、慣れた手付きで弦を弾いた。

「ギラム下がって! 『メイル・ストイール』!!」

音波から生成された火球弾は真っ直ぐにロボット目掛けて飛んで行き、銃弾を弾いた身体のコーティングを溶かそうと着手していた。しかし炎は腕を振り払うだけで消えてしまい、溶かす事も難しい事が判明した。

「駄目! 炎も通用しない!!」

「隙みーっけ!」

【ギィーーー!!】

「!!」

そんな彼等の攻撃を無力化したロボットは反撃の体制に移ると、前へと出てきたグリスンを標的にボディタックルをお見舞いした。突然の事であったが何とか受身を取った彼は吹き飛ばされながらも体制を立て直し、武器を手にしたまま地面へと降り立った。

「大丈夫か!?」

「大丈夫! 受身取ったから!!」

「……銃が効かねえなら、アレ使っとくか……! グリスン! 前使った防御壁を全員に貼ってくれ!!」

「わ、解った!!」

その後ギラムは別の攻撃手段へと移るべく、手にしていた拳銃を消し、両手に手投弾を創り出した。創り出したのは直系約二〇センチ程の手投げ弾であり、一般的に使用される強力な爆弾であった。双方合わせて二つの爆弾を創り出すと、彼は先端部分に付いた安全ピンを歯で抑えながら引き抜いた。

「『ナグド・サヒコール』!!」

「ぶっ飛びやがれ!!」

爆弾を放つ直前でグリスンの魔法が発動されたのを確認すると、彼は退治していたロボット目掛け二つの手投弾を投げた。始めは周囲に転がるだけの爆弾であったが、数秒立った直後に着火し強力な爆風が発生した。



ドッカァアーーン!!


「……やったか……?」

「ざーんねーん。」

「!!」

しかし攻撃は命中するも相手を鎮めるまでには至らず、ロボットはピンピンしておりほぼ無傷である事が伺えた。さすがの結果に驚きを隠せないギラムであったが、慌てて距離を取りグリスンも同様に彼の近くへと下がるのだった。


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