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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第三話・憧れを求める造形体(あこがれをもとめる ゼルレスト)
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21 身案(みをあんじて)

アリンとのやりとりの後、ギラムは一人元来た道を戻り自宅へと帰っていた。帰宅すると洗い物を片付けるグリスンの姿と、リビングの上に置かれた蜥蜴型ラジオを見つめるフィルスターの姿があった。どうやら朝食後の様子で、なんてことの無い平和な時間がそこにはあった。

「ただいま、グリスン。」

「ぁっ、おかえりギラム。お話どうだった?」

「あぁ、その事なんだが…… 今夜、創憎主を治めに行く事になったんだ。行けるか?」

「うん、大丈夫だよ。その間、フィルスターはどうする?」

帰宅した彼はアリンとのやりとりを軽く報告後、その際のフィルスターの世話をどうするか考えだした。以前の創憎主との戦闘時には彼は偶然にも巻き込まれる事は無く、ギラム達だけが相手の創り出した隔離領域の中へと閉じ込められていた。再び元に戻って来た時にはギラムが見物していた扉付近に居たため、幸いにも被害に巻き込まれる事は無かったのだ。しかし彼等が調べた限りでは今回の創憎主は以前のタイプとは違い、下手をすれば彼の命にも関わる相手ともなりかねない。

まだまだ幼き龍に戦闘を経験させるわけにも行かないため、ギラムはその場から移動しフィルスターの前へと移動した。主人を見ていた幼龍は首を動かしながら相手を追い、立ち止まった所で身体の位置を変え、真正面から見上げる様に座っていた。

「フィル。今晩は一人で留守番とか、出来るか?」

「……… キュ?」

不意にやって来た問いかけに対しフィルスターはしばし首を傾げた後、曖昧な返事を主人へと返した。どうやら言葉の意味を理解出来ていない様子で、無邪気な顔を向けていた。

「『よく解らない』って顔だね。」

「まぁ、まだ留守番には早いだろうからな…… 仕方ない、連れて行くか。」

「何処かに預けるとかは、出来ないの?」

「預ける、か……… ……あっ、その手があったか。」

仕方なく同行させるかと検討していたその時、グリスンからの提案にギラムは納得する様に返事を返した。その後ポケットの中に忍ばせていたセンスミントを取り出し、慣れた手付きでとある画面を呼び出した。

そこには彼が登録した幾多の電話番号がズラリと並んでおり、上下にスライドする様に彼は指を動かし、ある連絡先をタッチし何処かに電話をかけだした。現れていた電子盤が消えフィルスターの顔が目に入ると、彼は相手の頭を優しく撫で、通話が開始されると同時にフィルスターの指を握りながら話し出した。

「もしもし、イオルか? 俺だ、ギラムだ。」

【あれ、ギラムさん? どうしたんですか、急に。】

「今夜創憎主を治めに行く事にしたんだが、フィルを連れて行く訳にも行かなくてさ。今晩だけ、預かってくれないか?」

【フィルスターちゃんをですね。はい、ボクは構いませんよ。】

【ヒストリーも良いよぉー】

「良かった、じゃあ今晩よろしく頼むぜ。そっちの家に連れて行けば良いか?」

【いいえ、ボク達がそちらの家に行きますよ。取引の間、ボクの居場所としてそちらを使わせて下さればOKですので。】

「あぁ、そういう事か。了解、じゃあ夕方くらいにこっちに来てくれ。」

【解りました。】

電話越しに交渉を終え、無事にフィルスターの面倒を見てくれる事が決定した。その際の居場所として自宅を貸す事を条件に承諾すると、時間帯を指定し来訪予定を組んでいた。

その時だ。



【えっ、イオるんギラムんの家に行くのー?】

「?」

【はい、今晩だけフィルスターちゃんのお世話を頼まれたので。】

【良いな― アタシも行きたーい。】

【だ、そうです。ギラムさん、どうでしょうか?】

「あぁ、俺は別に構わないが…… あまり騒がしくはしないでくれれば、良いぜ。」

【まっかせてー アタシもそれくらいは守れるんだから。】

『すっげえ不安だが……… まぁ良いか。』

電話越しに予定を書き込んでいると、ギラムの耳に通話主とは違う声色がやってきた。不意の事に軽く驚いていると、近くに居たのであろうメアンが通話に入り込み、自身もやって来ることを提案しだすのだった。賑やかコンビが揃うともなれば少々近所迷惑になりかねないが、了承した上でギラムはやってくる事を許可するのだった。しかし如何せん発言が発言の為、不安要素は拭いきれないのであった。


そんなネットアイドル達ののやりとりを終えると、彼は通話を終え不意にやって来た感触に目線を下げた。右人差し指にやって来た感触の正体はフィルスターであり、両手で主人の指を握る様に弄っており、軽く咥える様に甘噛みをしていた。まだ歯は鋭く生え揃っていないため痛くはないモノの、力を入れられたら噛み千切られそうな咥えっぷりであった。

「そしたら、フィルスターの事はイオル達に任せるとして。後は俺達の方だな。」

「今回は僕とギラムと、後スプリームのリアナスの人が来るんだよね。そうなると、4人かな?」

「いや、後サインナとラクトも来るから6人だな。帰って来る途中でサインナから連絡も来たから、現地集合って形だ。その前に、俺達はアリンを迎えに行くぜ。」

「うん、解った。」

甘噛みを続けじゃれてくるフィルスターから優しく指を回収すると、彼は抱きかかえながらグリスンと話をしだした。嬉しそうに胸元に擦り寄る幼い龍の様子を見ながら頭を撫でた後、彼等は再び戦いの元へと向かう事を決意するのだった。


「とりあえず昼飯と夕飯は食うとして、少し出かけて来るぜ。」

「お買い物? 一緒に行こうか?」

「行っても持てねえだろ。大丈夫だ。」

「ぁ、そうだった。行ってらっしゃい。」

「キュッキュー」

その後彼はこれからのスケジュールを確認した後、抱いていたフィルスターをテーブルの上へと戻した。少し残念そうにするも催促する事なくフィルスターはグリスンと共に見送りだし、ギラムは再び出掛けて行くのだった。




彼が向かった場所、それは職場近くにある馴染みのスーパーマーケット『コフェンティオ』だ。普段と変わらない賑わいを見せるその場へと赴いた彼だが、今回は買い出しとは少し違う用事でやってきた様子で店の入り口を抜け、真っ直ぐに目的の品があるであろう棚の元へと向かっていた。生鮮コーナーを抜けたその先には天井から釣り下げられていた看板があり、案内に従う様に彼はやってきた。

「ぇーっと…… ……ココだな。」

看板を見つけしばらく進んでいくと、そこには透明感あふれるペットボトルがズラリと並ぶ陳列棚の前へとやって来た。彼がやって来たのは『ミネラルウォーター』が並ぶ陳列棚であり、小さい物から大きい物まで名の知れていないオリジナルブランドの物まで数多く取り揃えていた。他の陳列棚に比べて比較的品揃えが良い様にも思える整頓ぶりであり、従業員の几帳面さが伺える出来栄えであった。

棚に置かれた水達をしばし見つめた後、彼は普段引用する飲料水を手に取った。水色に赤いラインの入ったラベルには『クリスタルゲイザー』と書かれており、ロゴの裏からは蒼と白のツートンカラーの模様が飛び出していた。そんな飲料水を見つけた彼だが、普段よりも少し大きいサイズの物を手にしていた。

『まだ真相は解らないが、これも何かの縁……なのかもな。俺が良く飲む奴で良いか。』

手にしたペットボトルを見つめながら彼は移動すると、会計を済ませ店を後にした。


店の外へと出た彼はキャップを空け水を口にしながら、ふと帰り道に以前の公園へと立ち寄った。昼下がりの公園には人の姿は薄く、何時もと変わらない噴水から流れる水の音と周囲を走る車の音のみが響いていた。公園内に入った彼は噴水の元へと向かうと、縁に腰かけ静かに空を見上げた。

済んだ空に浮かぶ雲は静かに前方へ向かって流れ、時折飛んで行く鳥達の姿があった。何も変わらない平和な現代都市の中に潜む創憎主が要るとは思えないほどに、治安の守られた雰囲気が感じられるのだった。

『毎度の事ながら、治安維持部隊が守るリーヴァリィの中に創憎主が潜んでいるなんて思えないよな。2回も戦闘を経験したとはいえ、やっぱり現実味が無いな……… 昔の職場環境で感じた現場とは違うからこそ、そう思えないんだろうな。きっと。』



『……でも、油断が出来ないのはどっちも変わらないな。今回もきっちり、相手を負かせねえと……… それが、今の俺がやるべきことだからな。』

その後決意を固めた様子で彼は立ち上がると、自宅へと向かって道を歩き出すのだった。


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