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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第三話・憧れを求める造形体(あこがれをもとめる ゼルレスト)
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03 傭兵対信仰者(ギラムVSファンクラブ)

駄菓子屋で合流したギラム一行は、再び待ち合わせ場所としてした『プラクティレイル』へと歩を進めていた。

道中も楽しそうに移動するメアン達だが、ギラムはというと、腕をガッチリ捕まれたまま移動せざる得ない体制をとっていた。

左腕に掴まりながらも歩きやすさを意識するイオルに対し、右腕に掴まるメアンは大胆にも胸を押し付けながら並んで歩いていた。

半分嬉しい様な面倒な様な、複雑な表情でギラムは歩いていた。



目的地へと向かう遊歩道を歩いて行くと、建物へと入る際の入口が彼等の前に視えだした。

入口の前には広めに用意された広場に付くと、警戒していた例の集団が一行を目にし、密かにざわめき始めた。


「ぁっ、あれメアりんじゃないか!?」

「ほ、本当だ!! 張り込みの甲斐があった!!」


突如現れた三人組を目にした集団の一人がそう叫ぶと、連中の視線は一斉に彼等へと向けられだした。

待ち人だと確信した彼等は携帯を弄りながら狂喜し、一斉に行動を起こさんばかりの様子を見せていた。


「おいどうすんだ、完全にバレてるじゃねえか。」

「大丈夫大丈夫っ そのまま胸を張って、堂々と入り口へ向かって直進して下さい。」

「堂々と突撃ーっ」

「堂々と迎撃されそうな気がするんだがな………」


そんな彼等の様子を見かねたギラムは軽くたじろぐも、両サイドの二人は気にすることなく向かって行くよう言い出した。

とりわけ大きな策があると言う訳ではないが、どうやら彼女達なりに何か対策を用意している様な口ぶりであった。


仕方なくギラムは回りの視線を無視し、そのまま集団が待機する入口へと向かいだした。

すると、狂喜乱舞していた集団に変化が現れた。



「……なっ、なんダスかあの大男はっ………!」

「もしや噂の『SP(スペシャルパートナー)』と言う奴なのか!?」

「それを言うなら『SP(シークレットポリス)』だっ!」

「ど、どうするんだ。 太刀打ち出来ないッスよ! あんな画体良い奴なんて、どうみてもプロレス出身ッスよ!?」

「いや、逆手にとって『暗殺者(アサシン)』やもしれぬ。」



「「どっちも勝てる気しねぇえ!!」」



遠目からでは認識出来ていなかったのか、彼女達を連れているギラムの風貌を目にした集団は、普通の連れではないと悟り始めた。

『金髪で背丈がある日焼けの肌が印象的な相手』だけなら良かったものの、近くで見ると『体格』と『顔付』が露わになり、より一層強面のイメージが彼等の恐怖心を弄った様だ。

話してみれば何て事のない優しい性格だが、それに至る事を避けがちなのが、今回の待ち人集団達の様だった。


動揺を隠せない様子で、周囲に暗雲が込み上げている様にもうかがえた。


『よっし、今が狙い時ですね。 初歩港ちゃんっ』

「はぁーいっ」


そんな集団の隙を見逃すまいと、イオルはギラムの背に掴まっていたヒストリーに作戦決行の指示を出した。

指示を受けた彼は返事をすると、背中に背負っていたリュックサックから器用に一枚のカードを取り出した。

手にしたカードには達筆な書体で『幻』と書かれており、彼はそれを地面目掛けて投擲ようとした。


しかし、



スッ


「? どうしたの、お兄ちゃん。」

「魔法、使うつもりなんだろ。ちょっとだけ待ってもらっても良いか。」

「うん、分かったぁ。」


彼の行動を制止するようにギラムは右手を動かし、静かに言葉をかけた。

手を動かされた拍子にメアンが軽く引っ張られるも、ヒストリーは然程驚く様子もなく、彼の言うことを素直に聞いていた。

放とうとしていたカードはそのまま懐に収められ、どうするのだろうかと興味津々な眼差しを向けていた。


「どうするの? ギラムー」

「こんなことで魔法を使わなくとも、きっと自力で乗りきれる。 ……って、思っただけだぜ。まぁ見てな。」


突破出来るのかと不振がっていた彼の行動にメアンは疑問を抱くも、どうやら突破出来る策が彼には思いついた様だった。

先程まで呆れ顔だったギラムの顔は何時しか勇ましい表情をしており、心境が変わった事を悟らせる変化であった。



そんな彼が問いかけに返事をすると、彼は両腕を掴む彼女達の腕を静かに剥がした。

その後鍛え上げられた腕を双方で組み、彼女達に言い放った。


「この状態で、もう一度腕に掴まってくれるか?」

「おぉーっ、ギラムがより一層逞しい感じになったー!」

「腕を組んだ状態なら、ある程度迫力があることは解ってるんだ。 これで突破するぜ。」

「御意っ」


彼の案を聞いた二人は喜んで彼の腕にしがみつき、そのまま強行突破とばかりに前進し始めた。

すると彼等を纏っていた雰囲気は一新され、先ほどとは違ったオーラを放ちながら、集団との距離を縮めて行った。


「な、なんという勝ち誇ったオーラだすか……!! ワイ等の事など、お構いなしダス!!」

「完全に、勝算などない雰囲気ばかり出ておるぞ……… ど、どうするのだ。」

「ぐぬぬぬ…… まさかこのような事態がやって来るとは……… しかし、我々はまだ負けてなどおらぬ! 戦う前から、諦めてどうするのだ!」

「おぉ、どうするのだ同士!」


しかしその程度で諦めないのが、ネットアイドルを称える集団なのだろう。

一人の孤高な同士の声を聴いた集団達は一斉に円陣を組み、提案をした相手の声に耳を傾けだした。


「我々の人数で奴を囲めば、多人数に勝ち目が無いはずがない!! 『メアりんイオちゃんズ』への愛を、今こそ解き放つ時!!」

「うぉおおおーーー!!!」


同士の声が鶴の一声となったのか、集団は再びやる気に満ちた声を上げ、雄叫びとばかりに声を放ちだした。

遠くから見ればただの怪しい集団にしか見えないが、そんな事を気にしないのが彼等『アイドルへ愛を捧げる者達』である。

愛あってこその行いと言えば、納得のいく光景と言えよう。



さすがに少し引いている様子の三人であったが、歩は変わらずに前へと向けていた。


「あれあれ? 何か士気が高まってる気がしますね。」

「お熱いっぱぁーい。」

「安心しな、対策はある。」

「策?」



ゾロゾロゾロ……


「?」

「そ、そこの漢っ! 止まりたまえ!!」


士気を高め気合を入れ終えたのか、ギラム達の前に集団が大きく立ちはだかった。

光景を見かねた三人はゆっくりと歩を緩め停止すると、集団内のリーダーと集団内のリーダーと思わしき相手を中心に取り巻きが彼等を取り囲み、あからさまに目立つ行動を彼等は行っていた。


余談だがコレは迷惑行為なため、決して真似しないで下さい。


「と、隣をエスコートしているのは……我々の崇める天使達!! ど、独占は許されぬぞっ!!」

「わ、我々はひじょーに困っているっ!! す、すぐに開放したまえ!!」

『俺が悪いみたいな流れだな…… まぁ、無理もねえか。コイツ等を虜にするのが、メアン達の活動だったしな。』


警告するかの如く集団内の代表は一言ずつ告げだし、それに賛同する様に一同は声を揃えて合の手を送って来た。

しかし彼等の緊張感はすでに言葉に現れており、相手に勝ち目がないのか、少し動揺した台詞がギラムには理解できた。


幾多の部下達を視てきた彼にとって、男達の視線に囲まれる事は慣れており、動揺はするも恐れを感じることは無かった。

ましてや前職時代の戦場を経験し、現代の都心内で密かに行われていた戦いを二度も経験すれば、肝も座ると言えよう。

彼等の言葉にはあまりにも力が薄く、彼を止めるには些か迫力が薄いと言えよう。



その結果が、コレである。



「悪いが、俺は今日一日二人のボディガードを頼まれた傭兵だ。二人に手を出す事は、俺が許さん。」

「!!」

「それと、広間と言ってもこの道を塞ぐこともだ。そこ、通してくれるんだよな?」



ザザザッ!!


「「どうぞ!! お通り下さい!!」」



「ん、ありがとさん。」


自身が負い目に感じている強面な雰囲気も、逆に利用すればこのような成果を起こす事も出来る。

誰もが驚く迫真の演技ともいえるやりとりで、彼等は無事にその場を通る権利を得るのだった。



雇い側であるメアンとイオルが軽く唖然とするも、彼に引かれて道を進み、あっという間に建物内に入って行くのだった。


「こ、怖ぇえええーーーー!!!」

「駄目だ、我々は完全に敗北した!! 今日一日は諦めるしかないっ!!」

「あんなのが一日護衛なんて、闇討ちでも負ける気がしてならん!! 引き上げるぞ!!」



「「おぉーーーー!!」」


目的地へと入り込んだギラム達の背後で妙なやり取りが行われるも、集団はその場から散り散りに解散し、建物前の広間には再び静寂がやって来た。

謎のやりとりに軽く苦笑する三人ではあったが、無事に難を逃れた事を知り、彼等は仲良くハイタッチするのだった。


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