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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第三話・憧れを求める造形体(あこがれをもとめる ゼルレスト)
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01 目覚三位(めざめたさんにん)

『空と大地に祈りし幼龍』の出来事を終え、数日後のある日の事。

新たな同居人としてやって来た虎獣人と幼龍、彼等と共に生活する主人公の、現在の仕事場と依頼を描いた物語です。

静かなる夜の時間。静寂に包まれた都市内に差し込む、一筋の光線。新たな一日の始まりを迎える様に、夜の闇は少しずつ溶け始めていた。徐々に登り始める太陽の光は、リーヴァリィに住まう幾多の存在達に、目覚めの時を告げ始める。何処からともなく聞こえだす小鳥達のさえずり、美声を耳にし目覚める人間達。

その街にも、朝がやってきたのだった………



「ぐぅー……… くぅー………」

街を照らす日差しが、カーテンの隙間を掻い潜ろうと格闘する中。マンションの一室で熟睡する、一人の青年の寝息が、部屋を静かに満たしていた。

部屋の半分を占領するであろう大きなベットに寝そべり、豪快に大の字で眠る若き傭兵。金髪が印象的な色黒の彼は、自身の身体を覆えるかどうかのタオルをかけ、爆睡していた。軽くタオル地がかかっていない首元は太く、灰色のタンクトップが少しだけ顔を出していた。

「すぅー……… すぅー………」

しかし部屋からは別の寝息声も聞こえており、微かながらも寝息がデュエットしていた。

青年の寝るベットの横に用意された、簡易式寝床で揺れる黄色と黒の大きな尻尾。可愛らしくも整った顔つきの虎獣人が、夢の世界での温もりを感じている様だった。隣で眠る青年と違い、こちらは軽く丸まりながら熟睡していた。タオルではない上着の様なものを、こちらはかけて眠っていた。

そんな部屋で熟睡する二人の元へ、カーテンとの攻防に勝利した日差しが差し込んできた。

「……ん、朝か………」

徐々に部屋が明かりを得出した頃、微かに目元を掠める日差しを感じ、青年は目を覚まし身体を起こした。軽く目が覚めきらない感覚に陥りながらも、青年はぼんやり窓辺を見つめた後、大きな欠伸をひとつした。その後彼はベットから足を下ろし背伸びをした後、窓辺で寝そべる隣人を見下ろした。人のような身体付きをしているも、何処か獣の要素が残る同居人。自分よりも幼く、あどけなさのある寝顔を見た後、彼はその場に立ち上がり、静かに部屋を後にした。

寝室を後にした彼は、その足で浴室へと向かって行った。脱衣所とセットになった洗面台の前へと立つと、彼は慣れた手付きで身嗜みを整えていく。と言っても、彼がするのは洗顔だけであり、髪のセットはまだしておらず、着替えを済ませてから行う質の様だった。軽く手櫛で髪を整え、同室でトイレを済ませた後、彼はその場を後にした。



ガチャッ


「ぁ、おはようギラム………」

部屋を後にした彼がリビングへと戻ると、そこには寝ぼけ眼で歩くグリスンの姿があった。布団代わりにしていた上着を手にしていた彼は、ギラム同様タンクトップの井出達であり、黒色の肌着に緑色のボトム姿だった。

「おはようさん、グリスン。 よく眠れたか?」

「うん…… ギラムは今日も早いだろうからって起きたんだけど、まだ眼が覚めなくて…… ふわぁ………」

「前の職場で、起床後の点呼が基本だったからな。 覚め方が少し特殊なんだと思うぜ。」

「そっかぁ………」

「とりあえず、顔洗ってきな。 飯作っとくからさ。」

「うん、そうする…… ふわぁ………」

まだまだ寝足りないのか、それとも低血圧なのか。グリスンは眠気眼を擦りながら、ギラムの提案を受け入れ、洗面所へと向かって行った。意識がハッキリしていないらしく、彼の後ろで揺れる尻尾は振り子の様に揺れており、元気なのかさえ解らない起きっぷりである。そんな彼の様子を見たギラムは軽く肩をすくませた後、キッチンに立ち調理を開始しようとした。

その時だ。



「キューッ」

「ん?」

不意に彼の足元から聞き慣れない鳴き声が聞こえ、ギラムは軽く驚きながら視線を下ろした。するとそこには、青い髪に赤い翼が印象的な、緑色の幼い竜の姿があった。

「おはようさん、フィル。 よく眠れたか?」

「キュッ。 キュキキューキュッ。」

「そっか。 今朝飯作るから、少し待っててくれ。」

「キュー」

足元で家主を見上げる幼竜は挨拶をした後、彼の言葉に返事をするように声を発した。

彼等の様にしっかりとした言葉ではないものの、ギラムは彼の言葉を理解した様に返事をし、手軽に作れる朝食を作り出した。そんな彼の様子を見た幼竜はポテポテと歩き出し、彼の向かいに位置する机に昇ろうと、翼を広げだした。まだまだしっかりと飛ぶことは出来ないものの、彼は一生懸命に翼を羽ばたかせ、ゆっくり高度を上げつつ机の上へと降り立った。その後ギラムの顔が見える場所で腰を下ろし、調理する様子を見守るのだった。


そんな幼き竜と共に過ごす、傭兵の青年『ギラム・ギクワ』

そして、同じ住まいに居候する虎獣人『グリスン』

異色ながらも日々を見守る彼等が、この物語の主人公なのであった。


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