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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第二話・空と大地に祈りし幼龍(そらとだいちに いのりしようりゅう)
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06 審査(しんさ)

突然襲ってきた肉食恐竜の難を逃れ、依頼を無事に達成したギラム達。下山途中にやって来た疲労感に身体が重くなるも、無事にふもとの集落へと到着した。



「あぁー……… 何だかすっごく疲れちゃったよ……」

疲労感に支配された身体のダルさに耐えきれず、グリスンは依頼所に向かう道中で地面へと座りこんだ。半ば崩れる勢いで両足を内股にしたまま座ってしまい、相当気疲れをしている事が解った。

「おいおい、まだ依頼の報告が残ってるんだぞ。 しゃんとしろ。」

「はぁーい………」

かわって依頼に慣れているギラムは疲労感は感じてはいるものの、まだまだ歩くことができる様子を見せていた。下山し安全である事を確認すると同時に地面にへばりついた彼を見るやいなや、ギラムは軽く足を止めつつも相手を動かす様に言葉をかけだした。その声を聞いた相手は一生懸命に足を地面に付けた後、彼の後に続いて依頼派出所へと向かって行った。

「こんちはーっす。 依頼終えてきました。」

「おや、ご苦労様だね。 今依頼主に連絡を入れるから、一息ついてなさいな。」

「はい、お願いします。」

派出所で待機していた管理者に一声かけると、相手は電話の受話器を取り、依頼主に連絡を取りだした。呼び出してから到着するまでは少々時間があるため、ギラムは所内にあるソファに腰を下ろし、一息ついた。それを見たグリスンは同様に彼の隣に座り、疲れた様子でソファに横になった。

「……お前なぁ、ソファは寝る所じゃないぞ。」

「だぁって、疲れちゃったんだよ………? 僕まだ喰われたくない。」

「俺だって喰われたかねえよ、恐竜の飯になる気なんてさらさらねえし。」

軽く横になるグリスンに注意を促すギラムではあったが、双方共に疲労感には耐えられず、背もたれに重心を駆けている。熱気が強く死ぬかもしれない手前の死線を歩いて来たとなれば、それはもう想像以上の疲労感であろう。そんな場所に赴く事がギラムの仕事の1つと思うと、とても大変だと思うグリスンなのであった。





しばしの休息を取り、彼等が待つ事数十分………


「お待たせしました。 お兄さんが、今回の依頼を?」

彼等の元に依頼主と思われる男性が現れ、丁寧な口調で引き受けてくれた相手かどうかを訪ねだした。相手は短髪の黒髪姿であり、細身で少し華奢な四十代後半の人だった。

「? あぁ、恐竜の鱗を欲しいって言ってたのはお前さんか。 無事に取ってきたぜ。」

「あぁ、ありがとうございますっ………! これで次の納品用に造る装飾品が完成します!」

「良かったな。」

今回の依頼主である事を確認すると、ギラムはその場を立ち上がり、携帯していたバックから依頼品を取り出した。手渡された『恐竜の鱗』を見るやいなや、相手は大喜びしながら大事に鱗を受け取り、持参していた袋の中へとしまった。それと同時に、依頼主は袋から厚みのある少し大きめの茶封筒を取り出し、彼に手渡した。

厚みのあるその封筒の中には、今回の依頼を引き受けてくれた対価として支払うお金が詰まっており、受け取ると同時にギラムは目を配り中身を確認した。その場で金額をチェックし依頼通りの金額である事を確認し終えると、2人は握手をし依頼が成立したことを互いに黙認した。

依頼の完了手続きは双方の仕事であり、無事に終わった事を告げた後、依頼書がキチンと破棄される。それを両者が目の前で確認した後、依頼主は一足先にその場を後にして行った。

「それじゃ、次行くぞグリスン。」

「ぁっ、うんっ」

その様子を寛ぎながらソファの上で見ていたグリスンであったが、声を聞きそそくさとその場に立ち上がった。彼が立ち上がりギラムは管理者に再度挨拶をすると、2人は派出所を後にした。



「次は何処に行くの? ギラム。」

派出所を後にしたグリスンはギラムの後に続き、次は何処へと向かうのか問いかけた。するとギラムはバックの中に手を入れ、中からある物を取り出し、彼に軽く見える位置で自然に振る舞いながらちらつかせた。彼が手にしていた物、それは依頼のついでに恐竜達から貰った『乾燥した草』だった。

「恐竜達から貰った『コレ』を、ちっとばっかし鑑定してもらわないとな。 島からの持ち出しは全部管理されてて、仮に未発見の物なら高値で取引されるんだ。」

「へぇー ……じゃあ、お宝かもしれないんだね。 それは。」

「そう言う事だ。」

行先を彼に告げると同時に、ギラムは目的地へと到着し中へと入って行った。

彼等がやってきた場所、それは島へと乗船した際に誰もが立ち寄る役所だった。島からの物資の取引を管理するその場所は『鑑定』も同時に行っており、まだ見ぬ素材であればデータ登録と同時に貴重な『資源』となりうる。新たな資源は別の物資へと変換され、世界に新たな恵みや力を与えてくれる代物になるかもしれない。

そんな自然界のサイクルをしっかりと把握できるよう、島に上がりこんだ傭兵達は皆、資源登録に協力する事になっているのだ。もちろん、協力した際の対価もしっかりと払われるため、皆はこぞって鑑定をする事が多いのも、あえて語っておこう。

ちなみに今回彼等がバイクと共にスル―出来たのは、事前に用意された自家用船だったからだ。すでに行く事と連絡を取ることが義務付けられていたため、彼以外は乗船していない事を、企業側から伝えている。無論それが嘘である事がバレてしまえば、二度と出入りすることは許されないと、補足しておこう。




リンリンリンッ♪


「すいません。」

「? はーい。」

役所へと到着した彼は近くの係員に声をかけ、事情を話し専門の相手にアポイントを取った。するとすぐさま品を視てくれる事になり、彼等は別室へと案内されて行った。

彼等がやってきた部屋は個室タイプの応接室であり、白い部屋に黒いソファと言うモダンなレイアウトの部屋。入口側の席にギラムが座り、彼の後ろでグリスンは立ったまま待っていた。その時だ。



ガチャッ


「大変お待たせしました。 今回の鑑識を担当する『シンパシー』と言います。 今回はどんな物をお持ちですか?」

「これなんですが、視てもらえますか。」

彼等の居た部屋に役員と思われる男性が入室し、そそくさと向かい側の席へと移動した。その後軽い自己紹介をしつつ持ち込んだ物は何かと問いかけ、彼から差し出された物を受け取った。サンプルとして受け取った草は丁寧にガラス製のケースの中へと入れられ、相手はガラス越しにどんなものかとあらゆる角度から見ている。

「なるほど、植物のサンプルですね。 どちらで採取されたんですか?」

「ヒトゥゼルムの、山道内で拾いました。」

「なるほどなるほど、火山地帯で………」

その後持参していたファイルを開け、幾つかの質問を彼に行った。


何時、何処でサンプルを拾い、持っていた際にどんなことが起こったか。


などなど、必要か必要じゃないかすら解らない事まで質問し、書類にデータを書き込んでいく。とはいえ、最終的に不要と判断された物は破棄されるため、ギラムは左程気にしない様子で答えていた。

「分かりました、こちらは責任を持って私が管理します。 鑑定結果は恐らく明日、お昼過ぎには出来ていると思うので。 こちらにご連絡ください。」

「解りました。 よろしくお願いします。」

その後質問を終え相手の名刺を受取ると、ギラムは軽く相手にお辞儀をした。彼と共にグリスンも頭を下げると、二人は退室し役所を後にした。



「さーってっと……… 鑑定は明日なら、今日はここまでだ。」

「また、あの船で帰るの? 今は夕方だから、着くのは夜かな?」

役所を後にしたギラムは再び徒歩で道を歩き、バイクの回収へと向かいながら独り言をつぶやいた。彼の発言にグリスンは質問をしつつ空を見上げ、今の時間帯を確認するように辺りを見渡した。

彼等の頭上はるか上空は橙色に染まっており、すでに黄昏時を迎えていた事が解った。役所に入る前から徐々に太陽が沈みかけていた事もあり、しばらくすれば夜の闇が辺りを包み込むであろうと思われた。空を見た後近くに停泊していた最終便であろう連絡船を指さすグリスンであったが、ギラムは振り向きながら首を横に振った。

「いや、今日は帰らないぜ。 今夜は依頼で受け取った金もあるし、これで宿にでも泊まろうかと思ってな。」

「ぁっ、お泊りなんだね。 どんなところに泊まるの?」

「そうだな……… いつも世話になってる所があるから、そこにしようと思うんだが。 旅館みたいな場所、お前は平気か?」

「うん、大丈夫だよ。」

「了解。 じゃあ行こうか。」

どうやらその日は島にある宿に泊まるらしく、先程貰った大金で外泊する事を彼は教えてくれた。提案を耳にしたグリスンは少し驚きながらも笑顔を見せており、お泊りを楽しむ仕草を見せていた。彼の明るい表情を見たギラムは軽く笑顔を見せた後、バイクを回収し二人は宿へと向かっていった。


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