表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第九話・現代都市の繁華は紅色に煌めく(リーヴァリィのはんかは べにいろにきらめく)
274/302

24 憧魔法憎(あこがれとにくしみ)

一人の存在という価値がどれほどのモノと成るのか、それは相対する存在によって価値観は異なるだろう。小さく些細な干渉しか行わなかった存在ならばその影響もまた微々たるモノと言えるかもしれず、人一人が与える影響力とはまさにその程度と称されても不思議は無いだろう。

だがその逆とも成れば相応の影響力が人々へと降りかかり、場合によっては世界の均衡を揺るがす自称と成ると言っても良いだろう。


ただの存在モブと称され要の一部としか成らなかった存在が、一つの切欠トリガーと成った。



魔術師マジシャンとして君臨していた者の命と引き換えに、一人のおとこは咆哮を上げた。漢と共にある事を望んだ存在達もまたその声に応える様に行動を取り出し、二つの大きな存在と成り得るであろう者達と対峙する。自らを死そのものと称し存在達に終わりと始まりを告げるデススート、そして行いそのものは違えど大団円と共に没落を意味する世界ワールドスート


互いに望むモノは違えどやる事は一つ、それこそが『相手を止める事』であった。



「はぁあああっ!!」



ガキンッ!!


「ッ! ……良いDEATHデスね……!! 童の血もまた滾る相手なのDEATHデスねッ!!」


漢は手にした剣を用いて相手へと襲い掛かるも、その一撃を大鎌デスサイスにて易々と受け止める相手が居るだろうか。体格差など諸共しない大きな武器で攻撃をなすと、相手もまたその気迫に高揚されるかの様に声を上げて武器を押し返し、上方へと振り上げ大きな鎌を振りかざす。

武器の軌跡に入り込めば身体を真っ二つにしかねない一撃が来るのを目撃すると、漢は後方へと身体を反らせて攻撃を避けつつ両手を地に付き、そのまま後退しながらも体制を立て直し再び攻撃を開始する。


相手もまた再びやって来る攻撃を見かねて武器を宙へと掲げながら身体を回転させつつ避けると、そのまま舞うかのように下がりつつ勢いに転じて攻撃を繰り出す。互いに一歩も引かない勢いで行う戦いではあったが、遠目から視れば『舞踊ダンス』をしているようにしか見えない程であった。




「ヒキュゥウウウウーー!!」

「《メイル・ウリトール》!!」


幼龍の放つ氷の咆哮ブレスに乗って放たれる旋律は風と成り、対象の元へ密度を高めて襲い掛かる。普通の存在ならば吹雪に見舞われ瞬間凍結させられても不思議ではない一撃であったが、その攻撃を簡単に退けるのもまた『真憧士リアナス』と呼ばれる存在達の魔法だろう。

強風に交じってやって来る冷気を霧消させると、相手はそのまま手にした筆と思わしき武器を掲げた後、彼等に対し攻撃を放った。


落雷エクレール!」



ドォーーーーンッ……!!


「ッ!」


相手が放ったのは雷の魔法であり、相手の地上近辺に干渉し放電現象を起こしたのだろう。彼等に負けない強力な攻撃がやって来ると察したその瞬間、グリスンとフィルスターはその場から退避し双方に別れながら再び攻撃を開始する。


幼龍は変わらず氷の咆哮であったが、虎獣人の方は別の属性と思わしき旋律の魔法を奏で出す。無論相手もまた一つ一つの攻撃を丁寧に裁くかのように、手にした武器と己の魔法で霧散させ反撃へと転じて行く。

互いに一歩も引かない勢いなのは此方も変わらず、両者共に渾身の力で相手を負かさんとばかりに戦うのであった。




そんな相棒達の行動と戦況を気に欠けながらも、ギラムは目の前の敵に対し何度となく攻撃を繰り出していた。しかし互いに一歩も引かない状況なのは変わらなかった事もあり、再び目にした大鎌の攻撃を避けつつ手にしていた大剣を一度消していた。


「チッ……!」

「フフフッ、先程までの威勢はどうしたのDEATHデスか? 童はまだまだ満足していないのDEATHデスよ。」

「戦闘狂がっ……! ヒトの命を平気で刈り取って、何が真憧士だ! 憧れに成り得る魔法を悪用してまでは愚か、人の命を使ってまで願いを叶えるなんて、オカシイだろ!!」

「オカシイ……? アハッ、コレは童の力……どう使おうが童の自由。力を集め拡散した時の力をどうしようと、全て童達『人間』に許された自由の配下に有りきなのDEATHデス。貴方こそ、何故その力を使わないのDEATHデスか? 素質が有りながら宝の持ち腐れとは、愚の骨頂なのDEATHデスっ!!」


ブォオンッ!!


「それだけの力を有し、他の創憎主達の力を抑えつけてもなお解放しないのは何とするのDEATHデス?」

「仮にそれが仕えたとしても、そこから先に待つ未来を思い描けない以上、この力に執着しないだけだ。俺達人間が自由なら、人道的な選択をするだけだっ!!」


そう言ってギラムは長杖へと変えたクローバーを振りかざし、相手の宙に対し魔法で飛来物を生成し強襲を駆け出した。創り出されたのは巨大なピアノの鍵盤である白鍵はっけん黒鍵こっけん達であり、創り出された物体を目にした相手は大鎌を振りかざし強引に薙ぎ払うかのように破壊しだした。


しかしそんな相手の動きを予想していたのか、彼は両手で持った長杖をバトンの様にクルクルと回した後に上空へと掲げ、続けて様に魔法を放ったかのような動作を取り出した。すると相手の左右から対象を狙うかのように巨大な大型トラックが現れ、けたたましいクラクションの音と共にやって来る轟音を相手は耳にしだした。

だがそんな事では怯む素振りを見せず、相手はその場で膝を曲げて勢いよく跳躍すると、トラック同士は正面から衝突しその場から霧散するかのように消えて行ってしまうのだった。


「アハハッ、可笑しなモノDEATHデスね。自由であるも力を望まず、死した者の弔いをせんとばかりに魔法を使う。貴方は人に対し甘過ぎるのDEATHデス。」

「抜かせっ……!! それの何が悪い!」

「この魔法は他者へ対しても放てるが自己へ対しても放てる力。見返りすらも無く消え果る願いなど無意味、人間などにそのような感情は不要なのDEATHデス!」

「だからって、相手を喰い物にして良いって言うのかっ!! そんな事をさせる為にグリスン達『獣人エリナス』が魔法の力を与えたって、お前等は決めつけが過ぎる!!」



「決めつけ? 面白い事を言うのDEATHデスね。」

「何っ……?」


不意に相手の口ずさんだ言葉を耳にした時、ギラムは長杖を手にしたまま動作を止めるも、武器を構える体制だけは崩さぬように相手と対峙しだした。相手の動きを視たデスもまた華麗に武器を振りかざす様に宙で数回クルクルと回し一度地面へと柄を突くと、コチラもまたやり取りをする気である仕草を見せだした。


「彼等が何の利益も無しにこんな力を童達に渡すと、貴方は本気で思っているのDEATHデスか?」

「………」

「真憧士と呼ばれていた存在同士が争い、戦い、負けた者達は命の灯を失って行く。そのうえ勝者は敗者を尻目に魔法を行使し続ける事で、身体に何の影響も無しに魔法を使う事など出来ない事は、既に誰かが立証しているのDEATHデス。他の同士スートで影響が出ていた事も、理解しているDEATHデスよ。」

「………ならお前は、そんな連中の為にだって言いたいのか。」

「アハハッ、童はどこぞの『教皇ヒエロファント』とは訳が違うのDEATHデス。あの者は絶望に身を落としその感情のままに貴方へ決闘を申し出て、果てて行ったに過ぎない。同士で庇うなど、無意味な事は童はしないのDEATHデス。」

「………」

「もっとも、女帝エンプレスの様に人を喰い物にしている様で別の発端を引き起こそうとしていた者も居たのは理解しているのDEATHデス。世界がどうなろうと自らが他者の望みを叶える為に魔法を行使する事をしているのであれば、それは貴方に近くも行いそのものは異なると言っても良いのDEATHデスね。」

「……何が、言いたいんだ。」

「……まだ御判りでは無いのDEATHデスね? 仮定はどうであれ、彼等は童達の事を『同士討ちさせよう』としているのDEATHデスよ。その為に強大な力を与え身に余る行いを行使させ、残った者達を彼等が殺す。それ以外にこの力が存在する意義が無いのDEATHデス。」


やり取りをして他のスートの者達の行いを思い出したのだろう、デスは恰も袖口を口元に当て妖艶な仕草の中で笑みを浮かべ出していた。彼等の行いもまた自由の中で行っていたとはいえ、それが希望か絶望かなどは結局の所彼女からすればどちらでも構わなかったのだろう。


憎しみの中で魔法を使っていた、その先の未来を見据えて自らを代償に魔法を使っていた。


他のスートの者達も同様に個人で想いを抱き今まで教団として行動していたが、最上位の魔術師が消え去った以上その柵も決壊している。故に本来あるべき姿と成り策略に乗った上で行動を取ればいい、デスはそうギラムに悟らせたかったようだ。



しかし、


「ハッ ……何を言うかと思えば、そんな事か。」

「?」

「仮に同士討ちが目的で俺等を倒す気なら、最初から魔法の力なんて与えない方が良いに決まってる。それでもなお俺がこの戦いから逃れられない事をグリスン達が理解した上で接触して来たって言うのなら、俺はただ別の経緯で依頼を受けただけに過ぎない。そいつからの依頼を、ただこなすだけの為にな……っ!!」

「まだ甘い事をぬかすのDEATHデスね、貴方は……!! 自己では無く、他者であると……!!」

「幾らでもぬかしてやるよっ!! 奴等に対しての憎悪なんて、俺は持ちたくないんでなぁああ!!」


彼等の中で行われるやり取りに近い交渉は、至って平穏なモノとはならないのだろう。結果的に決裂し再び武器を手にして戦う所を視ると、彼等は他のリアナス達以上に魔法や世界へ対する見解を有し、一人のリアナスとして戦っているに過ぎないのかもしれない。



策略を知った上でその力を我が物とし、その上で作戦を捻り潰して世界を自分の望む姿に変えてしまえばいい。

策略だったとしてもそれを仮定として相手の願いを聞き届け、手中にあるであろう力を望む未来にしてしまえばいい。



決して相容れる事の無い者達の戦いは激しさを増すばかりであり、その場に居ない別のスートの主が言った通り『普段の世界とは異なる場所での戦い』と言う表現が一番近いのだろう。現実に影響を及ぼす事のない魔法の空間で戦う彼等の闘志は、未だにぶつかりあうのであった。

次回の更新は『11月29日』を予定しています、どうぞお楽しみにっ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ