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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第九話・現代都市の繁華は紅色に煌めく(リーヴァリィのはんかは べにいろにきらめく)
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13 守護自由凪行(しゅごとじゆうのないだかぜ)

一方その頃、チェリーとリブルティに正面特攻を任せていたギラムはと言うと………



「………」


彼女達の申し出もあった事も含め、彼はあえて『表向きの戦力』としてでは無く『奇襲部隊』としての行動を取るべく、ホテルの二階層内部へと潜入していた。


ザグレ教団が二度にも渡る挑戦状を叩きつけて来た以上、自身がその戦闘から離脱する事はそもそも望まれていない事実は解っていた。元より『逃走』する事をギラム本人が選んでいなかった為その線は初めから無かったに等しいが、彼からすれば『自身の消耗を図る目的』が向こう側の意図としてチラついていた為、派手に動くべきかどうかをずっと考えていたに過ぎない。

おまけにサインナが気にしていた『仲間の一件』も加味してしまえば、時間経過で仲間達が次々と敵の手に堕ちる事の方が、ギラムにとって特に不利な状況になる事も解っていた。


ではどうするべきかを彼が考えていたその時、チェリーとリブルティに遭遇したのである。


『あの二人なら魔法面で任せられる部分も多いし、メアンやサインナ達が獣人エリナス達の為に行動してくれてるのなら仲間の心配は皆無。フィルとグリスンを捕られたのは痛手だが……こういう時は、連中の注意を何度も他方へ引いて集中力を削いで行くのが良い。幸い注意を引くのはどっちも同じだろうからな、引き我意が有る……!!』


そんなこんなで現状で揃った駒での行動を検討した結果、今の様な戦力構成と成りギラムは独り裏手から潜入を試みたのである。


ちなみに今は敵側に目撃されない用具室の中で身を潜めており、彼女達の活動時間が一定に達するまで息を潜めている状態。聊か地味な行いの最中のため派手さには欠けるモノの、行いを始めれば一瞬で向こう側の注意を引けるシンプルな時であった。


「……… ……なあラギア、一つだけ良いか。」


スンッ……


《どうした。汝が我を呼ぶ場では無いと想うが。》


人気の無い外部からの明かりだけの室内にてギラムが呟いたその時、彼の周囲に冷気交じりの煌めきと共に氷龍が姿を現した。彼の声に反応する様に独特な声が脳裏に響く中、相手もまた意図を汲んでか全身は出さず顔と前腕のみをその場に見せていた。


「戦闘面でラギアに頼るのはまだまだ先だが、確認だけな。……俺は正直言って、正面に立ち過ぎると後方が見えない事が多い。冷静に成れる状況が用意されてる戦況とは思えないが、それでも俺が成せる確率が有るかどうか。聞きたくなってな。」

《……愚門だな。汝は我が見定めし存在。苦労や挫折は有れど、それを乗り越えられるだけのモノは持ち合わせてるだろう。自信を持ち、己の志を確固として持ち続ければいい。》

「あぁ、そう言ってくれるだけで頼もしい限りだ。………やれないとは始めから思わないが、やれる事はしたい。その時は頼むぜ、ラギア。」

《承知した。》


スンッ………


他愛もないやり取りで何かを満足したのだろう、彼の返答を聞いたラギアはあっさりとその場から姿を消してしまった。消失と共に生じた少量の煌めきが再び彼の周囲に降りる中、彼はその場で静かに立ち上がり軽く身体を動かした後、手元に拳銃を生成し静かに外へと出る扉へと向かって行った。その後扉を背に外の様子を窺がった後、静かに一呼吸置きながら普段よりも眼付を鋭くし、ドアノブを捻り外へと飛び出して行った。



ギラムがドアを捻り廊下へと飛び出した後、彼の行動は迅速かつ手際の良さが目立つ行動が強かった。正確には『廊下』ではなく『展開された空間』がホテル内部には広がっていたものの、その辺りに関してはギラム本人が驚く事は無く、寧ろ相手側の動揺と困惑の声が上がるばかりであった。


彼の戦闘は基本的に『魔法寄り』と言うよりは『白兵戦寄り』であり、迫りくる対象を確実に止める事を優先する戦い方をしていた。接近を試みる相手に関しては武器を弾きつつ特定の部位への衝撃を与えてからの昏倒、遠距離からの対象に関しては可能な限り攻撃を避けつつ銃撃での行動抑制、可能であればそのまま接近し同様に対象を止めて行く。次から次へとやって来る相手を諸戸もしない動きで確実に一人、また一人と対象を撃破していく。


行いとして変わらずに『消す事』はしておらず、教団員の下っ端達は片っ端から『床へと伏せさせられて行く』のであった。


『……しっかし、解ってはいたが数が多いな…… 多人数での連戦は不利なのは承知してたが、量産されてる勢いで仕掛けて来やがる……!』

「ハッハッハッ! まだまだこの数に耐えられるかな!? お前の目的が我等の向こう側なら、扉の前を固めてしまえば必然的に全員とやらざる得ない! その身の体力、思う存分削らせてもらうぞ!!」

「チッ!」


しかし向こう側からすればギラムの動きは派手かつ注意を引くが、指示を出す司令塔からすれば対した問題では無かった。狙いが独りならば総攻撃を仕掛ける動きさえ指示すれば気にするモノは無く、仮にもし襲撃者が居たとしても人の壁が展開されてるに等しい状況では、音や動きの変化で即座に気付く事が出来る。ましてや報告にあった創誓獣『ラギア』をギラムが召喚していない以上、大技が来ない事も教団員達は予見していた。


動きの速さは相変わらず変わらないモノの敵の猛攻でイタチごっこに成りつつあった状況に、ギラムが苦戦を強いられていた。そんな時だった。


「そこだぁああ!!」

「クッ……!!」



バシュンッ……!


「ギラム准尉ぃいいーーーー!!!」

「【エイネスドルール・メルヘンプラーク】!」


ギラム目掛けて襲撃を試みようとした複数の教団員達の動きを視て、ギラムが咄嗟に拳銃を盾にしようとした瞬間。彼等の元に活気と威勢に溢れた声と共に魔法の祝詞が放たれ、彼等の目の前に変化が生じたのだ。


彼等の目の前に起きた変化、それは『強烈な閃光』によって周囲の色彩を一気に奪うモノ。先程まで動きと彩りが目で追えていた状況が一変、視界がホワイトアウトした隙を突いてかギラムの前に二つの影が降り立ち、その内の一人がギラムにやって来る閃光全てを塞ぎ視界を確保しだしたのだ。


強烈な光を目にし目元を腕で守っていたギラムであったが、その行いによって降り立った気配の内の一人の影を認識、蒼色の肌と白の装束を眼にしたのだった。


「ッ……! ライゼ!?」

「遅ばせながら、助太刀するっすよ! ギラム准尉!」

「オイラも右に同じぃーっ 突破口開くから、その隙に行っちゃって良いよぉ~? ……【クァールル・ウィンターフレンド】!」


彼の眼の前で自身を護ろうとしていたのはライゼであり、以前クーオリアスにて眼にした装束姿でギラムの援護に現れたのだ。声と共に目の前で笑顔を見せる鷹鳥人の声に反応して別の聞き慣れた声も聞こえてくる始末であり、再びギラムの身体に変化が現れるのだった。


自身の前で未だに周囲に展開される閃光から視界を護ってくれるライゼに対し、身体の変化を起こしたのは翠色の装束を纏った猫獣人のリミダム。互いに現代都市リーヴァリィ周辺へ展開された壁を潜り抜け、内部に潜入していた事は敵側の発言で理解していたが、まさかこんなに早急かつ土壇場な状況で現れるとは思って無かったのだろう。

次々と目の前で起こった変化に驚く中、ギラムは腕を下ろし身体から疲労感が抜けていく感覚を感じながら、目の前に立つ二人の存在にこう言うのだった。


「……任せて良いのか、二人に。」

「勿論っすよ、ギラム准尉。そのために俺達は来たんすから!」

「そーゆー事っ! 【エイネスドルール・ウェルカム】!!」


声を耳にした二人は互いにそう言った後、リミダムは手にした杖を華麗に振り回しながら祝詞を口にし、目の前に魔法を放ち出した。放たれたのは強力な風圧と風刃による『カマイタチ』であり、視界を奪われた事も有ってか次々と教団員達を凪ぎ倒して行き、彼の目的地へと向かわせてくれるであろう上層階への階段までの道を半ば強引に切り開くのだった。


改めて魔法の力と彼等の加勢に圧倒されるも、そんな彼を後押しする様に再度リミダムは体制を戻した後、ギラムの背後に移動し相手の身体を軽く押しつつこう言うのだった。


「はーいギラム、レッツゴー!!」

「あ、あぁ……! ありがとさん二人共!! 無事で居ろよ!!」

「うっす!! ギラム准尉、ご武運を!!」

「行ってらっしゃぁーい。」


現状に駆けつけてくれた二人の仲間達の意図と行いを胸に、ギラムはその場を駆け出し薙ぎ払った教団員達の身体を軽快に避けつつ、目の前にある階段へと駆け出した。彼の動きに合わせて強烈な閃光は徐々に弱まって行った為か、彼の動きに合わせて凪いだ風の動きを察してか、司令塔として指示を出していた教団員は彼の動きを知り、慌てて身体を起こしだした。


だが、そんな彼の動きよりも早く行動を起こした者達が居た。


「クッ……!! しまった!!」


「さーってっと。ココから先は行かせないっすよー」

「!」


ギラムは階段を駆け上がって行った直後、彼の後を追わせまいと階段前に立ちはだかった存在達。それは彼を護り後の行動を見送ろうとしたライゼとリミダムであり、互いに使用する武器である盾と杖を手にしたまま、彼等と対峙する体制を見せていた。


「エリナス!? 何でこんなところに!?」

「何言ってんだ、三下共が。俺達は最初から、ギラム准尉を始めとしたリアナス達とは別行動だったっつーの。」

「おまけにオイラ達の同士を捕まえてるって聞いたら、オイラ達も放ってはおかないーって話ぃ~ 説明なんてその程度で十分だよねぇ~」

「チッ! ならば奴等諸共、鳥と猫を捕獲だ!! 捕虜として奴隷にすれば、魔法の糧にも玩具にも貢献し放題だ!!」

「「ハイ!」」


「そんな事、させるわけねえだろうがっ……!! リミダム!!」

「りょうかぁーい!! 【エイネスドルール・コスモポリタン】!!」


双方の解釈に幾多のズレが生じる中、司令塔の放った言葉が彼等の癪に障ったのだろう。気に食わないとばかりに歯を食いしばりながら告げるライゼの言葉に反応して、リミダムはその場から教団員達に対し流れる強烈な落雷の魔法を放ったのだ。


床を這う様に流れた電流は次々と彼等の動きに制限をかける中、リミダムは普段よりも目付きを鋭くさせながらこう言い放った。


「さっさと身を引かないんだったら、オイラ達が本気で相手しちゃうから……! 覚悟、出来てるんだよねぇえ!?」

「「「!?」」」

「リミダムを本気で怒らせたら、お前等なんて敵じゃねえっすよ!! マウルティア司教指揮、衛生隊所属……『ライゼ・スクアーツ』!! 参る!!」

「レーヴェ大司教指揮、輸送隊所属……『リミダム・ティブレン』!! いっきまぁああーーっす!!」



バッ!


そして再びギラムの行動に賛同した者達が、敵対する組織との戦闘を開始するのだった。


次回の更新は『12月17日』を予定しています。どうぞお楽しみにっ

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