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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第九話・現代都市の繁華は紅色に煌めく(リーヴァリィのはんかは べにいろにきらめく)
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09 侍女罠(じじょたちのわな)

人知れず隠れた場にてグリスンがやり取りを交わしていた、その頃。ギラム達一行は二つのグループに分かれ、各々の目的地へと向けて現代都市内を移動していた。


現状の彼等に課せられた目的は大きく分けて二つであり、その内の一つは『現代都市内に展開された空間魔法の消去』だ。此方はテインの創誓獣達によって判明された事実を元に大まかな目的地を割り出していた為、敵の数が多いと想定はされるも『明確な場所が特定出来ている目的』でもあった。

そんな目的を遂行するのは『サインナ、アリン、テイン』を始めとした『リーヴァリィ内でも顔の知れた者達』であり、令嬢と子息の護衛も兼ねてギラムから直々に任命されていた。


「ギラムさん達は、大丈夫でしょうか…… 私達は目的地がハッキリしていますが、彼方あちらはそこからの捜索となっているんですよね。」

「えぇ。その辺も含めてギラムは自ら行くって言ったのだから、私から何も言う事なんて無いわ。」

「そう……ですよね。」


都市内の移動の為にと用意した治安維持部隊の乗用車の車内にて、サインナはハンドルを操作しながら後部座席に座るアリンの問いかけに答えていた。他の隊員達は別の場所に配置し祭りの運営を担って貰っている為か、現状は三名でのやり取りであり完全に真憧士絡みの話だ。しかし自粛しなくてはならない理由も無かったが故なのだろう、アリンは心配そうにそう呟きながら目の前に座るテインの顔色を窺いだした。


するとその視線に気付いたが故か、テインは膝元で休んでいた創誓獣『チュウヒ』の頭を撫でつつこう言いだした。


「でも、本当にギラムって凄いよね。僕は皆に比べて見知った期間が短いから、あんまりよく知らない部分が多いのは理解してたつもりだけど…… 治安維持部隊やリアングループとの仲介を担える人って、早々居ないと思うよ?」

「それは同意ね。職権乱用してまで実力行使する真の熱さは変わらないけれど、私達を始めとした存在達を想って行動を起こす所も変わらない。准士官の頃からいつもそうだもの。」

「そうなの?」

「えぇ。だからこそ慕ってくれる部下達からの人望は厚かったし、自らを犠牲にしてまで何かを成し遂げようとする所は危なっかしいわ。……まぁ、真憧士の今でもそうと言えばそうかしらね。」

「フフッ、そうかもしれませんね。ギラムさんはお優しい方ですので。」

「本当ね。」


そんな彼女の目線を感じたが故の話題に対し、彼女達はそれぞれ口を揃えて回答を述べだした。過去と現在を視ていたが故に言える事も有れば、接点と経緯による年数が有っても変わらない部分があるのだろう。

ギラムと言う漢は『こういう存在だ』と三人は理解し、そして自然と笑みを浮かべるのであった。


今自分達の置かれている現状から笑って居られる状態では無いかもしれないが、それでも話題を出し合い気分を和ませあう事は可能だ。戦場であっても死地であっても変わらない心身の状態を気遣いながら、彼等は目的地のホテル『ゴルゴンゾーラ』へと向かって行くのだった。




そんなサインナ達が車にて南方へと移動していた、その頃。


「ヘグシッ…!!」


「? お風邪ですか、ギラムさん。」

「んや、何でもない。……誰かが俺の噂でもしてたんだろ。」

「ギラムは存在が目立つもんねー」

「キッキュッ」

「うっせっ」


サインナ達とは別行動を取っていた『ギラム、フィルスター、メアン、イオル、ヒストリー』一行は、カフェを離れ北部へと向かって進路を取っていた。


彼等の移動手段は徒歩だったため移動速度こそは遅かったが、周りの視線を気にしながら静かに移動できるメリットが存在していた。現状彼等の『明確な目的地』は存在しなかった事も有り、難を逃れたヒストリーの感覚を頼りに都市内を移動、結果北部へと進路を取る事となった様である。

そんな彼等が向かいつつあるのは、以前ノクターンと遭遇しチェリーに勧められた水族館『ロイヤルアデリー』の方角であった。


「ギラムさんが話題に上がる程の方だと言う事は、ボク達も理解していたつもりですけどねっ 初歩港ちゃん、どっちが気になりますか?」

「んー……… あっちぃ~」


時折話題を提供しながら進行方向を定めるべく、イオルはヒストリーに話しかけどちらへ向かうべきか聞き出した。すると子狐故の感覚なのだろうか、直感で気になる方角を指さした彼の案内に従って、一同は歩道を移動しながら水族館へと近づきつつあった。


ハタから見ればアイドル顔負けの美女二名のボディガードをする強面傭兵に視えなくもないが、細かい所は置いておこう。

そんな時だ。


『………』



「トレラン達、無事かなぁー お腹空かせてないと良いけどー……」

「………」

「? ねえギラムってばー」

「えっ? あぁ、悪い。飯食っておかなかったのか?」

「丁度野外ステージの打ち合わせをしていたので、その後ランチと言う手筈だったんですよ。初歩港ちゃんはボク達と行動していたので、丁度トレランスさんだけが別行動で……」

「そうだったのか。」


不意に何かを感じ取ったギラムが返答に遅れる中、彼等は時間帯も相まった話題を出し始めた。グリスンと共にギラムが昼食を取っていた時刻、その時のメアンを始めイオル達は完全に別行動を取っていたに等しい。収穫祭の催しに参加する者も居れば企画運営に携わる行動を取っていた者もおり、はたまた外部と治安を護るためにと指揮を取っていた者もいる。

自身の知らない時間帯の裏側を知れたが故か、ギラムは自然と彼女達の災難を理解するのだった。


自分と違って彼女達は完全に戦闘馴れはしておらず、それに対する危機管理能力にも優劣が存在している。幾ら真憧士とはいえ、その時の体調が万全とは限らない現状が何時でも存在する事を、改めて理解するのだった。


「ギラムんの所は平気だったの?」

「俺は早めの飯にしてたのもあったが、こういう時に空腹な方が不利だからな。グリスンにもそう言って飯を食わせてたんだ、なあフィル。」

「キュッ」

「流石はギラムさんですねっ そちらも戦場での経験ですか?」

「別に死地で学んだわけじゃねえけどな……… まあそんな感じだ。」

「さっすがー」


とはいえ彼もまたサインナ達と同じく雰囲気を張り詰めたモノにしまいと、あえて適当な話題を振っていたのは意図的なモノなのだろう。和やかなムードに包まれつつある中ギラムはそう返答すると、周囲を警戒しつつ先導を二人のアイドル達に任せていた。自らの相棒として肩に乗ったままのフィルスターも主人の行動に合わせて顔を左右へと向けており、此方も警戒を怠らないようにしていた。


まさに、その時だった。


「やっぱアッチの方かなー 隠れやすそうな所多そうだしー」

「そうかもしれませんね。」


シューン………


「! キキキュッ!」

「ん? ……!!」



「メアン、イオル!!」



ドンッ!


「あーん!!」

「うわあっ!?」


突如何かを感じたフィルスターの声を聞きた瞬間、ギラムは目の前を歩く二人の足元に違和感を覚え、咄嗟に動いた身体の勢いで二人の背中を両手で押し出したのだ。屈強な肉体に等しい身体から放たれた強烈な力だった事もあり、勢いよく吹き飛ばされた二人が前のめりに転ぶ中、彼女達は驚きながらも後方を確認した直後、ギラムの姿がその場から消えてしまうのを目撃するのだった。


彼の姿が目の前で消えると同時に足元には白く淡い閃光を放つ魔法陣の様なモノが残っており、どうやら罠に掛かりそうになっていた自分達を助けてくれた事を二人は理解するのだった。


「ギラム!?」

「ギラムさんっ!!」


慌てて彼の姿を探すも黙視する事が出来なかった事に加え、魔法陣が徐々に消えて行ったのを目撃したためだろう。メアンとイオルは慌ててその場に立ち上がり背中合わせに成りながら周囲を警戒しだした、その時だった。


「……流石はギラム様ですね。敷いた魔法陣トラップを発動する前に御身体が動き、御二人をお助けするとは。」

「予想出来て居たとはいえ、スターも驚きです。……とはいえ、コレも予想の範囲内なので良しとしましょう。」

「えぇ。マダムが御執心になる理由をまた一つ、サン達は理解出来たと言う事ですからね。」


「「……!!」」


メアン達の居た空間周辺が瞬時に変化すると同時に、イオルの前方から話し声と共に三人の少女達が目の前に現れだしたのだ。それぞれが黒いフードを被りつつも身に着けている侍女服がフード越しにチラチラと見える中、三人はそれぞれフードを外し面と向かって彼女達と向き合う様に立ち止まったのだった。


「誰なの、貴女達ー!!」

「御挨拶が遅れて申し訳ありません。『メアン・スムロ』様。『イオル・ノティス』様。」

「……ボク達の事を御存じなんですね、皆さんは……?」

「はい。ギラム様の元にて活動するネットアイドルの御二人。……そして、イオル様の元にて行動する『ヒストリー』様とお見受けいたしました。」

「私達はザグレ教団の傘下、エンプレス様の元にて行動いたします『ムーン、スター、サン』と申します。以後、お見知りおきを。」


その後自らの正体を明かしながらスカートの裾を掴み、三人は丁寧にその場でお辞儀をしだした。はたから見れば人形の様な井出達かつ同じ顔が並んでいるようにしか見えないが、事実彼女達は『三つ子』であり似ていて当然だ。


改めて敵である事を理解した二人は手元にフライパンとマイクを創り出した後、ヒストリーを背後に隠しながら要件を問いだした。


「ギラムさんを何処へやったんですか……?」

「御安心下さいませ、ギラム様の御身体へ対する異常は感じられません。転移魔法による行い、とだけ申しておきましょう。」

「そして私達は貴女方のお相手を仰せ使いました。その為、この場にて私達のお相手をお願いいたします。」

「エンプレス様からのご命令により、しばしの間お相手をして頂きます。どうぞ遠慮なさらずに魔法をお使い下さいませ、その為の陣は展開してありますので。」


侍女達はそれぞれ身に着けていた髪留めを杖の形状に変化させると、それぞれが配置に着き一斉にお相手する体制を取り出した。それを視た二人もまた警戒して足元に力を入れる中、後ろにいたヒストリーもまた手元に大きな手裏剣を創り出し、戦闘態勢に移行するのだった。


「ヒストリーも相手する……! ギラムお兄ちゃん、返して!」

「いずれ再会出来ますが、それを語るには至りません。」


「「「御覚悟下さいませ。」」」


「いっくよー!」

「行かせてもらいますっ!」



バッ!


彼女達の戦いの火蓋が、切って落とされるのだった。


次回の更新は『10月28日』を予定しています、どうぞお楽しみにっ

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