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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第一話・強面傭兵と願いの奏者(こわもてようへいと ねがいのそうしゃ)
24/302

10 心(こころ)

無事に契約を済ませ、新たな同居人として迎えられた虎獣人『グリスン』 その日からギラムと一緒に住む事となり、その日の夕食を終えた後の事だった。



「ご馳走様でしたー」

「お粗末様。」

定時となる夕食の時間に食事を済ませ、二人はそれぞれ合掌し食事を終えていた。簡単な食事しか用意できないと言っていた彼の料理は、どれも手軽でボリュームのある献立となっていた。

菜食と肉料理がメインとなっている彼の夕食に対し、グリスンは文句等を1つも言わずに料理を堪能し、空腹を満たした様だ。ちなみに余談ではあるが、彼等の食事のお供として用意された飲料はスポーツドリンクが支給されており、何処となく若さが残る食事風景であった。

「お前、意外と少食だったのか。 もっと食べそうな雰囲気があったな、獣人って。」

「僕よりもたくさん食べる人は居るけど、僕はこれくらいが丁度良いんだ。 ごめんね、美味しい料理なのにたくさん食べなくて。」

「ぁ、いや。 それは別に良いんだが……… そっか、お前等も俺達ヒトと同じで、食事の量とか好みもあるのか。」

「意外だった?」

「まぁな。」

食事を終え残った皿を片付けつつ、新たな同居人の食事量が少ない事にギラムは軽く驚いていた。

彼の想像していた虎は肉食中心の食事を取り、比較的量を食べるイメージをしていた様だ。しかしグリスンは体系に見合った食べ物の量しか口にすることは無く、味付け的には食べたいが、口にはしないと話していた。ギラムよりも細身である事も踏まえ、思った以上に小食なのだろう。

不思議とイメージを覆す彼に対し、ギラムは何かを理解した様子でシンクに立ち、洗い物を始めた。静かに流れる蛇口の水をトレーの中に満たしつつ、そこから他の食器へと水を渡しており、少ない量の水で洗い物を行っている様だった。肉料理から出た油はしっかりと洗剤で落とし、なるべく無駄のない行動をとっている様にも見えた。

「食い物の好みとかは、また今度聞かせてくれ。 それに合った料理、調べてみるからさ。」

「うん、ありがとうギラム。」

両手を動かしながら、ギラムは向かいに座るグリスンに声をかけ、次からは好みに合った物を作ろうと提案しだした。彼の提案を受けたグリスンは嬉しそうに返事を返し、特にする事が無い様子で大人しく座り、彼の様子を眺めるのだった。

皿を片付けた際に移動したグリスンは、彼と並んで皿を洗おうかと考えていた。しかし一人暮らしの空間に慣れていた彼にはいらないお世話であり、下手をすれば互いの両肩が衝突し、洗い物がスムーズに進まないかもしれない。そう言った観点からグリスンは大人しく座る事を選んでおり、何かしたいが何をしたら良いのだろうかと考えている様にも視えた。

思った以上に彼の契約したリアナスは、想像以上に何でもできる相手なのであった。

「そういや、風呂とかはどうする。 入るか?」

洗い物を片付けながら、ギラムはふと風呂に関する事柄はどうするのだろうかと質問しだした。彼は普段、湯船に浸かるよりもシャワーで日々の疲れを取ってしまうタイプのため、湯を張るという行いを自宅ではしない。しかし場合によってはそれが必要になるだろうと思った様子で、グリスンの返答を聞いていた。

「ギラムは何時も、お風呂はどれくらいに入るの?」

「大体飯食って、洗い物終わった後だな。 風呂って言うよりシャワーだが。」

「じゃあ、先に入っちゃっても良いかな。 時間配分ずらしちゃったら、悪いからね。」

「あぁ、助かるぜ。 汗、流してきな。」

「はーい。」

彼からの質問を耳にしたグリスンは返答を返すと、席を立ち先に湯浴みを済ませる事に決めた様だ。特に着替え等の荷物は無い様子で部屋を移動したグリスンは、廊下を歩き目的の部屋を探した。

が、しかし。



「………お風呂、何処?」

「あぁ、悪い。 廊下の突き当たりだ。」

「ココ?」

「そっちは倉庫。 こっちだ。」

まだ住み慣れていないその空間の間取りが理解出来ておらず、彼は元来た道を引き返し風呂場は何処かと質問した。彼の質問に対しギラムは返事を返しつつ濡れた手をタオルで拭くと、彼が行動できるよう道を示してくれた。だが即座に理解してくれるほど隣人は理解が優れておらず、危うく違う部屋に入ってしまう所だった。

その後再び彼の案内で目的の部屋へと到着すると、グリスンは苦笑しながらも礼を述べた後、湯浴みをすべく扉を閉めた。何処となく幼さが残る彼の言い方は、可愛いくもあった。

『………なーんか調子狂うんだよな…… 絶対年誤魔化してるだろ、アイツ。』

しかし笑いながらお礼を言うグリスンに対し、ギラムは見た目と精神年齢が比例しない事に違和感を覚えていた。


出会い頭の際もそうであったが、彼は見た目と実際の年齢に差のあるやり取りをする事が多かった。相手の実年齢は『19歳』とギラムよりも年下であったが、大きな瞳や言動の優しさから、もう少し下なのではないかと思わせるくらいである。だが年齢をごまかす理由などグリスンには無いため、嘘は付いていないのだろうと、やはり釈然としない気分になるのであった。

『……ま、とりあえず無茶だけはさせないようにするか。 下手したら、アイツの力量に見合わない事とかを無理してやりそうだしな。』

そんな彼が一生懸命に行動したいという気持ちを持っている事、自分のために頑張ろうとして接してくれている事を、ギラムは十分に理解していた。自分が楽になるために何をしたら良いか、何をしたら感謝してくれるかと言う気持ちが見え隠れしており、出来そうだが前に進めない気持ちを持っていた。


それだけ相手のために何かをしたいと思っているからこそ、ギラムは彼に無茶をさせない様にしようと思うのだった。

「ぁ、そうだ。 洗い物しねぇと。」

湯浴みを開始してからしばらくして、グリスンの事を考えていたギラムは洗い物が途中であったことを思い出した。水は止めて彼の道案内をしたため無駄にした部分はないものの、気を使って先に入ってくれたグリスンの気持ちを悪くしない様にと、早めに作業を終えようと思うのだった。



それからしばらくして、シャワーを浴び終えたグリスンと入れ替えで、ギラムはその日の疲れを取るべく風呂場へと向かって行った。恐らく使用したであろう小物達が少し動いているのを見た後、彼は着用していた服を脱ぐと、洗濯機の中へと投入した。その後シャワーを浴びようと思い部屋を移動した彼は、入口付近に見慣れないモノが置いてあることに気が付いた。

「……あれ、コレあいつのか。」

浴槽のある部屋と脱衣所を仕切る扉の近くに置かれたタオル置き場には、少し大きな音響用のイヤフォンが置かれていた。プラスチック製と思われる半透明の本体の中には、ギラムの腕に刻まれた刻印と同じ文様が入っており、グリスンの私物であることが理解できた。忘れ物を見つけ軽く手にした彼は自身の耳に合うのかと思い軽く合わせてみると、サイズが所々合わず、耳のサイズも大きい事が判明した。

「デカいな。 ……コードレスのイヤフォンってところか。」

軽く遊んで気が済んだのか、ギラムは手にした道具を元の場所に戻し、シャワーを浴びに向かって行った。先客が使用していたためすぐに出てきた温水で汗を流し、気持ちよさそうに身体の疲れを取るのだった。



「………ぁー、そういや寝る所用意してなかったな。」

シャワーによる入浴を終えたギラムはリビングに戻ると、眠そうにしながらもソファで座ったまま待っていたグリスンが居た。しかし待っていた彼は今にも寝てしまいそうな雰囲気を見せており、うつらうつらと身体が地面に向かいそうな動きを取っていた。一言で言ってしまえば、眠そうである。

「んー……… 僕はソファでも良いよ………?」

「まぁそれもアリなんだが、さすがに同居人を常にソファに寝かせとくわけにもいかねえだろ。 客人とかが来た時に眠いとか言われたら、どうしようもねえしな。」

「ぁ、そっか…… ふわぁ………」

寝床をどうするかと考えだしたギラムに対し、グリスンは目を開けココで良いと言い出した。とはいえ客人の来ない家ではない彼の部屋のリビングでは、何時ソファで眠るグリスンを視えない目を持つ相手が座りだすか、分かったものではない。そう言った心配もなるべく減らしたいため、ギラムは寝室の何処かに寝床を作るべく行動を開始した。

「ちなみにだが、何処で寝たいとかあるか?」

「ううん……… ……しいて言えば、ギラムの近くが良いな………」

「そしたら……… 窓際のココとかどうだ。」

未だに眠そうにするグリスンに対し、ギラムは彼の寝床としてベット近くの窓辺を勧めてみた。ベットサイドのテーブルだけ置かれたそのスペースは広く、ベットの向かいとは違い日の光が当たるため温かい場所と言えよう。時期的に見ても段々と熱くなるため、体毛の多い彼にもちょうど良いだろうと思った様だ。

勧められた場所を目にしたグリスンは軽く頷き、彼の近くで寝られることが決定した。

「そしたら何枚か布団用意してやるから、しばらくはそこで寝てくれ。 何時かベットとか用意してやるからさ。」

「ぇっ、でも……… 一人暮らしでベットが二つじゃ、違和感あるよ?」

「寝室なんだし、そういうのは関係ないさ。 それにベットじゃなくても、ソファとしても使える『カウチ』って言う便利な物もあるからな。 誤魔化しは幾らでも効くさ。」

「そうなんだ…… 頭いいね、ギラム。」

「そりゃどうも。」

簡単ではあるが、今後誰かからの問いかけに対し答えられる用意をすべく、ギラムは左程気にしない様子で予備の布団を取り出した。冬用として用意していた羽毛布団はふわふわであり、床に敷いても十分な存在感をアピールしていた。緑色の雲の様な寝床が出来上がると、グリスンは上着を脱いで横になり、気持ちよさそうに身を埋めだした。

「うわぁ……気持ちいい………! 雲みたいだね。」

「中々良いだろ?」

「うんっ! ………後、防虫剤の香りがする。」

「あぁ、中に入れてたからな。 気になるなら、何か別のにでもするか?」

「ううん、大丈夫。 嫌いな匂いじゃないから、安心して。」

「そっか。」

出来上がった即席スペースを体感し、彼はすぐにお礼の言葉を口にした。ご機嫌なのか後方で尻尾が元気に揺れており、ギラムは大きなネコ科の生物を飼っている様な気分になっていた。

仮の話ではあるが、二足歩行をする小食だが大きな虎ともなれば、部屋での飼育は大変であろう。とはいえ手のかかる相手ではない様な気がしていたため、ギラムは左程気にする事なく彼の様子を見た後、隣のベットに横になった。横になると彼の姿は見えないが、窓辺で揺れている彼の尻尾だけは、居る事を主張するように動いていた。



「………ねぇ、ギラム。」

「ん?」

「ギラムって、何時からここに住んでるの? 子供の頃から?」

布団の気持ちよさを満喫し終えたのか、不意にグリスンはギラムに声をかけてきた。声尾を耳にした彼は目線を下げようとベットサイドまで寄ると、そこには雲間から顔を出すかの如く可愛さ爆発の虎獣人の顔が目に移った。ちなみに爆発だと思うのは、彼ではなく著者と一部の人達だけである。

「いいや、ココに来たのは数年前だ。 父親を早くに亡くして、母親が俺の事を育ててくれた。 リーヴァリィの街に来たのは、母親にずっと迷惑を掛けたくない、その一心だな。」

「そうだったんだ…… でも、良いなぁ。 辛い思い出ではあるけど、記憶があるっていうの。」

「そうなのか?」

「うん。 僕達にはね、そういう記憶とか思い出に値する事ってあんまりないんだ。 契約する事、創憎主(そうぞうしゅ)を倒す事。 ………それを倒せるのは、真憧士(まどうし)だけなんだって事。 学術書とかもあまり読む方じゃなかったから、いろいろ知らない事がたくさんあるんだ。」

「なるほどな。」

「記憶を埋め込まれてるって言われたら、そうなのかもしれないんだけどね。 でも僕には、そういう記憶になる出来事とかほとんど無くて。 この制度を目の当たりにして、僕もリアナスに行くって事になった時。 僕ね、本当は嫌だったんだ。」

彼の軽い思い出話を聞いて、不意にグリスンは羨ましそうに言葉を呟いた。謎めいた発言を聞いたギラムは質問を返すと、彼には『思い出』と呼べるものは無く、記憶になって居る事は自分達が行動する理由と魔法だけなのだと、静かに語り出すのだった。


 契約し魔法と呼べる現象を扱い、敵を倒す憧れの存在『真憧士』

 現実世界を好きに操作し、死さえもコントロール出来る悪しき存在『創憎士』


その制度を知った時、グリスンはこの行動を行う事を拒んでいた事を話した。

「僕達の敵の総称が『創憎士』って呼ばれるのは、憎しみを創り出す魔法を周囲に発生する事が出来る様になっちゃったから……… 心の闇が優しさ、憧れ、幸せをも消してしまった。 だからこそ、その人が求める救済策が自分達の思い描く世界を創り出す事なんだって、思ってる。」

「つまり。 そいつ等は不幸な連中が生み出した考えが、そうなるに至ったって事なのか?」

「うん。 その人は悪くないのに、周りの環境がその人を苦しめた。 だから心が傷だらけになって、苦しんで、病んで行った……… 時々居ないかな、会社とかに『元々元気だった人が、いつの間にか元気じゃなくなっちゃった』って思う瞬間。」

「……目の当たりにはした事が無いが、居るのか。 そういう奴が。」

「幸せと不幸は、同じだけその人に来る。 僕達は元々、リアナスの心を護るために存在するから。 僕達の存在を知れたら、人によっては『僕達みたいな人達と、一緒に居るんだ』って思えるから。そう思えるだけで、誰かが戦ってるって思えないかな。」

「そうだな。 ……自分だけが辛いって思っても、グリスンが俺のために戦ってるって思ったら。それは大きな励みになるぜ。」

「真憧士の素質を持ってる人って、そういう見方を出来る人がほとんどなんだ。 僕達エリナスの存在に気付くきっかけを、何処かに絶対に持っている。 だからって言っても、戦う理由にはならないから…… 契約は、その時その時で出来るかが分かれるんだ。」

敵の呼ばれる存在の由縁を話しながら、グリスンは寂しそうに話し出した。


人として生きるためには、現実と空想を別にし生き方を分けなければならない。それが出来るための歯止めを失い、自分がこれ以上苦しまないための打開策として確立された魔法、それを扱うのが『創憎士』なのだと教えてくれた。戦う敵がどんな相手なのかを知り、ギラムは意外な敵の正体に驚き元は普通の人なのだろうかと考えだした。

何処にでも居そうな普通の人が、周りからの環境に耐え切れず病んでしまい、世界を創りかえる魔法を生み出した。彼の話す簡単な事例を聞き、見た事は無いがおそらく居るのだろうと思うのだった。



どちらかなんてありえない、幸せと不幸は同じだけやってくる。

大きな幸せを得ていた分、辛い代償だからこそ自分達は払わなければならない。



グリスンは静かにそう告げ、不幸な時に辛さを緩和させてあげられるのが自分達なのだと言った。あるかどうかさえ分からない『心の世界』が存在し、その世界で自分の事を護ってくれている存在が居たとしたら。その人の行為の為にも、自分は生きなければならない。

とても些細な理由であっても、その人をその時だけでも生きさせる希望を生み出せる。彼等はそんな考えを持っている人達を探し、苦しんでいる人達の心を解き放ってあげる事が目的だと告げだした。


 殺すのではなく、心の闇を溶かしてあげたい。


しかしそれと契約とは別の話であり、リアナスが望まない限りそのような行動が出来るかは解らないと言うのだった。

「だからね、ギラムと契約で来た時、僕はすっごい嬉しかったんだよ。 普通の人とは違う、ギラムだけが持つ考えがある。そんな気がしたんだ。」

「俺だけが持つ考え………?」

「うん。なんとなくなんだけど、ギラムはそう言うのを持ってるんだって思うんだ。 ギラムはとっても優しいし、一緒に居てなんだか僕も落ち着けるんだ。 顔が怖いなんて、怒ってる時以外は僕は思わなかったよ。 ギラムの横顔、全然怖くないもん。」

そんな破断もある中、グリスンは彼と契約を交わせた事が何より嬉しい事なのだと教えてくれた。出会い当初の事も、彼が自ら契約を望み自分を探してくれた事も、それら全てが彼の心に響いており、一緒に居て落ち着けると言いだした。

「ギラム………?」

「………」

「ぁ……ご、ごめんねっ! また気を悪くさせちゃった!? 悪気は無いんだよ、ただ僕は………!」

だがしかし、ギラムにとって嬉しい一言が彼の口から言われた瞬間、ギラムは顔をベットに向け黙ってしまった。台詞に対し返答が返ってこない時間を目の当たりにし、グリスンは不思議に思い彼の姿を見ようと寝床から身体を起こした。するとそこには、枕に顔を伏せる彼の姿があり、グリスンは慌てて弁解をしようとした、その時だった。


「解ってるよ……… グリスン。」

「ぇっ………?」

そんな彼の言葉を聞いて、俯いていた彼から言葉が発せられた。言葉を耳にしたグリスンは彼の顔を見ると、どうやら涙ぐんでいる事を彼は悟った。


男の涙は見せない方が良いと彼は思ったらしく、癖で顔を伏せてしまったのだろう。彼の顔が徐々に枕から離れると、顔を見せずにギラムは口を動かした。

「お前が言う言葉に、悪気は無い事ぐらいさ。 ……ただ言ってくれた言葉が、俺の心に響いてただけだよ。」

「響く………?」

「俺の顔を、最初から『怖くない』って言ってくれたのは、お前が初めてでさ……… 自分ですら気にしてる事を、お前はあっさりした言葉で俺に言ってくれたんだ。 嬉しく思わない訳、ないだろ。」

落ち着いた声から慌てた声になったグリスンを感じ、ギラムは顔をゆっくりと上げながら静かに言った。ずっと抱いていた事を、目の前の相手に最初から怖くないと思われていた事。それが何より彼にとって嬉しい一言だったのだ。

子供から女性まで、あらゆる相手を顔の傷だけで恐れさせてきた。何も自分はしていないのにも拘らず、与えてしまう恐怖は、幼いと思われていた彼に言われたからこそ、効果があったのだ。左腕で涙を拭うように顔もとで動かした後、彼はそのまま笑顔を見せてこう言った。

「安心しな。 お前が頼り我意が無いなんて、俺は思ってないからさ。 お前はそのまま、俺の前で笑顔を見せててくれ。」

「うんっ」

笑顔を見せながら言う彼を見ると、グリスンはそう言いながら移動し、彼の額に自身の額を合わせた。そして互いに笑った後、床に就くのだった。


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