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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第六話・狩猟より退けし蒼き護人(しゅりょうよりしりぞけし あおきもりびと)
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24 混血(リアエルス)

治安維持部隊内で静かながらも熱い戦いが無事に終息し、何とか自らの命を狩られずに済んだギラムとライゼ。共に怪我や疲労感は有れど互いに無事である事を喜びながらその場に立ちあがると、ライゼは静かに歩きだし離れた場で倒れているイロニックの元で立ち止まり、そして静かにしゃがみ懐からあるモノを取り出した。それは彼が『真憧士リアナスである』証拠として立証されるクローバーであり、イロニックは『ピンバッチ』の形で携帯していた様だ。


その後無事に回収しギラムの元へと戻り許可を得ると、ライゼはその場でグリスン達同様に浄化の作業を行い出すのだった。



「……しっかし、俺だけの力じゃ准尉は護れねえか…… ありがとうございました、ギラム准尉。」

「どういたしまして。……なあ、前々から思ってたんだが………その『准尉』って言うのやめないか? 俺はもうココの人間じゃないんだからさ。」

「いーえっ、それだけはギラム准尉の頼みでも受け入れませんっ 俺の准尉は、憧れと成ったリアナス『ギラム・ギクワ』ただ一人ですから。それ以外の准尉は要らないっす。」


手元で煌めきを放ちながら周囲に光を発散していくクローバーを手にしたまま、ライゼは自らの意思を強く語る様にギラムに言い出した。浄化作業の光源の影響か彼の瞳も強く輝かせながら言い切っており、如何に彼の想いが強いのかを語るには十分過ぎるモノと言えよう。


そんな元部下であり親しい友人である彼からの言葉に、ギラムは少々押され気味になり微妙そうな表情を浮かべ出した。とはいえ彼なりの想いもある事は昔から知り得ていた事の為、彼はこれ以上交渉はせずにこう言うのだった。


「……これだから、部下のテンションには毎度毎度負かされちまうのかもな。そういう眼を見ると、それ以上は言いづらいな。」

「准尉が優しい証拠です。」


半ばその想いに応える様に彼はそう言いつつ右頬を掻くと、ライゼは変わらない笑顔を見せて笑みを浮かべるのだった。その笑い方は『アングレイ』と名乗っていた時のモノと何ら変わらない表情であり、彼自身が普段から見せていた笑顔は一切の作り笑いではない事を証明していた。口元がくちばしに成っても面影が完全に残っている所を見ると、彼が姿を変えていた理由はまた別にあるのではないかと思える程だ。


しかしそちら側の詮索はギラムはしない様にしようと思ったらしく、その事については一切聞く事はしないのだった。問えば無論応えてくれそうな雰囲気ではあるが、下手に敵側として居る彼等からの情報を仕入れるつもりも無い様である。重要であれ不要であれ、それはまた必要な時に得られるだろうと彼は考えていたのだ。



恐らくこの辺りも、ラギアに好かれた部分なのであろう。



そんな部下の浄化作業を見ていた彼は、ふとある事を思い出しライゼに問いかけだした。


「……なあ、ライゼ。」

「? 何ですか、ギラム准尉。」

「イロニックが叫んだ拍子に、俺の事を『戦友』って言ってたが…… その事について、何か知ってるか?」

「……… コレはお話しするべきかは解らず、特に触れない事にしていましたが。ギラム准尉がそういうからには、俺は答えます。」


問いかけに対し返事をしながら浄化作業を終えると、ライゼは普段とは違った表情を見せつつも彼に澄んだクローバーを手渡しつつ返事をしだした。どうやら彼は自らが知らない情報を幾つも保有している様であり、その事実が仮にギラムにとって酷な事であったとしても告げる義務がある様にも思えた。


自身が鳥人エリナスである事を告げた時からその覚悟は出来て居たのだろう、どんな事を聞かれたとしても戸惑い濁す事はしないと決めていたのだろう。


彼なりに考えた結果が今にある事を思わせる表情であったが、その表情は長くは無く無表情に近くも親身な眼差しで彼は言い出した。



「イロニック二等陸尉は准尉の先輩であり、准尉の事を目の上のたんこぶの様に初めは見ていました。俺がココへ所属した時から、その事は少しだけ眼を配っていたので覚えています。」

「俺の事を、妬ましく思ってたわけか……今と変わらないな。……でも『戦友』って表現は、何処から来たんだ?」

「ギラム准尉は覚えていないかもしれませんが、准尉は二等陸尉を助けた事があるんです。現代都市で起こった『地下道爆破テロ事件』の際に。」

「爆破テロ…… ……ぇっ、あの時にか??」


話を聞きながら自らの脳内で回想が起こった時、彼はある光景が目の前に浮かび出した。



それは自らが『准士官』として行動していた際にサインナの報告と共に出撃した時であり、その際に自らにとっても苦い想いを経験するに至った。要救助者を無事に助ける事は出来ても部下を助ける事が出来なかった不甲斐ない自分に嫌気が差す程であり、何のためにこの仕事に就いたのかさえ分からなくなる程に後悔と絶望を抱いたほどだ。過去の決別をしようとばかりに献花を行ったとはいえ、まだまだ払拭しきれない部分が彼にはあった。


しかしそんな眼を曇らせるギラムを視たライゼは、顔を左右に振り彼の考えている事柄が少しだけ違っている事を伝え出した。彼の言う爆破テロ事件とは二年前のあの日から、また少しだけ遡った時系列で起こっていたからだ。


「正確に言うと、あのテロは『二度起こった』と言った方が正しいです。恐らく准尉が覚えているのは、サインナ将と共に任務を行った時の事だと思います。」

「あぁ…… サインナが俺を迎えに来てくれて、それで……部下を引き連れて、現場で部下を三人……失った。………」

「イロニック二等陸尉を助けたのは、それが起こる数十カ月前。その時と似た事件が起こっていて、その時に准尉は二等陸尉を助けました。爆破で落下してきた瓦礫に足を取られた、二等陸尉を。」

「瓦礫で足を……か?」

「その通りです。」


ライゼの言う事件とは彼の苦い思い出とはまた異なる、その時のお話。当時と似たような出撃命令と共に爆破テロが起こった現場へと赴いた彼は、部下達に指示を与えつつ自らも場へ赴き要救助者を救出する行いをしていた。しかしその時と違うのは瓦礫によって部下達との間に壁が出来たのではなく、イロニックがその衝撃に巻き込まれ足を取られてしまった事の違いだ。


瓦礫は大きくちょっとやそっとでは退かせない現状と成った時、彼の周りには部下達は居らず各々で広い地下道を散策していた為、即座に助けられる状況下では無かった。本人も何とかしようとし試行錯誤をしたが脱出には至らず、半ば諦め意識が遠のきだした時、ギラムが彼の事を見つけ助けてくれたのだ。ガスが充満していた事もあり視界がぼやけていたにも関わらず見つけられた事は奇跡に近く、本人もそれに対して感謝の気持ちを抱いていた。


その時から、相手の見解は変わったのだとライゼは言うのだった。


「准尉は何時でも優しくて、任務中に負傷した部下を見捨てる事などは絶対にしません。二等陸尉を助けた時もそうで、印象が良くない相手を准尉は助けた。……恐らくそれを切欠に、イロニック二等陸尉は考えを改めたんだと思います。」

「考えを……?」

「その時から准尉の事は、実績そのものでしか知る事は無くて何も知らなった。同程度の位に付いた時、休憩時や合間を見ては大尉は少しだけ声をかけて来た時もあったんです。その頃から、あの人は戦友の様に准尉を見ていたのかもしれません。例え部隊では気に入らなくても、任務で共になれば頼れる相手だって。」

「………」

「准尉が眼の怪我を負ったのはそれから間もなくの事、現場に居合わせていたサインナ将は無論泣き崩れていました。『私のために助けてくれた准尉に、成す術もなくこのまま死ぬのを見守るしか出来ないのか』と。」

「………」

「マチイ大臣も出来る限りの術を探っていましたが、当時のリヴァナラスの技術では輸血をしても『失明』は免れない程で、頭蓋骨の損傷も大きく完璧な頭部を取り戻す事すら、不可能でした。俺もココへ就いた当時であれば、先ほどのギラム准尉が言った通り……何もしなかったかもしれません。」


そして事件は事件を呼ぶと言ったモノなのか、彼にとって次に苦い思い出と成る事象が起こった。



現代都市治安維持部隊の施設内に潜り込んだスパイの手によって襲撃された当時、彼はリアナスとしての力は持たなかったがサインナの身を庇う様に自らが盾となって一撃を諸に受けてしまったのだ。それによって頭蓋骨は一部を粉砕骨折、幸いにも眼球の形状は保たれていたが完全に視力を失う程に出血に見舞われ、彼は多量の血によって貧血を起こしその場に倒れてしまった。その名残が今の彼の印象を決めている紅い翼の様な痣であり、彼は『救急搬送された先で優秀な技術者の手によって一命をとりとめた』と話を聞かされ、納得していた。


しかし事実はそれとは大きく異なり、その優秀な技術者とは『リヴァナラス』の人間ではない『クーオリアス』の獣人だと言うのだから驚きだ。彼が彼等の様な存在を知らなければ即座に信じる事さえままならない事実ではあったが、今の彼にはその話を冷静に聞くだけの知識も交流もあった。ましてや彼の事を助けたのが『マウルティア司教』と呼ばれていた『ベネディス』ともなれば、また説得力のある話である。


現に自らの素体を用いて『ピニオ』を創ったのだ、信じない方が頑固である。


「俺は人間の事を『被験体』としか見ていなくて、顔に似使わないほどに心優しいギラム准尉に会わなければ……今もきっと、機会を見つけてはマウルティア司教殿の元に被験体を送り続けていたと思います。……でも、今は違います。俺はその時、確かに俺の気持ちだけで行動に移しました。ギラム准尉の事を助ける事が出来るのであれば、准尉にした行いの罪を全て背負うって。」

「罪って……… 血の事か?」

「はい。普通であれば人間の体内に動物の血液を輸血をしても、免疫反応や遺伝子の違いで助ける以前の問題になります。ですが俺達エリナスは、リアナスと似ていてリアナスで無い想いの存在。助ける気持ちと適合性さえあれば、多少のデメリットを除いて生存させる事は可能。ましてやマウルティア司教殿の手にかかれば、どんなに怪我が深くても救えました。」

「そうなのか。……俺達リアナスは、エリナスとは遠くも近い存在なんだな。契約の時に、ちらっと聞いたんだけどさ。エリナスは俺達リアナスを、支える存在なんだって。あれもそうなのか?」

「そう言うエリナスも、今では多くなってきたと思います。マウルティア司教殿も元々そちらの分野に興味はありましたので、今では『ピニオ』と共に送る生活を楽しんでいます。」

「ピニオ、元気か?」

「はい、ギラム准尉と同じで元気っす。」


そして表情が再び戻ったのは、彼にとっても明るい話題となった時だ。望んで会えるような存在ではないピニオとの交流もあるライゼにとってみれば、ギラムにとっても辛い過去の話をするよりも楽しい話題を提供したいのだろう。問われた後に次々と聞かされれた話はとても日常的なモノであり、本当に彼がベネディスの強い想いと共に生まれて来た事を知る良い機会ともなっていた。


単純に研究や知識欲の為に造ったともなれば、それはそれで興味深く注視し一つ一つの情報に齟齬そごが無い様にするものだろう。しかし実際にそれが行われていたのは始まりのハジマリに過ぎず、寧ろ今では『ギラムを創り上げるにはどうしたらいいのか』と共に考える程だと言うのだ。


リアナスを想像したいと言う想いは思いの他根強く、そして更に親身になって考える程。


彼等の抱く想いもまたリアナスと大差ないのだろうと、ギラムは改めてその事を理解するのだった。



「それで、ギラム准尉にはその際のデメリットをお伝えしておこうと思います。助けるために行った事は、幾多のコトワリを渡った手技で……あまり褒められるコトでは無いので。」

「ライゼ、そこまで罪深く受け取らなくても良いぜ。俺はそれを知った今でも、ライゼの事は恨んでないし、殺したいだなんて微塵も思ってないからさ。」

「ありがとうございます、ギラム准尉。デメリット言うのは、簡単に言えば『人間とは違った性質』を得る事です。」

「性質……? それは、悪い事なのか??」

「人によっては、現実全てが覆される事に匹敵します。常人以上の嗅覚を手に入れれば、周囲の臭いが四六時中付きまとい過剰に反応してしまいます。聴覚も同様で、些細な物音でも気になって寝られない人も少なくないとか。視覚や味覚、触覚も同様です。」

「動物の優れた五感を手に入れると、普段気にならなかった事が気になっちまう……って事か。」

「はい。血の相手によっては、場合によって体感への衰えも出ると言った方が良いかもしれません。良くも悪くもです。」

「衰える? どうしてだ?」

「自然界に適合すると言っても、体温変化をしないエリナスも居ますから。恒温動物のリアナスが、平温動物の適合性に成れるのはとても時間が掛かります。」

「あぁ、なるほどな。」


そんなギラムが納得したのも矢先、ライゼは彼にとって大事な事を話そうと話題を切り替えだした。



それは彼の中に交じり混血と成ったギラムにとっても生涯共にする重要な事、彼等の手技によって助けられたリアナスの体調変化だ。掻い摘んで話せば『常人よりも優れたモノを手に入れる可能性が有る』という、普通に聞けば良い事にも感じられる結果に過ぎない。しかし場合によっては良い事も度を越せば悪い事と成り得る為、一部の民達の中で『異常だ』と思われる人間が居るのもゼロではない。


過剰に反応してしまう人は悪気があってしているのではなく、現にそう感じ取ってしまうが故にそうなってしまっているに過ぎない。


悪意を持って行って居ればいずれその事実に誤差が生じバレるモノであり、中には彼の言うデメリットによってそうなってしまった人間も少なくはない。そんな結果が今に至るギラムにとって、どんなモノが自分に起こっているのか。

とても気になる事実である。


「そう言った五感のデメリットもありますが、ギラム准尉はどうやらそれに該当しなかったようです。嗅覚や聴覚は異常値には達せず、視覚と味覚も限度を超える事もありませんでした。『常人よりも優れている』と、程度で捉えられる程度です。」

「………ん? じゃあ、俺にはどんなデメリットがあったって言うんだ?」

「ギラム准尉の場合、狐の中でも珍しい『銀狐アルゲンフクス』と呼ばれる存在の血を使わせてもらいました。他のエリナス達の血液では反発が強く馴染まない反面、適合性が一番高くてデメリットが低いと分かったからです。……そんなギラム准尉のデメリットは、簡単に言うと『体質側』です。」

「体質………」



「ギラム准尉の身体は恒温と言うには少し違い、どちらかと言うと『感度』に鈍い点が目立っています。暑さも寒さも言うほどの反応は無く、感性も少し鈍いと言っても間違いありません。」

「感度……な……… 言われてみると、最近のヘルベゲールでの依頼は左程苦に感じなくなってたな…… 他の奴等だとうだってしばらく動けないくらいだったのに、グリスンよりも慣れちまってる。多少は慣れもあったんだろうけど、元々の感度の鈍りが原因だったのか………」

「その上、ギラム准尉は真憧士まどうしです。狐達特有の『変化(へんげ)』体質も真似てしまったらしく、准尉は人間にもエリナスに近い形にも慣れるようになってしまったんです。………本当に、申し訳ありません。」

「変化体質………?」


その後告げられた事実を聞かされた後、ライゼは仮定を交えながら『変化』が何なのかを説明しだした。



元々は一部の存在達特有の手技として認知されており、人間の言う『化かされた』という表現が最も正しい行いだ。『タヌキ』や『キツネ』を始めとした存在達が最も得意とする行いであり、場合によっては一部の存在達もその手技を手に入れる為に修行する程であり、エリナス達にとってもそれなりに認知度のある行いである。物体から相手に擬態するのはまさにそれであり、ライゼが人の姿に変えられていたのもその手技を研究し独自の魔精薬として使用していた為、鳥人でありながら人間達に認知出来る様にしていたのだ。


しかしそれはあくまで獣人側の話であり、人間側の存在がそれを行うのはとても危険とされていた。元々の存在経緯が異なる人間達は身体に縛られる傾向があり、一度変化してしまえばそれに順応するかの様に身体が馴染んでしまい、場合によっては元に戻らなくなってしまう事もゼロではない。無論変化に対し元の姿に戻る変化をすれば解決出来るであろうと考えるモノではあるが、自然の掟はそう易々とその想いに応えてくれるモノではないのだと彼は話した。

故に不本意で変わってしまったとしても、自らを見失わないで欲しいとライゼは告げるのだった。



そんな自らの将来を左右かもしれない話を聞いたギラムはしばし考え込んだ後、不意にこんなことを言い出した。


「……… 例えばの話になるが、ライゼ。」

「?」

「俺が仮にエリナスの体質を得たら、今の俺には戻れないのか? その危険性って言うのは、やっぱり例に漏れず高いのか?」

「真憧士としての魔法の力も使うと考えられているので、確実に戻れないと言う事はありません。ですが、常人の真憧士達に比べれば創憎主にも成り得る力です。使い過ぎれば、もちろん身体が元に戻らない確率の方が高いと言えます。」

「なるほどな。………」


不意に問われた質問に対しライゼは見解を交えて説明すると、再びギラムは考え込む様に顎元に拳を添えだした。彼をよく見る傾向が高かったライゼはその行いに対しても見覚えがあり、特に思考を巡らせあれやこれやと作戦を立てる際に彼がよくやる仕草である事を認知していた。それはすなわち、彼が『変化体質』に対して真正面から向き合おうとしている事に他ならない。


それを悟ったライゼは不意に驚愕し、慌ててその行いを止めさせようと彼の腕を掴みだした。


「……まさか准尉、その力をコントロールしようって………思ってるんすか?」

「ぇっ、駄目なのか?」

「だ、駄目だって!! それじゃあギラム准尉が、本当に人間じゃなくなっちまう!! イロニック二等陸尉は愚か、リヴァナラスに居る存在達から世間的に否定される事になってしまう!! 俺はそんな末路の中でギラム准尉が生きて行くなんて、絶対に嫌だっ!!! だから!!」



ポンッ


「……えっ?」

「安心しな、そういう意味で言ったわけじゃない。……ってか、ライゼは敬語よりその口調の方が俺は自然体な気がして好きだぜ。」

「ギラム准尉………」

「ライゼが俺に犯した罪だって言うなら、俺がその罪に感じる部分を少しでも変えられたらって思っただけだ。……でも、少し軽率な発言だったみたいだな。ゴメンな。」

「ぁっ、いえ……… ……俺の方こそ、取り乱して……すんません。」

「気にすんなって、お互い様だぜ。」


そんな感情を露わにしたライゼに対しギラムは驚くも、即座に彼の頭の上に手を添え軽く撫でだした。頭髪とはまた違った羽毛の柔らかさの感触を感じながら彼は優しくそう言うと、ライゼは掴んだ腕へ込めた力を弱め出し、徐々に落ち着いた様子で言葉を漏らし詫びだした。彼の言葉を聞いたギラムは変わらない笑顔でそう言いつつ再度頭を撫でた後、添えていた手を相手の肩に載せ、静かに頷きながらこう言い出した。


「分かった。いろいろ話してくれてありがとな、ライゼ。今回の件も含めて、俺の事を助けてくれて本当にありがとう。」

「い、いえ……… ……俺は別に、そんな……ギラム准尉に褒められる様な事、して……ねぇし………」

「十分してるぜ。グリスンが体調悪い中、お前はこんな状況下で俺の為に手を貸してくれた。イロニックがあんなに言う程に俺の事を気にかけていた事も解って、これで少しは気になってた事の大半が解決出来そうだ。」

「そう……すか。なら、良かったっす。」

「おう。」


その後二人で言葉を交わし合い再度笑顔を見せあうと、ライゼも落ち着いた様子で笑顔を見せだした。互いに知らない事を知れて良い経験になったのか、その表情は何時もよりも清々しく治安維持部隊の施設内に最も似合う感情と表情と言えよう。気付けば領域展開された空間は変化を見せており、日の位置が変わった現実の空がそこにはあった。


目の前に立つライゼの羽毛と相互の無い、とても綺麗な蒼い空であった。


今回の更新で『狩猟より退けし蒼き護人』の更新が終了と成りました。次回の更新は年明け後の『1月19日』頃を予定しています、どうぞお楽しみにっ

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