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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
第六話・狩猟より退けし蒼き護人(しゅりょうよりしりぞけし あおきもりびと)
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21 連携攻撃(アサルト)

「さぁさぁさあ!!! 再教育とさせて頂きましょうかねえぇ!! ケモノ共!!」

「へッ! その程度の雄叫びなんぞ、返り討ちで吠え面かかせてやるよ!!」


敵側の存在によって展開された隔離領域内にて始まった、新たな真憧士達による闘争。雄叫びを上げながら火蓋を切ったイロニックに対し、ライゼは負けじと声を張りながら手にした長銃を手に走り出した。そして相手との距離を保ちながら相手に向かって発砲を開始し、対象を仕留める様に行動を取りだした。


しかしその銃弾に沿ってイロニックは鞭を左右に振り払って弾丸を弾き飛ばし、隙を見て相手に対し衝撃波を放ち出した。カマイタチの如くやって来る風の波を視たライゼは手にした銃器を捨てた後に盾を構えだし、ギラムとの間に入り攻撃から彼を護るのだった。

盾に弾かれた事による鈍い金属音が軽く響く中、ギラムは前に立つ彼に対して声をかけた。


「ライゼ……!」

「平気っすよ、ギラム准尉。俺の武器はリミダム達と違って『攻め』に特化したモノじゃ無いっすけど、その分大切な相手を『護る』事に優れた盾っす! ギラム准尉に汚れなんて、不要っすから!! 遠慮なく攻めて下さい!!」

「あぁ……ああ!!」


そんな部下からの声援を受けた彼は意を決した様子で眼光を鋭くすると、再び手に拳銃を創りだした。ライゼとは違い銀光する拳銃を手に二人は軽く合図を送り合うと、その場を駆け出しギラムはイロニックに対し攻撃を開始した。変わって彼の動きの邪魔をしない様にライゼは再び手に別の長銃を手にすると、再度攻撃を開始しだし双方からの一斉射撃を行うのだった。



ギラムの魔法はライゼと違って弾丸装填の手間がいらない為、些細な隙であれどいつでも攻撃できるのが特徴だ。本来の真憧士としての素質にあやかった生成系魔法は常識を覆し、かつ使用者の理想に一番近い形で発動してくれるのだ。


反面ライゼの使用する武器はグリスンやリミダム達とは違い『魔法を発動する』という概念には捕らわれず、どちらかと言えばギラムと似た魔法を使用していた。しかし彼は鷹鳥人エリナスであり真憧士とは魔法の概念が異なる為、疑似的に物体を創り出し思想を閉じ込めた弾丸を撃ち放っているだけに過ぎない。その為使い捨ての銃機を創り出しているに過ぎず、彼にとって『攻撃手段となる拳銃まほう』を生み出す事こそが、彼の魔法なのであった。



今までにないタイプのエリナスと共闘する事となったギラムであったが、何故かその戦いに対する苦戦するモノは無かった。相手は昔から自身を慕ってくれていた大切な部下の一人であり、サインナよりも後ではあるが自身の事を良く理解してくれている存在。ギラムがどう動きどのような手段を用いて相手を攻撃するのかは解っているかのように、敵の射線上には赴くが彼の射線上にだけは赴かない独特な動きをしていた。盾を構えて攻撃を防いだかと思いきや、空いた右手に銃器を創り出しギラムと共に連携攻撃を仕掛ける。



とてもその時が初めてと思える、真憧士リアナス鷹鳥人エリナスとは思えない動きをしていたのだ。



初めから素質のある存在だと分かっていたイロニックにとってみれば、これ以上に厄介な相手は居ないと認知せざる得ない程に連携が取れていたのだった。


「分かってはいたつもりだったが、実際にライゼとコンビを組んでココまで戦いやすいなんて……! 思ってもみなかったぜ。」

「ギラム准尉の行動に関しては、人伝えで聞いていた部分も有れば俺自身の眼で見ていた部分もありますからね。そんじょそこらのエリナス達には、遅れを取らないっすよ!!」

「違いねえな! 心強い限りだ!!」


互いにその感覚を感じていた様子で手を動かしながら二人はそう言い合うと、状況に似合わない笑顔を双方で見せだした。苦戦の顔色を見せず寧ろ好調な笑みを見せるギラムに対し、生き生きとした表情の中で瞳を輝かせながら笑うライゼ。何時しか無くなってしまっていた治安維持部隊員同士の任務を遂行するかのように、共に一つの目的のために行動していた。


しかしその行いに対して妬ましく思う存在が居るのも、また道理というモノだ。


「クックックッ…… 元々契約していたケモノを余所にして、即席のコンビで良く粘りますねえ!!」

「ギラム准尉の素質を認めて居るんだったら、早めに降参した方が身の為っすよ! 本領発揮した本当の真憧士の力じゃ、お前等なんかに勝ち目なんて無い!!」

「それは『ホンモノだった場合』に通用する言葉なんです……ねえ!!!」



バッ!!


「『無素化離ムスカリ』!!」


ライゼからの発言に対しイロニックはそう叫びその場で構えると、手にした武器を先程とは違った振り方で魔法を唱える様に言葉を発し、ギラムに向かって何かを撃ち出した。それを見かねたライゼは盾を両手で構え彼等の射線上に入りその魔法を防ごうと試みるが、その行いは空しく後方に居たギラムが咄嗟の音と共に声を上げる事態となった。



バシュンッ!


「んなっ! 銃が…!?」

『! 俺の盾をすり抜けた……!?』

「クックックッ!!! さあ武器が無ければこちらへの術はあるまい!!」

「チッ!!」


彼等に起こった事態、それはギラムが先程まで手にしていた拳銃が突如として消失すると言う現象だった。手放した際とはまた違う咄嗟の現象に驚き舌打ちをするギラムの声を聴き、ライゼはやって来るであろう攻撃に対し彼が避けられるかどうかの状況を視界に捉えられる限りで瞬時に把握しだした。

しかし彼等が今居る場所は遮蔽物の無い人工芝の上、無防備な彼に対してライゼが取った行動はとてもシンプルなモノだった。


「このままじゃいけない……! ギラム准尉!!」



ブンッ!!

パシッ!!


「!?」

「それを使って下さい!!」

「サンキュー! ライゼ!!」


不意に言い出した相手の言葉を耳にし、ギラムは声のした方角と共に突如やって来た物体を右手で受け止めた。彼の手元にやって来たのは標準ながらも比較的大きな拳銃であり、先程までライゼが使用していた魔法で創り出された銃の様であった。武器を手にした彼はそのまま攻撃の手を休める事無く攻撃を開始し、その隙にとライゼはその場で跳躍しギラムの左側へ降り立つ様に移動しながら空中で両手を交差させ、指パッチンをしながら開き出した。


「『ファルフラーン・ザンショコラティエ』!!」


その後彼の放った魔法に応えるかのように彼の周囲の空気が変化しだし、六丁もの長銃がギラムの足元に落とされた。銃口から地面に突き刺さった状態で現れた銃を眼にしたギラムは、何時しか手にした拳銃から弾丸が出ないのを確認した後に銃を捨て、手頃な長銃を手にし再び攻撃を再開しだした。

ひとまずの攻撃手段を確保したライゼはそのまま地面に降り立ち、再びギラムの前に赴く様に移動しながらすれ違い、突き刺さった長銃を一つ手にし盾を構えたまま武器の背後に銃を隠した。



そして相手の攻撃の隙を突いてか、ライゼは相手を後方に追いやる様に威嚇射撃を開始し、距離を開ける様にイロニックを追いだした。地面に対し次々と撃ち込まれる弾丸を眼にしたイロニックはその策略に乗るかのように軽くスピンしながら後方へと飛び退き、一定距離戻った後に攻撃が止んだ事を確認した。

その頃には既にライゼが盾を構えて万全の体制で護りを固めており、ギラムは左手で銃器を手にしたまま小脇に抱える様に銃を構えていた。


「ギラム准尉、魔法で先程までの拳銃は創れますか?」

「……悪いライゼ、何でか分からねえが拳銃を創り出せねえ。……さっきのイロニックの言葉で、何かが働いたのか……?」

「消失……いや、違う。ギラム准尉のテノルメへ対する阻害言語か………? 手投弾もダメですか?」

「………駄目だ、それも手元に出ねえな。」


視線をそのままに互いに確認し合う様に話し合うと、ライゼは憶測ではあるが相手が何をしたのかを推測しだした。先程まで順当に戦っていたギラムの魔法の調子がいきなり悪くなったとは考え辛いうえ、その際に放たれたイロニックの言葉にも違和感があった。あたかも『花の名前』を叫んだだけに聞こえた相手の言葉は不思議と魔力が乗せられており、先程まで武器で放たれていた一撃とは違い盾で防ぐ事も出来なかった。



それはつまり、自らの武器に対してでは無く決まった対象に対して影響を与える魔法。



そこから導き出された仮説を頼りに、彼は体制をそのままにギラムに対してこう言い出した。


「……恐らく、さっきのはギラム准尉の『発動魔法テノルメ』を阻害する類の魔法です。イロニック二等陸佐が『教皇ヒエロファント』と呼ばれていると言う事は、彼自身が『法』となる行いを魔法で創れると言う事かもしれません。」

「となると、魔法は使えねえってわけか…… 面白え!!」



シャキンッ!


「ん? ……ぇっ、ギラム准尉!?」

「ライゼ、援護してくれ!!」

「えぇっ!? う、うっす!!」


そんな彼の言葉を聞いたや否や、ギラムは不意に構えていた長銃を捨てあろう事か背後に忍ばせていた短刀を持ち出し、果敢にも前線に向かって行ったのだ。去り際に叫んだ彼の言葉を聞いたライゼは盾を背負い直すと、残された長銃の一つを手にしギラムの背後から左側に移動する様に跳び込んだ。あたかも背面飛びをするかの様に跳び出した彼はそのまま盾に周囲の空気を集めだすと、ゆっくりと降下する様に滑りながら移動し銃を撃ちだした。


「横っ飛びビィーーーム!!!」



バババババババババンッ!!


「チッ!!」


若くも勇ましい彼の言葉と共にやって来る弾丸の嵐を見かねたイロニックは舌打ちをしながら鞭でその攻撃を弾き飛ばし、続けざまにやって来たギラムの攻撃を避けた。対象を裂く様に逆手持ちした短刀と共にギラムは果敢にもゼロ距離による戦闘に持ち込むと、そのまま攻撃を繰り出し合間に蹴りを入れながら相手のガードを崩す行いを取り出した。短刀による攻撃は鞭で防ぎ蹴りを腕でガードする様は完全に部隊員同士の鍛錬そのものであり、彼等は同じ部隊の隊員同士でありながら敵同士である事を語らせる風景と化していた。


距離は短くも確実な攻撃を入れて来るギラムに対してイロニックは攻撃を見切った、まさにその瞬間だった。


「小賢しい……!! 『近戦過キンセンカ』!!」



ガキンッ!!


「んなっ……!!」


剣筋を見切ったイロニックはそのまま魔法を叫ぶように再び花の名を叫んだ瞬間、持っていた鞭で勢いよくギラムの手にした短刀を弾き飛ばしたのだ。勢いよく弾き飛ばされた武器はそのまま宙を舞い、空間魔法の外へと向かってしまい周囲が歪んだと同時に姿を消してしまった。

魔法とは違う形ある武器を飛ばされてしまった彼は驚くのも束の間、イロニックは怪しい笑みを浮かべたまま相手を蹴る体制に入った。


「お返しだぁああ!!!」

「クッ!!」



ガンッ!!


「ギラム准尉!!」


勢いよく突き出された右足の蹴りはそのままギラムに到達する前、咄嗟にギラムは両手で攻撃を防ぎその力の余波によって後方に滑る勢いで地面を滑走しだした。在らぬ運動エネルギーによって人工芝が舞う中、地面を滑走するかの如く移動したギラムを視たライゼが咄嗟に叫び体制を立て直すと、手にした長銃の残り弾丸全てを相手に向かって発射した。

しかしその攻撃も再び鞭によって弾かれてしまったのを見ると、彼は隙を突いて武器を捨てギラムの元へと駆けこんだ。


目立った外傷は無く重い一撃が入った様子は無かったものの、両腕を振り痛みを振り払う様に彼はこう言った。


「平気だ……!! ……っつっても、やっぱ腕は痛むな………!」

「どんだけ強固なんすか……! 無茶は駄目っすよ!?」

「わーってるって!」


心配しながらも軽く説教し再び自身が護る体制に入ったライゼであったが、再びどうやって相手を攻めるかどうかを考えだした。


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