32 獣人対人間(エリナスVSリアナス)
ギラム達を敵の本陣へと向かわせるべく、集団の足止めを行う事となったイオル達とは違う場で戦いっていたコンストラクトとリズルト。敵対した相手を倒すべく行動を取り行い、結果を集団内の皆が勝利を望んでいた時間軸。冷静沈着かつ自らの力を信じる鮫魚人と急遽加勢に参上した熱血漢溢れる馬獣人は、集団内で『ストリングス』と『ハング』と呼ばれる相手と敵対していた。
「さて、有力候補の傍で行動する方々の力はどのような物なのか、とても楽しみで仕方がありませんね。」
「……!」
対立した相手はそれぞれが得意とする『剣』と『リボン』を手にしたまま、揃った足並みで二人に対し攻撃を仕掛けだした。お互いに隙の無い攻撃を仕掛ける様に剣の軌道とリボンの追撃が彼等に襲い掛かるも、二人はそれぞれの攻撃を見切りながら攻撃を退け、両者の肩がぶつからない様配慮しながら動いていた。二人は相手に比べて体格は大きく背丈もある為、一つ一つの動きがどうしても大きくなりがちの為、敵側はそれを利用するべく動きを組み合わせてきた様にも見て取れた。案の定二人は気を配らなければ腕や尾が当たりかねない動きをしている為、結構な身のこなしをしていると言えよう。
「コイツは、女性陣だからって油断すると危なそうだなー あのリボンで捕らわれたら、俺等やべえんじゃね?」
「言うまでも無い事を語るな。雄だろうと雌だろうと、勝たなければ敗者と成るだけだ。俺等は選択する事は望まない。」
「ま、そうなるだろうな。俺からしたら、もちっと楽しめそうな女の方が好みだけどさ。」
「貴様の好みなんぞ、どうでもいい。」
「俺嫌われるぅー」
しかし二人は言うほど苦戦はしていないのか、防御に集中しつつも両者の耳に届くくらいの声量で話す事が出来て居た。即席の組み合わせで共闘する事となった二人はお互いにどんな力を有しているかは把握しきれてはおらず、そんな暇を相手が与えて来るはずも無い為、完全にぶっつけ本番になっていた。現に二人が把握しているのは『お互いの主な性格』と『使用している武器による手法』だけであり、魔法に関しては全て予測の範囲内でしかない。現に予測通りだったとしても奇抜な動きをされればそれだけで驚く事もある為、場合によっては動きを阻害しかねないのである。
だが二人はそれでも攻撃するチャンスを掴むべく回避し続けていると、先に動きを見せたのはリズルトを狙っていたストリングスであった。突如剣を引く様に右腕を大きく背後へと引き、相手に突き刺す様に上空から強襲して来た。
「ハァアーーッ!!」
ガスンッ!!
「っとぉおっ! おらよっ!!」
「クッ!」
だがそんな攻撃を受けまいと彼は一歩引きながらあしらうと、そのまま引いた左足を軸に回転し持っていた鈍器で殴り飛ばす様に右から攻撃をしかけた。攻撃が外れると同時にやって来たカウンターを見かねた相手は咄嗟に両腕で攻撃を防ごうとした瞬間、二人の元に空間を掻い潜り伸びて来る攻撃を目視した。
バシュッ!
「! ハング!」
「……邪魔、退いて。」
まるで空間に縫い留めるかのように伸びてきたリボンはリズルトの持つ武器の柄に絡みつき、そのまま停止する様に動きが止まってしまったのだ。攻撃が命中する瞬間に止まった事によって相手は無傷のままその場を退避すると、その瞬間を狙って相手は体格をもろともしない様子でリズルトを釣り上げる様に空中に飛ばしてしまった。それには驚いたリズルトは空中に飛ばされながらも体制を整える様に一回転すると、直後に迫って来る相手の攻撃を見て両手をその場で合掌し即座に反撃する体制に入った。
「反撃してやるぜぇええーー!! 『熱烈なヒルツ』!!」
魔法を放つ体制を取った彼はそのまま両手を広げ掌に火炎弾を生成すると、相手に投げつける勢いで攻撃を繰り出し始めた。硬式ボールの投球の如く飛んで行く炎は軽い放物線を描きながら相手に向かって行くと、二人は退避する様にその場を跳び退き後方へと下がりだした。無論その動きを止める事無くリズルトは永遠と繰り出す勢いで炎をその場で生成し続け、距離を掌握する様に左右から様々な工夫をしながら攻撃を繰り返し行うのだった。
「おらおらおらぁあ!! 避けてばかりじゃ勝ち目はねえぞぉおおーー!!」
「………」
「力任せに近い動きの様では、私達には勝てませんよ。」
幾度となくやって来る攻撃を冷静に回避し続ける相手は小言を漏らす様にそう呟くと、しばらくして手にした剣で炎を割く様に振り出した。すると火炎弾はその場で裂ける様にして消失し、離れた地面に衝突すると同時に激しい熱気を周囲に振り撒くのであった。跳び取る火の粉に関しては相棒がリボンで風を操り器用に払っている所を見ると、こちらもすぐさま動きに適用してきた様にも伺えた。
相手の動きを見てリズルトが一度攻撃を止めて相手が体制を変えようとした瞬間、そこで変化が起こった。
「さて、今度はこちらから」
「なら、その牽制を利用したらどうなる。」
「! 何時の間にっ……!!」
一度攻撃が止み油断した隙をついてか、敵の一人の傍にコンストラクトが既に待ち構え攻撃を開始しようと両手を空中に上げていたのだ。彼の掌周辺には既に周囲の空気が微粒子以上の結晶と化しており、退避する隙を与えずに彼はそのまま相手に向けて攻撃を放った。
「『フィリー・雹』!!」
彼の手から放たれたのは幾多もの大きな氷の飛礫であり、攻撃を至近距離で受けた相手は後方に追いやられながらも飛礫が命中した箇所から冷えと鈍痛を感じていた。飛礫は命中すると同時にその場で砕けて消滅してしまい、気付けば足元に転がり冷気と共に地面を凍らせだしているのが分かった。二次被害が及ぶ前にと攻撃を受け続ける相手を救うべく、ハングはリボンで味方を捕え救出する様に自らの元へと引き寄せるのだった。
そしてリボンの拘束を解きながら地面を凍らせる氷を割るべく、器用に杖を振り布地で氷を次々と破壊するのだった。
「ぉー、さっすがあ! やるじゃん、鮫さんよ。」
「『コンストラクト』だ。このくらいは出来て当然だろ。」
「細かい事は気にすんなって。何ならもう一方の名前を教えてくれたら、そっちで呼ぶぞー」
「五月蠅い黙れ、場を弁えろ。」
「ひっでー 言われよう。」
二人は再び互いの距離を縮めながら合流し、憎まれ口を叩きながらもお互いの連携を図るべく相手を視界から外さない様に気を配っていた。やり取りが楽しい様子のリズルトに引き換え、コンストラクトは変わらない様子で返事を返しつつも解りやすい今回の相棒に軽く呆れる様子で居るのだった。
そんな二人の行う戦闘スタイルはエリナスである『グリスン』と同じく、幾多と存在する魔法属性の内二種類を使ったモノとなっていた。サインナと契約を交わした『コンストラクト』は『氷』と『水』を扱い、そして臨時で参戦した『リズルト』は『炎』と『地』を扱っていた。応戦する前から既に『そりが合わない』と察していたコンストラクトの言い分は正しく、完全に対立する魔法を二人は使っていたのだ。しかしそんな二人も幾多と存在する獣人達の中ではそれなりの力を有する方に入る為、確かに相手側も力を入れて捕獲に身を乗り出したのは解らなくもない。現にメアンとイオルと対立した修道員二人は敗北しており、勝敗を知らない二人ですら中々に攻め辛い展開に持ち込まれている事は理解しているのだ。連携で言えば相手の方が上だが、それに勝る物量を彼等は有していると言っても過言ではない。
今回の二人は基本の攻撃をリズルトが行い、それに乗じてコンストラクトが臨機応変に動くと言う連携に成っていた。グリスンやヒストリーの様に『補助』を得意とする相手であれば即座に連携が取り易いのに対し、双方はそのどちらもそれに対する力は有していないのだ。どちらも『攻め』に対する力が強く、獣人に相応しい肉体を持ち合わせ武器による重い一撃を叩き込むのがよっぽど得意と言えよう。そのためそれぞれが決めた相手に対して攻撃を仕掛ければ簡単なのかもしれないが、相手はそれを理解しているのか一向に離れる気配を見せないのであった。
どちらかに特化した力と言うのは、時には動きに制約がかかる時もある様だ。
「……やはり、こちらに戦力を回したのは正解でした。別れた二組のエリナス達よりも、相手にしてみてその力が歴然としている事を知らしめられます。」
「相手、強い。」
「その通り、だからこそ私達がこちらに送られたのも納得が行きます。ハーミットはそれを既に予測していたのでしょう。」
攻撃を受けるもまだまだ戦える様子で、相手は双方の身を気遣いながら言葉を交わし続けていた。こちらは相手に比べて生身の人間ではあるが、それなりに戦闘経験を積んで来たためか動きに関しては他の二人に比べて悪くは無かった。ましてや連携が組めている時点で強敵に成り得る相手の為、コンストラクト達が簡単に倒せていないのも頷けるだろう。しかしそれでも、何処か攻め手に欠けていると彼等は思っている所がある様だった。
「しっかしまぁ、相手が離れてくれないんじゃ互いにタイマン張って撃破する事も出来やしねえ。アイツ等基本的に『セット』で動くっぽいしな。」
「連携を取って行動する事を基軸とするなら、俺等『エリナス』と『リアナス』のコンビも頷ける。一人ならともかく、二人はやはり攻略のしがいがある。」
「ぉっ、意外とこういう戦いには燃えるタイプか? 眼光がさっきよりも鋭いな。」
「それはお互い様だろ。お前も自らの力に負けないくらいの『荒々しさ』を好んでいる様にも、見えるがな。」
「ま、一応そっち側の存在とも言われた時期があったからな。やっぱお前、ふつーに強いな。」
「世辞を言われる筋合いは無いが。その言葉、そのまま返すぞ。」
「でもどうするよ。これじゃ、マジでキリがねえよ?」
「………」
半ば攻略するにも難しい相手である事を匂わせる様に、リズルトはボヤく様に言葉を漏らした。その言葉を聞いたコンストラクトも軽く頷く様に静かに首を動かした後、どうやって二人を引き離して得意のテリトリーに持ち込むかを考えだした。
単純に二人を離すだけならば、恐らく片方が突っ込み相手をさらって距離を離してしまうと言う手も無くはない。だがそれは場合によっては『ニ対一』に成る場合もゼロではなく、仮に相手が味方の元に即座に戻れる魔法を使ってしまえば逆にこちら側が不利になるという事は解っていたのだ。無論逆の可能性もゼロではないが、少なくともコンストラクト達は『共闘』はしていてもコンビを組んで戦う方がかえって両者の足を引っ張る事にも繋がりかねない。
中々に突破口を切り開けない状況である事を改めて理解すると、コンストラクトは武器を持ちながら少し体制を戻し、軽く斧を振り回す様に右手でクルクルと回転させながら考えだした。
『あの時も、俺とお嬢ですら苦戦を強いられた相手に対してグリスンは知恵と共に突破口を開いた。それだけの発想をする事が『ギラム』には出来て、何故俺には出来ない……? 俺が奴に負けているという事なのか……?』
その場には居ない一度キリとも言えるべき共闘をしたグリスンの時を思い出しながら、彼は目の前から迫って来る相手の攻撃に応戦しだした。
攻撃範囲の広いリボンによる攻撃に対して彼がその場で魔法を発動させ水で弾き返すと、その隙をついてか右から剣を手にした敵が果敢にも特攻を仕掛けてきた。無論相手の攻撃は簡単には入らない様にするべくリズルトもまた武器で応戦すると、相手は一度引きながらも即座に体制を整え、再び二人を倒すべく連携攻撃を仕掛けてきた。何度も何度も繰り返されるその攻撃は法則性があるが共通点は薄く、先に攻める側が変わる時もあれば一方で別の相手を狙う動きに変わる時もある為、お互いに油断をすればその時点で劣勢に持ち込まれる可能性が大いに高い戦いを続けていた。
両者共に段々と集中力を削られて行く程の戦いを行いながら、コンストラクトは地面を凍らせながら長い距離を滑りだし再び考えていた時だった。
『……何かがあるはずだ。奴等に出来る事と、それと対になる弱点が……… ……『対になる』……? そうだ……!!』
「リズルト! お前周囲の熱量を変えられるか!?」
「えっ! 熱量!?」
「熱気で相手が昏倒するくらい、周囲の環境を変えろって意味だ! 出来るか!?」
「そう言う意味か……!! おうよっ! 俺の得意分野だ!!」
「なら、やって見せろ!!」
突如として思いついた行動を実行に移すべく、彼はリズルトに命令しその場に大きな力を使う様指示しだしたのだ。相手の性格からして即座にやってくれる事が分っていたのもまた、その指示出しからの作戦実行に大きく結びついていたと言えよう。その場で左右の足を使って地面に数回勢いよく踏み込むと、リズルトは気合を入れながらその場に対して魔法を展開するのだった。
「『激情なヒルツ』!!」
ゴォオオーーー……!!
「ッ!! 暑ッ……!!」
「ストリングス!! コレ、危険!!」
「分かってます……! でも、この状況じゃ退避可能距離には限界が……!!」
突如としてやって来た高音の熱風に対して、二人は軽く怯みながらも熱で肌が軽く焼けだす感覚に陥り出していた。風速は大したことが無い為踏ん張れば凌げる程であったが、高い熱量を含んだ気候変化には対応しきれない様子で退避に移ろうともしていた。しかし風が既に周囲の熱を覆いつくしてしまったが故に逃げ道が無く、領域を隔離された今では逃げ続けるのにも限界があるとストリングスは思っていた。
故に、逃げられないと確信していたようだった。
「その限界を超える意味って言うのは、お前等には存在するのか。」
「!」
熱に怯んだ隙を付いて相手に接近したコンストラクトは斧の刃を相手の首元にあてがいながら、相手に対して質問する様に言葉を口ずさんだ。突如としてやって来た冷気を帯びた斧に対して驚く相手を逃がすまいと、彼は相手の左側で斧を構えながら尻尾を動かし相手の後方で揺らしながら眼光を光らせていた。
「お前等言ったな、俺達を捕え『自らの糧にする』って。その糧はすなわち『現状維持』と言う意味か。」
「……ッ! 貴方達に何が分るって言うんですか……!! 私達にこれだけの力を与えておきながら、その現状を維持する事すら出来ない今を何故創り出したんですか!!」
「それは俺の知る事じゃないが、少なくとも『出来る事』と『出来た事』って言うのはその過程にあからさまな違いがあると、俺は思うがな。」
危機感を覚えながらも口論する事を止めない相手に対して彼はそう告げると、相手は軽く唇を噛みながら悔しそうに表情を歪ませだした。相手側にとってみれば劣勢になった今を打開する術が如何やらない様子であり、ましてや戦いを続けて彼等に勝てる見込みが今では薄い事も理解している様にも思えた。戦い続けて来たからこその『状況』の変化を察する能力は極めて重要であり、逃げられない今の場ではその選択肢が取れないからこそ、どうする事も出来ない様だった。
「お前等にはお嬢に勝る力が無い、だからこそココでその発言しか出来ない。故に、ココでお前等は終わりを迎えるだけだ。」
「言わせない……!!」
「おぉーっと!!」
ガシッ!
「ッ!!」
「嬢ちゃん、言葉を遮るって言うのは良くねえよ? それは再凛曰く『怒られる行為』だ。」
危険度の高い状況を察した相手側はその動きを阻害するべく動くも、その行動はコンストラクトよりも力量の高いリズルトによって即座に阻害されてしまうのだった。分厚い腕と大きな手に掴まれた相手は抵抗空しく捕まってしまい、振りほどこうにもビクともしない相手に対してただただ身体を動かし抵抗するしか出来なかった。
「本当に、お前等はそれしか出来ないと思っているのか。この状況下を放置すれば終わりに成ると、そう考えてそれで終わりにしちまうのか。どうなんだ……!! 言ってみろ!!」
「クッ!! 鮫と馬風情で……!! なめないで下さい!!」
そう言いながら彼女は剣を振りかざして斧の刃を弾くと、その場で全身を使って回りだす様に回転し始めた。自らが駒となる勢いで回転すると同時に周囲の熱気はどんどん風に吸われ出し、そのまま上空に導かれるように温度が徐々に下がっていく感覚を彼等は感じ出した。無論その動きを見たもう一人の敵もリズルトの腕から逃げる様に指を噛み、相手が離した隙に彼女の元へと走り出した。徐々に変わっていく状況下を見た二人は肩を竦めながらも現状を変えようとする動きを見て、その光景を静かに見守りだすのだった。
「私達は私達が行うべき事……! 果たさなければならない野望があるんです!! こんなところで、終わって何て居られません!!」
「戦い、勝つ……! 貴方達、捕える……だけ!!」
「それがどんな代償と成ったとしても、私達の望む未来を構築するための礎に成るのなら……!! 貴方達のリアナスを殺したって、泣かせたって……!!! 後悔しません!!」
気付けば顔を覆っていたフードが風で吹き飛ばされ表情が露わになるも、二人は涙目で相手を睨みながら双方が持つ武器を持ち直しその場を勢いよく蹴り出していた。ただただその運命から逃れられないでいた自分達の現状を当てられた悔しさと、その運命に対して勝利が薄くなってしまった自分達の行いの不甲斐なさ。後悔と共に近くに居る味方の心強さを胸に飛び込む姿は、とても勇敢であり運命から逃げないリアナスに相応しい姿であった。
「うわぁああああーーー!!」
「たぁああああーーーー!!」
「馬鹿の一つ覚えって奴だな。」
「お前がそれを言うのは、あからさまに失礼だろうけどな。 ……だが、それでいい。」
そんな二人の姿を見た彼等はその姿に対してそう呟くと、二人は口元に軽い笑みを浮かべながら、次の瞬間にはその場から跳び出していた。そして相手の動く先を見据える様に眼差しを正面に向けながら相手の横を掻い潜り、完全に距離を掌握し自らのテリトリーに収めてしまうのだった。
「ぁっ!!」
「しまっ……!!」
「俺等エリナスは、そう言う奴等の方が戦うに相応しいって思ってる。」
「それだけの考えを持ち直し自らの糧に出来る力に変えられた事、それは何時に成ったって誇れる事だ。忘れなければ、絶対に未来に歩めるだろうよ。」
「「終わりだ。」」
二人がそう呟いた瞬間、敵はそれぞれ腹部と背後からやって来る一撃に対し強烈な衝撃を痛感する事となった。固く握られた拳と綺麗に揃えられた手刀から繰り出される一撃はとても重く、今の二人には耐えかねない一撃となってしまうのだった。
「!! ……ハン……グ……」
「ストリン……グス……」
バタッ! バタッ!
そして二人はその一撃に対してどうする事も出来ずに攻撃を受け、その場に崩れ倒れてしまうのだった。綺麗に倒れるも両者の掌が重なり合うその現状は何処か美しくも、今まで行ってきた戦いに対し負けてしまった悔しさが何処か感じられる光景であった。
「……ぁーぁ、女の子に対して手ー出して良かったのか? 折角勢いを取り戻したって言うのにさ。」
「その表現には些か手違いがあるが、これで良い。奴等はココで死ぬべきじゃないし、死なせるわけにも行かない。俺達は『エリナス』であって『人間』じゃない。創憎主でない相手を殺す事なんて、許されるわけないだろ。」
「まっ、その通りだな。どっちにせよ、俺等は『殺人を犯す』為にこの力を得たわけじゃあないからな。」
「そういう事だ。行くぞ、他の奴等と合流が先だ。」
「あいよ、了解っ」
こうしてその場で戦いを行う事となった彼等の戦闘が無事に終了すると、二人は何時しか開けていた闇の先に出来る道に向かうべく歩を進め出すのだった。




