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鏡映した現実の風~リアル・ワインド~  作者: 四神夏菊
序章・初花咲いた戦火の叙景(ういばなさいた せんかのじょけい)
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01 在りし時の准士官(ありしときの じゅんしかん)

本編前の序章編です。

本編の3年前の出来事です、どうぞお楽しみください。

このお話は、とある世界に存在する巨大な都市【リーヴァリィ】を護る『治安維持部隊』のお話。


文化と技術が発展した近未来都市であり、人々は自らが持つ『職業』の元、毎日を過ごし行動していた。そんな都市を護る部隊に所属する1人の青年が、部隊に所属していた話であり


その後に広がる大きな物語へと続く、序章である…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チュンチュンチュン…



「一同、敬礼ーーっ!」

青く澄み渡った晴天の元、空にまで聞こえてくる力強い掛け声。朝を迎え活動しだした小鳥達のさえずりをもかき消す声が、周囲に響き渡っていた。


明朝の現代都市【リーヴァリィ】から少し離れた位置にある『治安維持部隊(ちあんいじぶたい)』の訓練施設。

そこは治安維持部隊の1つに属する陸軍部隊、通称『サンテンブルム』の管理する国家の聖域。雄々しくも逞しい声が響き渡る中、隊の部下達は身体を伸ばし、心の乱れさえも見せないしっかりとした態度を取っていた。


淡い翠色の迷彩色で包まれた軍服に身を包み、明方の眠気さえも感じさせない隊の一員達を管理しているのが、中隊長でもある准士官だ。配属された中隊1つ1つにリーダーが付き、彼等を突発的に起こるやもしれない事件に備えるべく、身体を鍛えている。掛け声と点呼を取った後、今日もまた練習メニューへと移行され隊員達は汗を流し行動していた。部隊員達の身体を効率よく動かせるよう、なおかつ体力の向上を目的としたオリジナルの体操は、新人達を軽く怯ませるほどのハードな内容だ。

ましてや隊長が見る中行わなくてはいけないのだからか、緊張のあまり動きが遅れる者も少なくない。

「動きが遅れてるぞー! しっかりやれー!」

「おーっすっ!!」

そんな隊員の動きもしっかり見ながら指示を出しているのが、隊員達とは違った井出達をしている若い青年。

印象的な金髪を後ろに追いやりつつも整えられた髪は印象的であり、額には陸軍部隊の紋章の入ったゴーグルを付け、濃淡のある紅色のコートを身に纏っている。年は他の部下達と見比べても大差がないほどに顔付は凛々しく、それでいて雰囲気で圧倒させるほどの強面な青年。



彼の名前は『ギラム・ギクワ』

陸軍部隊のある中隊を纏めている准士官だ。早くから部隊に属し最年少に等しい年齢で経験をかさね、今の立ち位置にまで上り詰めた実力者。しかし彼は貴族ではないため『士官』とは呼ばれておらず、基本的に『准尉』と呼ばれ隊に所属された新人達から恐れられるほどの威圧感を飛ばしている。

が、それはあくまで見た目だけであり、中身は穏やかな性格をしていた。

「よし、次はランニングだ。 先に左側の列から、順にスタートしろっ!」

「おーっすっ!」

威勢よく掛け声は出すものの、少々の疲れを見せる隊員達を軽い配慮で休ませているほどだ。今回も列毎に順番にスタートさせる事によって、体力がまだ続く相手にはその向上を、少し切れている相手にはその休息を与えている。誰かが指摘したわけでもないが、任された隊員達をしっかりと監視しながら彼は指示を出しているのだった。


ちなみにこんな配慮ではある物の、上からの文句も他の隊員達からの文句は何一つない。

その1つの理由が、こんな所から出ている。



「ハァ…ハァ…」

ランニングをスタートしてしばらく時間が経った頃、1人の隊員がバテだし走り方に乱れが生じてきた。それを見たギラムは静かに駆け寄り、歩調を合わせながら1人に声をかけた。

「大丈夫か、あんまり無理するんじゃねえぞ。」

「ぁ、はいっ す、すみません… ま、まだ…行けますっ…!」

「視界がフラ付いてきたら、ちゃんと言ってくれよな。 身体の無理は、任務に影響が出るからさ。」

「おーっすっ…!」

部隊施設の長官に位置する存在にしては珍しく、トレーニングでの疲労が見えた際に気を配る優しさを持っているのだ。他の中隊長を見比べてもスパルタな人材が多い中、とても寛容的であり1人1人の体力に見合ったトレーニングを行う。それが彼の目指す朝練習であり『優し過ぎる』という意見がある中でも、彼はその行動を止めず静かに気を配っているのだ。


しばらくの間気にかけた相手が走る姿を見ていた後、彼は再び外周へと移動し他の隊員達の様子に目を配る。他に目立った乱れを見せる者も無く、その日の練習メニューは静かに終わったのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 現実と地続きの世界とあって、訓練も走り込みと人間に出来そうな範囲で事が整えられてるので愛着が湧きました。 [気になる点] 任務が気になりますね。 [一言] 結構な人数が必要になりそうな予感…
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