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ⅢⅩⅦ.それぞれの進路

 ミッションが終わった私達は学舎に戻って見ると、浮かない様子の知夏さんと旦那さんがいた。


「兄さん、おかえりなさい。ミッションはどうだった?」

「なかなか有意義な経験だった。これからが楽しみになってきた所だよ。知夏くんと剛は?」

「僕達も同じかな? 夢だった喫茶店を開業出来そうで、明日からが大変になりそう」

「ただ姉さん達のチームの成績はあまり結果がよくなかったらしく、外見を変えてそれぞれ専門学校に通うことになり手続きをしているそうです」

「なるほど」


 知夏さんは元気なく教えてくれまた深いため息を付くけれど、残念ながら華恋に関しては予想通りの結果なんだと思う。


 狩人としてはそれなりらしいが、未だにパートナー精霊との相性は最悪だとか。


 ペンちゃん曰く


 辞退をしても良いはずなのに、なぜか断固拒否をされる。


 らしい。


 まぁ庵さんがいるのだから、脱落したくないのは当然なのか。

 もし脱落と言うか辞めることになったら、ここの記憶は消されるらしいし。

 しかしこうなってくると、今さらながらなんで選ばれたんだろうか?


「庵兄さん、私も学校に通ってみたいです」

「え、ペンギンくん、そう言う選択もありなの?」

「もちろんです。しかしコアラさんの場合は高等専門校がよさそうですね?」


 専門学校と言った途端コアラちゃんの目は輝き出して突然の選択枠が浮かび上がり、ペンちゃんもそれに対し快く前向きに話を進める。


 病弱なせいであまり学校に通えてないと言っていたから憧れがあって当然だけれど、一緒に冒険出来ないのはやっぱり残念だな。

 でもいつだって連絡は出来るし会おうと思えば会えるから、コアラちゃんが進みたい道があれば全力で応援する。


「はい、よろしくお願いします」

「だったらライオンも学校に通うのか?」

「え、そうなんですか?」

「まさか? 俺は当初通り、タヌキくん達と冒険に行くよ」


 余計なことを聞くタヌキではあったけれどありえる話で不安になるも、そう言うことは考えてなかったらしく軽く否定されホッとする。

 そこまで過保護ではなかったようで、コアラちゃんも分かっているようで淋しそうには見えない。


 ライオンさんまでもが抜けたら残念だけじゃなくって、パーティーとして成立しなくなる所だった。

 そりゃぁ誠さんが加われば問題はないけれど、誠さんにだって選ぶ権利がある。

 私はもちろん加わってくれたら嬉しい。


 その時は上司と仲間の切り替えをきっちりつけよう。


「そりゃぁ良かった。所でクマはどうしたいんだ?」

「クマくんさえよければ、俺達のパーティーに加わらない?」

「みなさんが宜しければ是非」

「うさは賛成」

「なら、決定だね」


 みんなも同じ事を思っていたのかライオンさんが気軽に誘えば、誠さんは嬉しそうに頷いてくれパーティーが増えることに確定した。

 知夏さん達もにっこり笑顔でほんわかムードになる。


「それではコアラさんは入学の手続きと、クマさんパーティーの申請をしますね? 高等専門は私の母校でもありとても環境が良い場所です」


 と言ってペンちゃんは教室から出ていき、私達はようやく席に付く。


 海はまだ寝ているらしく、指輪から出てこない。

 他の精霊達も疲れているのか、指輪に入ったままで静かだ。


 たった一週間の学園生活?

いろんな思い出が作れてもう少し学園生活を送りたいような気がするけれども、さすがに学校に通う選択肢はない。

 でも本当にこの一週間は充実した毎日だった。


 異世界の住民権をもらったのがすべての始まりだった。

 そこには庵さんとタヌキそれからうさちゃんがいて、驚く私達をペンちゃんは一から教えてくれたんだよね?

 そして空海が私のパートナー精霊になり、学校に通って知夏さんたちに出会え魔法が使えるようになった。

 誠さんとも知り合えたしね。


「キツネ、何たそがれてんだよ?」

「この一週間でいろいろあったなって」

「確かにな。大分オレ達の日常も考え方も変わったよな」

「だね? もしここに来なければみんなにも出会えず変わらない毎日を送ってたよ」

「私もです。みなさんに出会えて本当に良かったです」


 私がいけなかったのかなぜかみなさんエンディングを迎えるかのような会話になり、コアラちゃんなんて言いながら涙ぐんでいる。

 確かにコアラちゃんとは別々の道を進むことになるけれど、それでもこれは少し大袈裟。


「ねぇ、パパ。もうコアラお姉ちゃんと会えなくなるの? うさ、そんなの嫌だよ」

「そんなはずないだろう? 会おうと思えば、会えるよ」


 深読みなんて幼女に出来るはずもなく不安を感じたのか泣きながら問ううさちゃんに、タヌキは頭をなぜながら優しく答え笑顔を戻そうとする。


 まだまだうさちゃんには複雑な心境は分からない。


「うさぎちゃん、紛らわしいこと言ってごめんなさい。いつでも会えます。その時はたくさん遊びましょうね?」

「うん、それなら約束」


 コアラちゃんも涙を拭いうさちゃんの視線に合わせて謝り約束を交わせば、まだ不安そうなうさちゃんは小指を差し出し指切りを求める。


ちょいやこれは萌えかもしれない。


『ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本飲ます』


二人の可愛い声がハモり、ようやくうさちゃんの顔に笑顔が戻る。









しばらくして十代前半ぐらいまで若返った華恋達と、ペンちゃん達指導員が戻ってきた。


 しかし華恋含め三人しかいないけれど残りはどうし……子供に混じって勉強するのが嫌で辞退した人もいるんだろう。

 さすがの私だって、それは勘弁してほしい。

 それでも華恋は別として、他の二人はこの世界が好きだから残ったんだろう。


「みなさん、試験ご苦労様でした。十三人の方が正式に住民権を獲得し、十人には冒険者としての許可書が協会から発行されてます。おめでとうございます」


 教壇に立ったマデリーネはホッとした表情を浮かべ、そう言いながら自分の事のように喜んでくれる。

ペンちゃん含む他の指導員達も同じく涙ぐむ人もいるから、知夏さんまでも涙ぐみコアラちゃんなんかボロ泣きだ。


卒業式みたいなものだからまぁ無理もないか。



『古都音、おはよう』


 精霊達のお目覚めは同時なのか空海以外の子達も指輪から次々と元気いっぱいに飛び出すけれど、いつもと違う空気を感じ取り戸惑い首をかしげ不安そうにそれぞれのパートナーの周りを飛び回り様子を伺う。

 それは空海も例外ではなく早い所ネタバレと行きたい所だけれど、その前にやるべき事を優先させ海だけをつかみ手のひらに座らせる。


「海、分かってるよね?」

「……はい。お仕置きは受けます」


 嘗められないよう笑顔を消しまずは自覚があるかと出させば、いつもとは違い聞き分けが良くシュンとしておとなしい。

 いけないことをしたと言う自覚はちゃんとあって、反省はしていることがよく分かる。


「なら明日は指輪で反省してなさい。今日は今から卒業式だから、保留でいいけどね」

「分かりました。もう二度と、勝手に食べたりしません。ごめんなさい」


 いくら反省をしても前回同様心を鬼にしてお約束の罰を言い渡せば、今回は素直に聞き入れてくれる所を見ると少しずつ成長をしていると確信した。


 それは嬉しいことで罰は実行しても数時間にしようと思う。

 だけど海のことだからまた近いうちにやらかしそうな気もするんだけれど、まぁそれはそれで成長過程と思えば良いのかな?

私のように同じ過ちばかり繰り返すような駄目な子にならなきゃ良いんだけど・・・。

 そうならないように私もこれからはしっかりしないと駄目か。


「古都音。コアラとポムは学校に行くって本当なの? もう毎日遊べないの?」

「うん、コアラちゃんが決めたことだからそんな顔しないの。それに毎日遊べなくてもポムは空のお友達なんだから、約束すればいつだって遊べるんだよ」


 海のことが終わったと思ったら悲しげな空が傍に来て沈んだ口調でそう訪ねるから、泣かれないよう言葉を選びながら説明し頭をなぜる。

 ジャンヌと菫も似たように悲しげな表情を浮かべていて、ライオンさんとタヌキに励まされていた。


 精霊達には初めてのお別れ(本当の別れじゃないけど)


「そうか。ポムとコアラはパートナーだもんね。寂しいけど分かった」


 空の気持ちは良く分かるけれど、だからと言ってどうすることも出来ない。

 だけど何か言わないとコアラちゃんに気を使わせてしまう。


「あの~みなさんさっきから何か勘違いしていませんか?」

「え、勘違い?」


 そこにペンちゃんがやって来て意味深な問いを投げられるけれど、意味がまったく分からなく首をかしげ問い返す。


 勘違い?

 何を勘違いしてるんだろうか?




次こそ最終回にしたい・・・。

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