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ⅢⅩ.週末の計画を立てよう

「ぷ~ 誠の馬鹿」


 空海とアンナと仲良く楽しい昼食のはずが、アンナはすっかりふて腐れて愚痴を溢し続けている。

 だけどちゃんと食欲があるようなので、そんなに心配しなくても大丈夫だろう。


 しかし食事を一緒にできないぐらいでこれだと、この先の交流関係がより一層狭くなる?


「アンナ、大丈夫だよ。あしたはいつものようにみんなで」

【空。明日と明後日はお休みだからみんなじゃないよ】

「お休み。だったら誠とずっーと遊べるんだ」


 空のちょっとした誤解をすかざす解けば、アンナにしてみればそれで良かったらしく満天の笑顔が浮かぶ。


 ずーと遊べるのかまでは正直良く分からないけれど、言わぬが花なんたろう。


「それじゃぁおいら達も明日と明後日は古都音と遊べるんだな?」

【明日はいいけれど、明後日は庵さんのイベントに行くから、大人しくしてるんだよ】

「だったらジャンヌと遊べる?」

【そうだね。ジャンヌとそれからミンクもいるから四人で仲良く遊んでなさい】

「うん、わかった」


 どうやら遊び相手が他にいれば良いらしい。

 ちなみにミンクとはネコさんの精霊の名前。

 大泣きしないで良かったと思いつつ、何となく寂しいと思うのは気のせいだろうか?


「あ空海ずるい。ねぇ古都音。そのイベントは誠も行かれる?」

【う~ん、当日券あったっけぇ?】


 アンナも誠さんと遊ぶよりそっちの方がいいらしく羨ましがるから、当日券があったか確認する。

 その前に誠さんの意思を確認しないといけないんだけれど、アンナにはそんなの通用しない。

 

 誠さんはあまりにも落ち着いていてしっかりしすぎるから、逆にここまで破天荒な子になるんだろうか?

 そう言えばペンちゃんとこもそうだよね?

 ……ペンちゃんが腹黒じゃなければ。


【あ、ごめん。もう完売だ】

「完売って何?」

【売り切れってこと】

「え~。つまんない。だったらそんなこと辞めて、もっと楽しいとこ行こうよ」

「もっと楽しいとこってどこだよ?」

「動物園とか遊園地とか」

「動物園に遊園地? くーも行きたい!!」


 子供の大好きなスポットを天秤に掛けてしまい、空だけでなく海も目を輝かせ私を見つめる。

 そんな愛らしい顔でお願いされると弱いけれど、イベントだけは絶対譲れない。

 ライオンさんには毎日会えても、庵さんにはなかなか会えないもん。

 流石に握手会は控えるけれど。


【だったら来週うさちゃんとタヌキを誘っていこうか?】

『うん!!』


 来週ならどちらも暇なので無関係の家族を巻き込めば、空海もアンナもそれでいいのか嬉しそうに頷く。

 すぐにタヌキに都合を聞いてみる。


 誠さんはどうなんだろう?


「あ、誠だ。おかえり。ねぇ来週の土か日空海達と動物園か遊園地に行こうよ?」

【突然どうしたの? 来週の土曜なら大丈夫だよ】

「本当に? やった」

「誠さん、すみません」

「いいや。原因はアンナにあるだろうから、謝らなけゃいけないのはこっちの方なのでは?」


 グットタイミングで誠さんがアンナを迎えにやって来て、なんの脈略もなく聞くアンナに、最初は驚くもののすぐに物事を把握。

 さすがパートナー。


「タヌキも土曜日がいいらしいから、それで決定ですね?」

「そうだね? あとは場所だが、それはアンナ達に任せた方がいいらしい」


 すぐにタヌキも乗り気な返信が来たため、予定はあっという間に決まり空海とアンナは早速行く場所について話し合いを始める。

 これでしばらくはおとなしい。


「そう言えば彼女とはうまく話をつけられましたか?」

「ああ一応わ。しかし彼女は弟と同じタイプのようで、人によって態度を変える人間のようだ。私には明るい素直な女性に見えたよ。しかし君の話をすると少々機嫌が悪くなり、不釣り合いだから付き合うのは良くないと言われてしまった」

「さようですか?」


 彼女が世に言う八方美人だったことに驚き、上から目線で見られてることに腹が立つ。


 確かに私と誠さんだと不釣り合いだけれど、彼女にだけは言われたくない。

 五十歩百歩の癖して自分だったらお似合いだと思ってるんだろうか?


「それでも軽く私の友人の悪口を言わないでと頼んでみると、笑顔で頷いてくれてはいたが内心納得せずと言う感じだった」


 やれやれといった感じで誠さんの話はこれで終わる。

 少なくても誠さんは分かってくれているから、これからも何か嫌みを言われ続けても気にしないでいよう。


「ありがとうございます」

「どういたしまして。これからは君は私の部下でもあるのだからね」

「あ、そのことなのですが本当に私でいいんですか?」

「少なくても私は適任だと思うよ。しばらくは二人だが、来春には正式な部にするつもりだからね」


 自然の流れで疑問になっていたことを聞いてみれば、なんの根拠もないのになんの迷いもなく期待される。

 言い方からして思っているよりか遙かに大変な仕事なのかも知れない。

 だけど話している誠さんが楽しそうに見えてしまい、そんな彼の期待に応えたいと思ってしまった。


「そんな言い方ずるいです。後でやっぱり私は不適任だからって、解雇処分にしないで下さいよ」

「それはわからない」

「うっ……」

「まぁ解雇処分にはしないが、私と結婚してもらうよ」


 期待されると調子に乗ってしまう私は恐る恐るそう申し出るとバッサリ切り捨てられ肩を落とせば、たちまち黒い空気が流れすこぶる笑顔でありえない言葉が聞こえた。

 私には無縁で不適切な台詞。


「は?」

「……冗談」


 あまりの急展開に付いていけなく間抜けな声で疑問視すると、誠さんはクスクスと笑いながら私に近づき耳元で甘く囁きからかわれる。


 ……誠さんがどSだってことすっかり忘れてた。


 怒っても当然のことなのに、なぜか逆に我に返り冷静になれた。


「昼休みも終わるので私戻りますね。空海はどうする?」

『一緒に行く』

「では、また後程」


 時間も時間なので何もなかったかのようにそう言い、空海を連れ職場へと向かう。

 予想外だったのか誠さんは戸惑っている様子だった。






 すまない。

 調子に乗りすぎた。



 席に付きメッセージが来ていることに気づき確認すると、誠さんからの謝罪文だった。

 なんのことだか分からず首をかしげ少し考えてみる。


 …………。

 ……まさか私が怒ったとでも思った?



 やっぱり私は誠さんに、構われていたんだ。



 薄々気づいていただけに怒りは沸かないけれども、それだと同じ事の繰り返しになるだけだから少しだけ私も調子に乗ることにした。



 ケーキバイキングで手を打ちます。



 昼食後と言うこともあり甘い物が食べたくて、ついそう書いて送る。

 しかし食べ放題はいくらなんでも調子に乗りすぎ



 解った。

 いい店を探しておく。



 いい返事がすぐ返ってくる。

 冗談で言ったはずなのに、本気にされてしまった。

 流石にこのやり取りだからして、それが冗談と言うことはないと思いたい。


 それにしても誠さんチョイスのケーキ屋なら絶対おいしいよね?

 ……割り勘で食べに行くんだったら問題ないよね?


 楽しみにしています。


 食べ物の誘惑には勝てるはずもなく、ネタばらしせずに話を進める。


「月島さん、すごい幸せそうですね? 何かいいことありましたか?」

「うん。友達と美味しいケーキバイキングに行くことになったんだ」

「そうなんですか? 良かったですね?」


 思いっきり顔がニヤケていたのかニタついた後輩に問われ、大人げなく大きな声でつい馬鹿正直に暴露してしまう。

 おかげで後輩くんから暖かく見守れてしまった。

  完全に幼稚な反応をしてしまった自分がいつもながら情けなくなり反省するけれど、その会話を聞いていたもう一人の後輩くんに


「相手は男ですか? 」


 余計な探りを入れられる。


 友達と私は言ったはずなのに、なんで探るんでしょうか?

 独身アラフォーには禁句ですよ?


「そそれはご想像にお任せかな?」


 まさか相手が副社長ととは答えられるはずもなく曖昧に答えると、頂戴チャイムがなりそれ以上の追求はなくなった。

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