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ⅩⅦ.疫病神 地雷を踏む

「庵~」

『げっ』


 出来ることなら遭遇したくなかった甲高い声がライオンさんの名を呼び、来なくてもいいのにライオンさん目がけて駆け寄ってくる。あまりのことに私達は心の声を、吐き出してしまった。


「どうかしました?あの人は知り合いの方ですか?」

「俺のファンの子……」

「コアラ、あいつとは関わるな。性格が悪くなる」

「そうなんですか?」


 何も知らないコアラちゃんはキョトンとして問うけれど、ライオンさえ困ったように答えタヌキなんてボロクソ。うさちゃんも彼女のことを知らないはずなのに、タヌキの背後に隠れる。


「こんにちは、どこ行くんですか?」

「仲間と観光してる所」

「そうなんですね? なら私もご一緒させて」

「君は君の仲間との絆を深めないとダメだよ。パーティーは信頼関係が大切なんだからね」


 相変わらずの自分勝手な申し出にやんわりと断るライオンさんだったが、言われた瞬間コアラちゃんを睨み付け前に立つ。あまりの迫力にコアラちゃんの笑顔が消え怯えだす。


「あんた新人? 私とパーティー変わってくれない? 向こうの世界でいくらでもお金を出すから」


 昨日と似たような脅迫。


「イヤです。私はこのパーティーが気に入ってるんです」

「まさかあんたも庵のファン? それなのに見たことないわね? 私は庵のイベントはすべて行って、ファン歴六年なんだから。あんたのようなただのファンとはレベルが違うの」

「それを言ったら私は庵兄さんのファン一号です。イベントはいけませんが、好きと言う気持ちは誰にも負けません」


 まさかまさかの強気にはっきり断るコアラちゃんに、華恋は顔を真っ赤にしてどうでも良いことを自慢する。しかしコアラちゃんも負けずに言い返す。姪なのだからファン一号は当たり前。

 しかしファン歴六年。 

 イベントに全部行くのはすごいけれど、ファン歴は中途半端な。私なんてその倍以上………なんて言ったら火に油を注ぐような物。


「あんた頭大丈夫? イベントに行かないくせに、ファン一号って何様のつもり?」

「………」

「そう言うことを言うのは辞めてくれないかな? 藍は俺の大切な姪だよ」

「え、め姪? ………私用事を思い出したから、悪いけど戻るわ。ごきげんよう」


 ついにライオンさんの地雷を踏んだ。それでも優しく言うライオンさんではあったけれど、笑顔でも目が笑ってなく迫力がある。さすがにこればかりは察知したのがさっさと退散。


「あのおばさん変な人だね? 今度コアラお姉ちゃんをいじめたら、うさが噛みついてやる」

「それはダメだ。何をされるか分からない」

「さすがにもうコアラちゃんには酷いことしないと思うけど、何を言われても相手にしたらダメだよ」


 凹むコアラちゃんをうさちゃんは怒り勇ましいことを言うけれど、それは危険なので言うまでもなくタヌキから止められる。うさちゃんが危険にされたら大変だ。私もタヌキと似たようなことを言って励ます。

 それにしても良くライオンさんの目の前であんなこと言えるな? 影で………そこまで賢くなくって良かったか。


「ありがとうございます。ファンにもいろんな方がいるんですね?あの人ではなくキツネさんで良かったです」

「確かにそうだね。キツネちゃんはサインをねだってこないし」

「だってライオンさんのサインは持ってるし、今のライオンさんは私達のリーダーだからね?」


 ようやくコアラちゃんに可愛らしい笑みが戻り、嬉しいことを言ってくれる。

 華恋にサインを求められまくってるらしく、少し減なりしているライオンに私は私なりの結論を答えた。

 ライオンさんと庵さんを別々に考えるのは難しいけれど、なるべくリーダーのライオンさんとして考えることにした。そりゃぁ感想とかは直接言うけれど、それはライオンさんだって嬉しいと思うから。後で確認を取ってみよう。


「そうだね。俺は動物さんチームのリーダーなのだから、これからはもっとはっきり言うべきなんだよね?」

「この件は協会と彼女の指導員に話しておきますので、そんなに気を張らないで下さい。やはりパートナーに問題があるから、精霊は問題児なるのですね」

「え?」

「彼女のパートナー精霊は、Aです」

『…………』


 当然さっきのことはペンちゃんも異常だと思ってくれ動いてくれるようで一安心するけれど、嫌な現実を知り私達は絶句。でも考えてみれば合致する。


「昨日指導員には指導するようにとは言ったのですが、あまり関心がないようでだったら石から出さなければいいんでしょと言われたそうです」

「いくらなんでもそれは酷い」

「えいくん、パートナーに虐められてるの? だからうさに意地悪したの?」

「だと思いますよ」


 昨日聞いたより状況が悪化してるようで悪いより同情の方が大きく、泣かされたうさちゃんまでAの心配をする。

 本当に華恋は迷惑な人。きっと小さい頃からチヤホヤされて嫌な経験をしたことないから、人の痛みとか分からない。両親が死んで後ろ楯がなくなったら、きっと痛い目見て苦労するんだろうな?


「あのおばさんは悪人なんだね? マイケルくん達に頼んだらやっつけてくれるかな?」

「きっと懲らしめてくれるよ。ねぇ庵兄さん?」

「え、あそうだね」


 すっかり華恋は悪人で子供ならではの退治方法は飛んでもない方向に向かってしまいライオンさんを困らせる。

 コアラちゃんの頼みなら断れないだろうから、どうやって華恋をやつっけてくれるんだろうか? 大人だから話合い……ないか。


「復活する前にさっさと行こうぜ?」

「復活ってゾンビじゃないんだから。そもそも死んでないんだし」

「ライオンに疎まれた時点で、ファンとして死んだだろう?」

「まぁ確かに」


 面白い例えに面白半分に突っ込んだけど、予想外にも的を付いていたことに感心する。

好きな人の大切な人を罵倒したため、その人に嫌われた。普通の人ならショックで立ち直れなく、二度と顔向け出来ない。しかし相手はあの神経に毛根が生えていそうで、世界は自分中心に回っていると思っている人なのだから復活するかも知れない。


「ペンギンさん、お店はどこ?」

「あそこのピンクの屋根の店です」


 それにはスルーして話題を変えるライオンさん。顔色が少し良くない。

 ペンちゃんが指差したお店はお菓子の家みたいなファンシーな外装だった。精霊のオブジャが屋根に腰かけている。


「童話に出て来そうな可愛らしいお店ですね?」

「精霊グッズを売っている店ですからね」

「ポム達、お店に着きましたよ」

『は~い』


 と、石の中の精霊達を呼びだせば、一斉に全員が飛び出す。

お茶の後、ポムの勉強を見ると言い出し、全員でポムの石に入っていた。こういう時双子は嫌がらないと言うか率先して発案する。


「ポム、みんなとは打ち解けられた?」

「うん。ことばたくさんおしえてもらった」


 さっきとは違いポムは笑顔になっていて、言葉通り双子達と打ち解けたようだ。髪の合間から見える目がまた愛らしい。


「ポムはおいら達の仲間なんだから、当然のことをしただけだ」

「ですね? ポムは私達の大切な友達です」

「ありがとう。みんなおともだちだね」

「うん!! 後ねアンナって言うお友達もいるから、後で紹介するね」

「たのしみ」


 可愛らしい会話に可愛らしい仕草は、何度も言うようだけど私には目に毒です。タヌキに変態呼ばわりされる前に、なんとかして冷静さを取り戻さなければ私の立場がなくなってしまう。


「空海、何か欲しい欲しい物ある?」

「スプーンとフォークと箸。それから食器」

「くーは椅子とテーブル。後はおもちゃ箱」


 とっさに双子に聞くと、まともな答えが返ってくる。

 さっきの喫茶店でよほど気に入ったのだろうか?おもちゃ箱はちょっと胸が痛い。


「庵、私は三面鏡とクローゼットが欲しい」

「うん、いいよ。女の子らしいね」


 可愛らしくおねだりするジャンヌにライオンさんは駄目と言うはずもなく、髪をクチャクチャになぜながら頷きそう言う。頬を赤く染め照れ笑い。


「菫、お前も欲しいだろう?」

「はい」

「桜くんは何が欲しい?」

「僕も空と同じで、テーブルと椅子」

「分かった。ねぇパパ買って良い?」

「ああ。それとカッパと傘と長靴もな」

「タヌキ、それナイス」


 やっぱ精霊でも男の子と女の子では違うらしく、買う物は大体決まる。

 雨具類はなくてはならない物でせっかくだから双子に似合う可愛い物。他にも見ていたら、いろいろ欲しくなるんだろうな?

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