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真っ白な世界
白い世界で目が覚めた。
無色透明な感情に、無味無臭な空間が思考を劈く。
手足の感覚はなく、ぼんやりとした視界に『自分』を確信する事ができない。
「ここは?」
あたりを見回すがそこには何も存在しない。
真っ白な空間。
まだ寝ぼけていて、正しく世界を認識できていないのか、それとも元から何もないのか。
ぐるぐると巡るのはそんな事ばかりで、一向に先へと進まない。
「立ち上がろう」
そう決意したのは、目覚めてから5分ほど経ってからだろうか。
本能から来る傾向性を頼りに、俺はゆっくりと体を起こす。
地面についた手のひらがヒンヤリと冷たく、思うように力が入らない。
やっとの事で立ち上がり、今にも崩れ落ちそうな体勢のまま、俺は改めて思考を巡らせる。
俺は誰なのか?
ここはどこなのか?
生きているのか、それとも死後の世界なのか?
目的は?
手段は?
どんな経緯でここへ?
それとも、今ここで発生したのか?
何もない、何も分からない世界で、それでも俺は前へ進もうと決意した。