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デウステイマーズ~降神戦隊~  作者: 削畑仁吉
17/24

決裂

 鳳千華をはじめとする総督府職員達は、暇を持て余した近隣住民が世間話をするために日々実効支配している1階の待合室に集められていた。

 それを取り囲むのは、ライフルやショットガンで武装したあまり人品のよろしくない連中だ。

 朝礼中に彼等は突然押し入ってきた。ヤマト帝国は民間人の銃携帯を認めていないが、皇国時代の在庫を抱えたままの銃砲店は幾つもあるはずで、そこから手に入れたのだろう。総督府にも一応は自営用の武器が置いてあるのだが、せいぜいが拳銃数挺だ。それでライフル銃を構えた十数人の暴徒相手に大立ち回りを演じようなどと考える命知らずはおらず、職員達は粛々と連行された。時刻が早かったため、一般人が巻き込まれなかったのは救いだ。

 10分経っても何も起こらなかったので、暴徒達のリーダーが自分で警察に通報した。強盗をしに来たのではなく政治的主張が目的なのだから、ギャラリーがいなくては困る。


「我々は、ヒエムスの未来を真に憂う者達である! 我々の目的は、我々と志を同じくするリ・アージュの同志達に、我々の存在を伝えることである! その上でヤマト帝国に対しては、ヒエムスからの即時無条件撤退を要求する! 明朝までに要求に応じない場合、総督の命は保証できない!」


 通報を受けて武装警察がやってきてから既に3時間が経過していた。しかし警察は野盗紛いのような連中の国家レベルの要求に対してどこまで真面目に対応していいものか困り果てたのか、パトカーで総督府を包囲するだけで実質何もしていない。犯人達も自分達の主張を伝えてしまえば、後は相手の返答待ちでやることがなくなってしまった。壁の影でトランプ・ゲームに興じる者まで出てくる始末だ。

 仮にヤマト帝国と交渉できたとして、と千華は考える。帝国政府は取引に応じるだろうか? 答えはノーだ。いくら実入りの少ない植民地を放棄する口実を欲しがってはいても、テロリストに屈したとあっては面子が立たない。

 自分が帝国の政府高官だったならどうするか?

 とりあえず総督には死んでもらう。それを口実にヒエムスに対して大々的な報復攻撃を行い、リ・アージュを殲滅。ヘルゲイターが強大でも、所詮は人間が側にいないとろくに動けない、ただの巨大生物だ。高空爆撃でカタがつく。それで一介のテロリストに駐留部隊を全滅させられた汚名は雪げるだろう。

 それで自国の権威を守った上で、大君(タイクーン)商連合かアヴェリア合衆国にイヴェールを売りつける。きっと高く買い取ってくれるのではないだろうか。大君商連合はとにかく領地を増やしたがっているし、アヴェリアはそれを牽制したがっている。

 それに、なんといってもデウステイマーの存在だ。あの好戦的な二大国にデウステイマーが存在していれば、それを公の戦力に組み込んでいないはずがない。なんとしてもデウステイマー、そしてヘルゲイターを手に入れたいと考えるに違いない。

 たとえ、捕らえたリ・アージュの生き残りを人体実験にかけてでも――と、そこまで考えて千華は気分が悪くなった。


「本当に、リ・アージュは来るのか?」

「来る、きっと来る! アレクシィ陛下が我々を見捨てるはずがない!」

「……アレクシィと話したことがあるのですか?」


 思わず千華はそう訊いてしまった。意外だった。この暴徒はそんな大物だったのか。ランゾウにヘルマン――自分を誘拐しようとしたあの2人に比べると何の迫力も感じないのに。

 相手は気まずそうに目を伏せた。話したことはないらしい。やはりただの小者か、と千華は落胆する。それにしても、アレクシィに対する彼の絶対的な信頼は何処から出てきたのだろう。


「あなた達はあの男を信じているのですか、自分の顔もさらせない男を? というか、アレクシィが何のリアクションも起こさなければ、これからどうするつもりなのですか、あなた達は?」


 重ねて問うと、五月蠅い、と男は銃口を向けてきた。


――まさかのノープラン。


 代行、相手を刺激なさらないように。職員の1人が小声でたしなめる。千華の身を案じてというよりは、自分にとばっちりが来ることを怖れてだ。こんな行き当たりばったりのチンピラに引き下がってみせるのは癪だったが、そんな相手に殺されるのはもっと嫌だったので千華は大人しく口を閉ざした。

 まったく、なんてつまらない連中にしてやられたのだろう。平和な本国ならまだしも、前々からテロの脅威が危惧されていたヒエムスの総督府がこのザマとは。

 千華は周囲の様子を探った。職員達の顔には緊張と不安の色がまざまざと刻まれている。だが不安なのはむしろ自分達を取り囲んでいる暴徒達の方なのではないだろうかと彼女は思った。

 甲高い呼び出し音が鳴ったのはその時だ。鳴り響く電話の一番近くにいた暴徒の1人がおろおろと仲間を見回す。結局、先程千華が話しかけた男がしびれを切らせて駆け寄り、受話器を取った。


「俺だ」

『余だ』

「……ヨダ?」

『――アレクシィ・シュヴァルツヴィチ・ヒエムス』


 電話はスピーカーモードになっており、その名は待合室を騒然とさせた。


「ま、まさか……本当に?」

『そう驚くな。余に――リ・アージュに接触を図ろうとして、行動を起こしたのではないのか、諸君等は? であれば、計画通りとほくそ笑むところであろう?』


 ヒエムス皇帝を名乗る男は含み笑いをした。


『それで、これからの計画は?』

「い――いえ、その――」

『ならば、今より余が諸君等の指揮をとろう。悪いようにはせぬ。不服はあるかね?』

「めッ、滅相もございないですッ! おお、お願いしますですッ!」


 暴徒達がどよめく。やはりアレクシィは俺達の味方だ、と誰かが呟く。受話器を握ったリーダー格の男は、千華の方を振り返って勝ち誇ったような顔をしてみせる。ハイハイ勝手になさいな、と千華は思った。


『では、君達の人数は?』

「じ、じゅ、13人であります!」

『これから、余の使いの者を送る。たとえそれがどのような者であっても、総督府に入れることを拒んではならぬ。たとえそれが警察官を名乗っていたとしても、だ。それに従えぬというなら、おまえ達はそこまでと見なす』

「は、はい、必ずや!」

ヒエムスは不滅なり(ベスメル・ヒエムス)

「ベ――ヒエムスは不滅なり(ベスメル・ヒエムス)!」


 電話は一方的に切れた。アレクシィはいったいどのようにして、武装警察に包囲された総督府に仲間を潜り込ませるというのか。やはり、ヘルゲイターによる力押しか?

 その答えがわかるまで、半時間と経たなかった。

 再び電話が鳴り響く。今度は武装警察だった。用件は人質の交換。


『これからそちらに総督を送る。その代わり、他の職員は解放してもらいたい』

「総督だと!?」

「お父さんが……?」




 顔を見るのは何日ぶりだろうか。総督府の正面玄関に立つ父を千華は呆然と眺めた。

 父はいくらか憔悴した様子だった。頬はこけ、肌の色はあまりよくない。髪は寝起き直後に慌ててセットしたかのように乱れを残している。ただ、着ているスーツ一式と手に提げた鞄は買ってきたばかりのように皺1つない。

 スーツは兎も角、鞄は千華が見たことのないデザインだった。あんなものを父は持っていただろうか。


「さあ、私が総督だ。私1人で充分なはずだ、人質は解放してくれ」


 そうは言っても、なかなか職員達は動かなかった。確かに解放はされたい。だが、散々職務放棄し娘を身代わりにしてきた男がいきなり人の上に立つ者としての義務を遂行しはじめたというのは、何か裏があるのではと警戒せずにはいられないのだ。

 先程のアレクシィからの電話もある。まさかこの総督はアレクシィの仲間なのか? いや、ありえない。この男はヤマト帝国人なのだ。

 暴徒達も顔を見合わせる。目の前の男はアレクシィの使者なのか、それともタイミングよく現れただけの相手なのか。あるいは、あのアレクシィそのものが偽者だったのではないか?


「おまえは――」

「人質を解放してくれ」

「陛下の使――」

「人質を解放してくれ」

「…………」

「人質を解放してくれ」


 最終的に暴徒は従った。千華は驚きと共にそれを見ていた。父がここまで自分の意見をごり押ししたところは今まで見たことがない。いつだって彼はごり押される側だったのに。

 目の前の男は本当に父なのか。


 職員達はぞろぞろと出て行った。すれ違う際に頭を下げる者、気まずそうに目を背ける者、色々いたが、父はその誰にも視線を向けなかった。

 ただ1人、千華を除いては。


「――おまえは、残りなさい」


 出て行こうとしていた娘の腕を掴み、父が言った。


「おまえも代行とはいえ人の上に立つ身であったのなら、最後まで責務を果たしなさい」


 散々仕事を放り出していたあなたに言われたくない、と千華は思った。自分を見下ろす父を睨みつける。


「あなた――本当に父様?」


 薄ら笑いを浮かべた父がその顎に指をかけ、顔の皮を毟り取ると、その下からはアレクシィの髑髏を模した仮面が――という光景を千華は想像したのだが、薄ら笑いの部分以外、そうはならなかった。


「いいから、ここにいなさい」


 最後の職員が出て行き、千華のすぐ手前で総督府のドアが閉ざされた。


「――さて、諸君。アレクシィ陛下から君達にプレゼントがある」

「えっ……!?」


 まさか、父がアレクシィの使者だというのか。千華は驚愕を隠せない。風采も能力もぱっとしない父が敵のスパイというのは――スパイらしいスパイなんて映画の中だけだろうが――にわかには受け入れられない。

 だが、冷静に考えればおかしい話ではない。仲間から生け贄として切り捨てられた父がヤマト帝国を憎悪し、そこにリ・アージュがつけ込んだのだとしたら。


「……何だこりゃ? 宝石……か?」


 父からあの鞄を受け取り、その中身を確認した暴徒のリーダーが眉をしかめる。鞄の中に入っていた小箱には、色とりどりの宝石が13粒詰め込まれていた。


「軍資金にでもしろってのか? それはわかるが、何も今この状況で……」

「全員、その宝石を握りたまえ。念の為、全部の宝石で試すんだ、交代で」


 有無を言わさぬ様子で父が言う。暴徒達はヤマト帝国人に命令されることに不満を露わにしたが、アレクシィの指示だと言われ渋々と従う。

 宝石を握り、それを隣の者に渡してまた新たな宝石を握る。そして13粒の宝石が1周したところで、父はにこやかに声をかけた。


「それで――どうだったかね?」

「どうって……」


 別に何もねえよ、と1人が口を尖らせる。ふむ、と呟いた父は千華を見た。


「千華、おまえも試してみなさい」

「どうして――」

「いいから言うとおりにするんだ」


 千華はおずおずと手を伸ばす。その手を掴んで引き寄せると、父は押しつけるように宝石を握らせた。


「う――」


 何もない。ただの硬い石だ。


「これが、なんだって言うの、父様……?」


 父はため息をついた。失望したとでも言うように。


「残念だが、君達は不合格だ」

「何……!?」


 1人が銃口を父に向ける。だが、次の瞬間その男の首にピンク色の何かが巻き付いた。

 それがあの鞄から伸びているものと気付いた時には、男の首は嫌な音を立ててへし折られていた。

 唖然とする男達の目の前で、鞄が宙に浮かぶ。

 もはや鞄ではなく、鋭い牙の生えた口だけの化物と化したそれは暴徒達の頭にかぶりついていった。一口で首をぶちりと噛み千切り、次の犠牲者に飛びかかる。

 13人分の首なし死体が出来上がるまで、あっという間だった。

 千華はよろめき、机に手をついて転倒を何とか免れた。父を見る。父は死体に近づいて、その手から1つずつ宝石を引き剥がしている最中だった。


「……父様」

「なんだ、てっきり気絶するか腰を抜かすと思っていたが、案外平気そうじゃないか。元気があるなら宝石集めを手伝ってくれないか」


 娘に背を向けたまま、父が言う。怪物が、じゅるりと舌なめずりして鞄の形に戻る。


「それ……ヘルゲイター、なの?」

「ああ、ミミックというんだ。可愛い奴だろう」

「その宝石、御霊石だったのね」

「アレクシィ陛下はヘルゲイトオーブと呼んでいたが」


 父は小箱の中に御霊石を集め終わった。


「父様は、アレクシィの仲間になったの?」

「自分を捨てた奴等に義理立てをする理由が何処にあるというんだい?」


 心底不思議そうな顔で父は振り返った。


「あいつ等のこと、仲間だと思ってた。だけどあいつ等はずっとおれのことを馬鹿にしてたんだ。こんな僻地に送り込んで、おれが何時とんでもないヘマをやらかすかって酒の肴にしてたんだ。そうだろ」


 わかるだろ、おまえは母さんに似て頭がいいものな、と父は言った。恨むような目で。


「おれは仕事が出来るわけでも、話をして面白い人間でもない。だけど、仕事の出来ない、頭の悪い、運動音痴だからって、大人しく馬鹿にされてると思ったら大間違いだぞ。おまえ達は自分に力があることを、人を虐めても許される権利だと思ってやがるんだろうよ。だが、そんなものは無い、無いんだ。あっちゃいけねえんだよ」

「父様、私は――」

「おまえだってそうだ。小娘のくせにおれの代わりは務まるって、おれの代わりなんか充分出来るって思ってたか。おれのことなんか、探しもしないで――」

「…………」


 千華は唇を噛んだ。やはりそう受け取られてしまったか。いや、きっと千華がどう言いつくろったとしても、端から見ればそれこそが真実なのだろう。


「そうだよ、出来の悪い男なんかかまうより、子供でも代わりが務まるような仕事の方が大事なんだろ? だからおまえは総督の仕事はやっても、おれに優しい言葉1つかけちゃくれなかった!」


 千華の父の怒りに呼応して、ミミックが再び怪物の姿を取り始めた。


「だけどな、あの人は――陛下はおれに優しくしてくれたよ」

「そ、そんなの、あなたを利用するために決まってる!」

「それがなんだ!? おれを今まで馬鹿にし、利用してきた奴等は、その甘い言葉さえくれなかった!」


 人の温もりが欲しかったんだ、と男は心の中で零した。叱責ではなく甘い言葉を、嘲笑ではなく微笑みを、平手打ちではなくあたたかい掌を。それをくれる相手なら、異国の人間だろうが動物だろうがあるいは別の惑星の生物だろうが、いくらでも手を貸そう。どうせ裏切られるに決まっているが、それでも自分を傷つけた者の傘下には2度と戻るまい。

 千華の父だった男は、一筋の涙を零した。


「ああわかってるよ千華、おまえの言いそうなことは。母さんにも何度も言われたよ、努力が足りないから馬鹿にされる、努力が実れば見返せるってな。だけど他人から蔑まれ続けたおれは思うんだよ、誰かを蔑めるようになるために努力するなんて、人間として最も恥ずべき行為だってな。つまり有能な奴ってのは、人間として終わっちまってるんだ。だからそんな命、終わらせてもいいんだ」


 ニヤリと笑う、ミミックのデウステイマー。


 かつてアレクシィは彼に言った。娘がデウステイマーになり得なかった場合、殺せるか? と。彼は二つ返事で頷いた。

 同国、同郷、同民族、同氏族――、血の色が赤かろうが緑だろうが、そんなものに意味などない。他人の尊厳を傷つけて恥じない者は、ことごとくおしなべてすべからく抹殺すべきものなのだ。


「教えてやる。数が多いとか偉いとか強いってことは、一方的に相手を殴ることは出来ても、絶対に逆らわれないことじゃないってな」

「――お父さんッ!」

「もうおまえの父なんかやめたッ! ヒエムス総督でも、ヤマト帝国人でもない! フラギリス・ペルダン・ベンガンサ! アレクシィ陛下がつけてくださった新しい名前だ!」


 ミミックが天井近くまで飛び上がり、獲物を狙う猛禽のように千華に向き直る。


「死――、なに?」


 『フラギリス』が驚いたような顔をした。視線が千華から、千華の背後に移動する。千華は振り返った。次の瞬間、入り口の外開きドアが内側に向かって押し曲げられ、蝶番と共に宙を舞う。

 押し入ってきたのは、トラやライオンほどの大きさをした四足獣だ。三つの首を持つ黒い犬。ヘルゲイター第4号、サーベラス。


「伏せて!」


 即座に千華はしゃがみ込む。サーベラスが首の一つから火炎弾を放つ。ミミックは一瞬で灰となった。魔犬は千華を飛び越えて着地、盾になるかのように四肢を踏ん張る。


「いいなあ千華、出来の良い子って奴は運もいい! 頼まなくても助けの手が差し伸べられるんだから!」


 サーベラスの後に続いて入ってきた童嶋○△□が千華の前に歩み出るのを見て、千華の父だった男は忌々しそうに舌打ちした。


「おまえのことは陛下から聞いてるよ、降神師のガキ!」

「陛下……? アレクシィのことですか?」

「そうだよ、○△□君。この人はリ・アージュのデウステイマーだよ」


 アシータが○△□に歩み寄る。それを見て、敵は嘲笑うように口元を歪ませた。


「幽霊なんかおれには興味ないから放って置いたが、厄介な奴を呼び込んでくれたもんだ」

「あなたの鞄が神獣ってのは見ればわかりましたよ。てっきり娘さんを助けに来たのだと思いました。この子が呼ばなけりゃ、帰ってたところでしたよ」


 千華の父がやってくる少し前、○△□は偵察のためアシータを総督府に送り込んでいたのだった。千華がミミックに襲われそうになった際、千華の父が急に動きを止めたのは、そして○△□がなりふり構わず飛び込んできたのは、アシータが大声で助けを呼んだからである。


「私、あなたなんか呼んでないけど?」


 アシータの姿も見えなければ声も聞こえない千華が会話についていけず眉をひそめる。


「いや、千華さんじゃなくてね」

「……というか、幽霊って?」

「まあ、その話は追々」


 ○△□は総督と向き合う。


「ミミックの擬態に気がついたのか。すごいな、変化させたおれにも見分けられないこともあるのに。さぞかし才能のある奴なんだな、おまえ。おれみたいな弱いデウステイマーのことなんか、自分1人でどうとでも出来るって見下してるんだろうな」

「見下しも尊敬も同情も期待もしてません。あんたなんかに何の関心もない」

「そういうのを見下してるってんだよ、ムカつくガキだ……!」

「ええ。俺も、子供を手にかけようとする親なんてのは大嫌いですね!」

「お生憎様だが、もうおれは親でもなければ総督でもない」


 フラギリスはポケットの中のもう役に立たない御霊石を捨て、回収した13粒のうち1つを――いや、全てを両手でわしづかみにする。


「掴まって、鳳さん! アシータさんも!」


 血相を変えて、○△□はサーベラスにまたがると千華の身体を引っ張り上げた。アシータも事情がわからないまま魔犬の背にしがみつく。総督府から飛び出してきたサーベラスに、総督府を包囲していた武装警察、野次馬、離れるに離れられない様子で見守っていた総督府の職員達が驚きの声を上げる。


 総督府が爆発したのは、その次の瞬間だ。



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