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悪役令嬢はぼっちになりたい。  作者: いのり。
第2章 高校1年生 夏休み

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第23話 夏休みの計画。

第2章開始です。

ぼっち成分控えめな章です。

よろしければお付き合い下さいませ。

「いずみんは夏休み何か予定あるー?」


 1学期の終業式の日、いつねさんにそう訊かれた。


「いえ、特には。家で勉強していると思います」


 誘拐事件からのあれこれで滞りがちになっている予習を進めなければ。

 祖父の図らいで家庭教師をつけてもらえることになっている。


「じゃあさー。どこかみんなで遊びに行かない?」

「私は遠慮し――」

「オレんとこの別荘に来るか?」


 脊髄反射で断ろうとした私の言葉を冬馬が遮った。

 今の絶対わかっててやっているだろう。


「おー。久しぶりやなー」

「いいですわね」


 ナキと仁乃さんは乗り気らしい。


「遥や実梨たちも来るか?」

「えっ!? わ、私もいいんですか?」

「佳代ちゃん、さっちゃんどうする?」

「冬馬様の別荘……」

「行くしかないでしょ」


 遥さん、実梨さん、佳代さん、幸さんも来るらしい。


「いいなぁ。俺も混ざりてー」

「来るか?」

「いいのか!? 話が分かるな、大将!」


 そして嬉一も追加。


「あんまり人が多くなってもなんですので、私はやはり――」

「よーし、みんなで遊ぶか。じゃあ、計画を立てないとな」


 またも冬馬に遮られる私。


「別荘ってどこなのー?」

「軽井沢だよ」

「べたやろ?」

「でも涼しいですわ」


 私も何度かお邪魔したことがある。

 というか、一条家も軽井沢に1軒避暑用の別荘があるのだ。

 一条家は海外にも別荘があるけれど、先日の誘拐事件がたたって、しばらくは安全重視ということになっている。

 この辺りの事情は、東城家も二条家も同じだ。


「軽井沢か……。海はないよな……」

「嬉一君、泳ぎたかったの?」

「違うわよみのりん。こいつのお目当ては私たちの水着に決まってるわ」

「やらしい」

「ふ、不潔ですっ!」

「ち、違う! 俺は純粋に泳ぎたかっただけで――」


 とても分かりやすい嬉一に、実梨さんはボケで、佳代さん幸さん遥さんは冷たい目で応じる。


「別荘のすぐそばに湖があるぞ。プライベートビーチならぬプライベートレイクだな」

「まじか!」


 嬉一の目が輝いている。


「佳代さんの仰るとおりのようですわね」

「でしょう?」

「やらしい」

「不潔です」

「きーくんは分かりやすいねー」

「だから違うって!」


 何が違うというのだろう。


「いや、オレも見たい」

「わいもや」

「そっかー」

「仕方ありませんわね」

「恥ずかしいけど……」

「みのりんは意外に――もが」

「そうそうプロポーションが――もが」

「2人とも余計なことは言わないでね?」

「俺の時と反応違い過ぎねー!?」


 佳代さんと幸さんの口を塞いだのは、もちろん実梨さんである。

 そうか、実梨さんは凄いのか。


 嬉一の立ち位置が段々分かってきた気がする。

 避難訓練の時には、こんなに気安い関係になろうとは思いもしなかった。

 人間関係というのは分からないものである。


「和泉もちゃんと水着持ってこいよ?」

「まだ行くとすら言っていないのですけど」

「強制参加や」

「いずみんがいなくてどうするのー」

「お姉さまの水着姿……はぁはぁ」

「に、仁乃さん?」

「みのりん、見ちゃダメよ」

「百合ごちそうさまです」

「さ、幸さん?」

「実梨と遥の普通さが眩しいぜ……」


 私も普通枠だと思うんだけどなぁ。


 うやむやのうちに私も参加することになり、話題はいつにするかに移った。


「お盆の時期は避けた方がいいよな? オレや和泉は当然として、みんなも親戚づきあいがあるだろ?」

「せやな……」

「ですわ……」

「庶民でよかったー」

「いつねちゃんが庶民だったら、私はどうなるんだろう……」

「みのりん、比較の対象が間違っているのよ」

「そうそう。ナキ君や仁乃ちゃん、いつねちゃんだって十分お金持ち」

「冬馬様や和泉様は規格外ですからね」

「俺は完全に庶民だぜ」


 いや、百合ケ丘に来ている時点でもう庶民ではないと思う。

 私立の中でもかなり学費が高い方だからね。


「一応、確認しておきますけれど――」


 私は気になったことを口に出した。


「皆さんの想定しているお盆って何月何日ですか?」

「ん? 8月15日の前後だろ?」

「せやな」

「だねー」

「そうですわ」


 私もその理解だけど――。


「え? 7月15日前後じゃないの?」

「だよね」

「うんうん」

「ですね」


 仲良し3人組と遥さんが異議を唱えた。

 更に――。


「俺の実家は毎年変わるな」


 嬉一はまた別の意見だった。


「確認しておいて良かったです」

「どういうことだ、和泉?」

「一口にお盆と言っても、地方によって時期が違うんですよ」


 一番広く知られているお盆は、新暦の8月15日前後である。

 ほぼ全国的に使われ、この理解が一番人口も多い。

 でも、一部の地域では新暦の7月15日前後、沖縄では旧暦の7月15日なのだ。

 

「お中元もお盆と同じ時期だったり、それだけは違う時期だったりとか、結構ややこしいんです」

「ほう。そうなのか」

「知らんかったわ」

「あたしもー」


 昔からの慣習が徐々に廃れつつある昨今、私たちくらいの年齢でこういうことを意識している人間は少ない。

 お祖父ちゃんお祖母ちゃんが、子ども夫婦やさらにその子どもと一緒に暮らしていた時代は、自然と受け継がれていた知識らしいのだが。

 あとは、会社勤めするようになると、この手の付き合いが増えるので自然と覚えるらしい。

 ちなみに私は祖父から教わった。


「じゃあ、どうする? 間をとって8月の頭くらいにするか?」

「それくらいが妥当でしょうね」

「わいはかまへんで」

「あたしもー」


 みんな異論は無いようだった。


「じゃあ、取り敢えず8月1日から1週間に仮決定な。各自家の人に許可を取るように。細かな調整はこっちでするから、何かあったら連絡くれ」

「へいへい」

「はーい」

「お姉さまとバカンス!」

「宿題、早めに片付けておかないと」

「みのりん、分担しようよ」

「佳代ちゃん、ずるはダメ」

「と、冬馬様の別荘……。楽しみです」

「水着……水着……っ!」


 そんな訳で、冬馬の別荘にお邪魔することが決まった。

 流されてるなぁ、私。


「和泉、ビキニで頼む」

「絶対に嫌です」

 お読み下さってありがとうございます。

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