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おにく
「おにくが一頭、おにくが二頭……」
「牛をそんな風に数えるな。それとも何だ。食いたいのか? 肉」
二人の男女が牧場に来ていた。その女の方が、食い入るように牛を見つめている。
「べ、別にそんなんじゃないし。せっかくダイエット成功したんだから」
「どっちにしろこいつは乳牛だ。食えんぞ」
「だから違うってば!」
「なら、いいけど……お、見ろよ。仔牛だ」
「あっ、本当だ。お父さんもいるみたい」
二人の視線の先、牛の親子が三頭仲良く草を食んでいた。大変微笑ましい光景だった。
「……なんか、いいな。親子って」
「うん。私も、欲しいな……子供」
「……それ、どういう意味だ?」
吹き抜ける風の中。彼女は一瞬唾を飲み、唇を結んで……やがて、ゆっくりと開いた。
「仔牛の方なら食べられるんでしょ?」
「わかった。焼き肉行こう」




