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消しゴム
けしごむくんはとってもお人好しでした。なので、頼まれごとをすると、断ることができませんでした。誰かが間違える度に、けしごむ君は笑ってそれを直しました。来る日も来る日も、笑って直しました。そして、そのたび、けしごむくんのからだは、黒く、小さくなっていくのでした。けしごむくんは、ほんとうはいやでしたが、優しいので、それでもずっと笑っていました。
そしてとうとう、けしごむくんは、文字を消すことができなくなりました。途端に、けしごむくんに話しかける人はいなくなりました。前は、あんなに忙しかったのに。そしてけしごむくんは、捨てられてしまいました。
暗いごみ箱の中で、けしごむくんは思いました。『僕って、なんだったんだろう』けしごむくんは笑おうとしましたが、できませんでした。心から笑うことを、知りませんでした。そのとき、けしごむくんは初めて泣きました。誰にも知られず、泣いたのでした。




