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彼女までのあと○メートル
ほんの薄い、数ミリメートルにも満たない壁。その向こうに、彼女はいる。
彼女はいつもそこで輝き、僕へいろんな声や、表情を届けてくれる。もちろん、僕はそれに応えようとする。しかし、たった数ミリの薄い壁は、それを許してはくれない。
なぜだろう。手を伸ばせば、こんなに近い。手を重ねることも、彼女の輪郭をなぞることさえできるのに。それは君に届くことはない。こんなに近いのに、こんなにも遠い。なんて、もどかしいんだろう。
分かっている。これは、心の距離。二人のあいだの、悲しい行き違いが生んだ壁。
ならば。僕がその壁を破ってみせる。僕の勇気で。君との距離を無くしてしまおう。
待ってて。すぐ、行くから……。
「……それで先生、例の患者の容態は?」
「彼か? ひとまずは落ち着いたよ。でも、やっぱりわからないな。どうして、テレビに頭から突っ込もうなんて思ったのか……」




