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夢見がちなお姫様と濡れない雨
お姫様はずっと、厳しく躾られて育ってきました。決められたことをなぞるだけの、退屈な日々。遊ぶことさえ、自由にできません。ですから姫にできることと言ったら、想像することぐらいでした。姫は暇を見つけては、頭の中に夢を膨らませていました。
ある雨の日のこと。姫は外を見ながら思いました。雨に濡れてみたいな、と。雨の日、姫が空を見ると必ず、傘がありました。濡れると風邪を引くからだそうですが、風邪がどんなものかさえ、姫は知りませんでした。
姫は早速想い描きました。土砂降りの雨の中、一人の女の子が踊っています。綺麗なドレスが泥だらけになるのも構わずに、ただ、笑ってステップを踏んでいて、そしてそれは、とてもとても気持ちがよいのです。
だから姫は待ちます。いつか自分を、夢の中から、本当に雨の中へ連れ出してくれる人を。手を差し伸べる王子様を、ずっと待っているのです。




