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電気の切れかけた部屋
男が夜間警備の勤務をしていた。するとふと、向かいのマンションの、上の方の部屋の電気が明滅していることに気がついた。「電灯が切れかけてんのかな」男は呟いたが、だからと言って何をするわけでもなく、ただいつも通り、勤務を続けた。
しかし、また翌日も、その次の日も、それは直らなかった。奇妙に思った男は、交代で来る勤務の同僚に、その話をした。すると同僚は、それを一緒に見ようと提案してきた。男も、特に断ることはしなかった。
男が教えた場所を、同僚ははじめ、何の気なしに眺めていたが、突然、弾かれたように「モールスだ」と言った。
それが信号の一種である事は、男も知っていた。ただ、解読法までは知らない。「何て言ってるんだ?」男は同僚に訊いた。
しかし何故か、その顔はひどく青ざめていた。同僚は、震える声でそれを読み上げた。
「かんきんされてる たすけて……」