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初対面
俺が徴兵として駆り出されてからどれくらい経ったろう。銃声、悲鳴、爆発。無限に続くかと思われた地獄の日々から幾年。俺はやっと、祖国の土を踏むことができた。
会いたい人は沢山いた。だが俺は、何よりも先に妻の所へと向かった。戦場では、彼女の存在だけが、俺の心の支えだった。期待と喜びを胸に、俺はひた走った。
ようやくたどり着いた家の扉を、俺は静かに叩いた。返事の後、しばらくして、扉は開いた。そこには……あの頃より少し老けた、でも何も変わらない、妻の姿があった。
「久しぶりだ。会いたかった……」俺は感涙し、妻に駆け寄ろうとした。だが妻は、怪訝な顔をして、俺に言った。
「ええと、どちら様? 初対面ですよね?」
たまらず、走り出していた。本当はわかっていた。こんな姿で、俺だと分かって貰える筈がないと。俺は泣いた。火傷だらけの、醜い顔を覆い隠して。




