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言葉にならない声
数年前の話。私は、大きな古屋敷に家族と住んでいた。先祖代々の土地らしいが、やはり、家中のあちこちにガタが来ていた。特に私の部屋がそうだった。歩いたり、風が吹くならまだしも、何もなくともキィキィ音が鳴るのだ。父が言うには、木材の軋む音らしかった。最も、私は納得していなかったが。
しかしその家も、やはりもう限界らしく、思い切って建て直すことになった。私たちは建設業者を呼び、新築の計画を練った。
後日。屋敷を取り壊している最中だった。私が様子を見に来ると、土方達がどこか騒がしく、丁度、私の部屋のあった辺りに集まっている。不思議に思い、話を聞くと「いや。ちょっとまずいモノが出てきましてね」とのことらしい。私は、指された方を覗き見た。
鳥肌が立った。あの、よく聴いていた音。木材の軋みなどではなかった。“呼んで”いたのだ。私を、誰かを。昔から、ずっと。
頭蓋骨。空洞の目が、私を見つめていた。




