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まつたけ
秋。私は弟とキノコ狩りに来ていた。今は二手に分かれて探しているところだ。
「おっ、シイタケじゃないか」好物を見つけた私は、「ちょっとくらい」と弟に隠れ、それを一つ、口に入れた。するとどうしたことか、体がどんどん大きくなっていく。
「うわああ!」同時に、弟の声がした。まさか、弟も? 大きくなっているおかげで、弟はすぐに見つかった。だが、弟は地面に倒れたまま、全く動かない。そばには、食べかけのキノコ。「これは……ドクテングダケ!」私は弟の体を揺すり、呼びかけた。「おい、しっかりしろ! おい!」
すると木の陰から、弟がもう一人現れた。「どうしたの、兄さん」私が驚き、訳を聞くと弟は「マツタケを食べたんだ。したら、自分が一人増えた気がして……」と言った。
急に、電話がかかってきた。
たぶん、どこかの姫様がさらわれたんだろうな――そんな気がした。




