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ヒーロー
保育園に行くと、息子が泣いていた。手にウルトラマンの人形を握りしめ、ずっと俯いている。訳を聞いても黙るばかり。なので僕は仕方なく、息子を車に乗せた。
車内でも、会話はなかった。僕はカーラジオのスイッチを入れた。“あなたが今聴きたい歌をお届けするこの番組! リクエストはメールかツイッターから……”場違いに陽気な声。「ちょっと待ってて」僕はコンビニで車を止めた。店内に入った僕は、すぐにメールを打ち、ラジオアプリを起動した。あの陽気な声が聞こえる。“……次の曲は、誰もが知ってるあの歌、「ウルトラマン」!”
暫くして僕は戻った。「お待たせ! アイスでも食べて……って、何かもう、元気そうだな」「遅いよ、パパ……」息子は呆れたように「あ~あ。パパがウルトラマンだったらよかったのに」と意地悪く笑った。……うん、それでいい。僕はヒーローにはなれないけど。君の涙は、拭ってあげたいから。




