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山の神
その村には、因習があった。季節が変わるごとに一人、若者を山奥に置いてこなければならない。もし怠れば、山の神の怒りに触れ、大災害が起きる、というものだ。
あるとき、また一人の若者が捧げられようとしていたところ、旅の僧が通りかかった。僧は事情を聞くと、自分が代わりに山へ入るよう申し出た。村人は彼を頼ることにした。
そして、夜。彼の目の前に、黒い、陰のような像が浮かび上がった。僧には自然と、これが山の神なのだと分かった。神は言った。
「私はずっとここで、地震を食い止めている。しかしそのために、エネルギーが必要なのだ。いつも若い者達を、すまない……」
僧は村へ戻り、このことを話した。しかし村人は誰一人として信じなかった。それどころか、僧が無事に帰ってきたことで安心したのか、もう生け贄は出さないことになった。僧は仕方ないと諦め、村を出て行った。
その村はもう、地図には載っていない。