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陸の王者

 陸の王と呼ばれた者がいた。もはや地上で彼にかなう者はなく、全てが彼の思いのままだった。何不自由なく好物を手に入れ、何にも怯えることなく睡眠をとった。陸に生きる全ての存在が、頂点を前にひれ伏した。

 彼は間違いなく幸せだった。富、力、名声。すべてに満足していた。もう何も、望む必要もない。……だというのに、彼は同時に、一抹の違和感を持っていた。何かが足りない。欠けている……。

 ある時、川辺で寝ている王の体の上を歩き回る者があった。彼はそれを捕らえようとした。するとそれは、素早く川へ飛び込み、逃げた。王さえも及ばぬほどの俊敏さだった。

 王はそれを追った。しかし追いつけない。それは彼にとって、初めての経験だった。

 いつしか王は、海へと出ていた。水面は荒れ狂い、音を立てている。王は気付いた。

(そうか。私が求めていたのは……挑戦、なのだ……)

 やがて王は、波の中へと消えていった。

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