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vault that borderline!
あの壁を越えた向こうには、何があるのだろう。ずっと、それだけが疑問だった。
「決してあの壁を越えたいと思ってはいけない」……ずっと聞かされてきた言葉だ。僕だけじゃない、ここに生きる誰もがそう教わっていた。だからみんな当然のように、壁を越えることは悪いことだと思っている。
だけど僕は違う。僕は信じている。あの向こうには素晴らしい世界が広がっていて、それを隠す為に、僕にそんなことを言っているのだ。僕は壁を越えるため、高跳びの練習をした。今では誰も、僕より高くは跳べない。
さあ、準備は万端だ。今こそ、ここを出るときだ。未だ見ぬ未来へ、境目のその先へ。あの空に向かって――僕は跳んだ!
ん? く、苦しい! 息が、できないっ!
「あーあー、あれ程出るなって言ったのに」
こ、え……? ああ、ダメ、だ。薄れゆく意識の中で僕は、最後の言葉を聞いた。
「ったく。アロワナ飼うのも楽じゃないな」