14/84
乱打戦
昨日、地元の少年野球団に所属している甥が相談を持ちかけてきた。曰く、「うちのチーム、打線はいいのにピッチャーがダメなんだ。どうしたら勝てるかな」とのこと。ここは叔父として、期待に応えなければ。そう思った俺は、「いっそ、乱打戦に持ち込めばいい。打たれたら打ち返す。もっと打たれたら、もっと打ち返す。攻撃は最大の防御とも言うしな」と返した。暴論の様に思えるが、甥は納得していたようなので良しとしよう。
さて、そろそろ試合が終わる頃だ。そう思うと同時、玄関のドアが開いた。「お帰……り」意気揚々と迎えた俺の目の前にいたのは、予想したどんなでもない、真っ赤に顔が膨らんだ甥の姿だった。「あ、兄さん。なんかね、急に相手のピッチャーに殴りかかったって。なんでそんなことしたのか……」付き添ってきた妹が、沈痛な面持ちで言った。俺は呆気にとられた後に一言、叫んでいた。
「乱打戦ってそういう意味じゃねーから!」