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入部

サバイバルゲーム?

確か敵味方に分かれてお互いを撃ち合い、弾を当てられたら失格。それで自分達のチームが全滅したら負けっていうあれか?ていうかサバゲー部なんてあったのか?


「ふふっ、サバゲー部なんて聞いたことがないって顔してますね。」


うおっ、読まれてる!まさか人の心を読めるのか?恐るべしサバゲー部部長・・・


「まあそれも仕方ありません。この部は去年の7月、やっと学校に認可されたばかりなのですから。」


へぇ、部活と認められてからまだ1年経ってないんだな。それにしてもよく認めてくれたな、学校も。確か創部にはいろいろな審査を受けなければならないはずだが。


「とりあえず、これからよろしくね、東雲君(しののめくん)。」


そう言って唯は俺に右手を差し出してきた。俺はその手を取ろうとした・・・がギリギリのところで思い出した。


「いやいや、俺はまだ入部するなんて言ってないぞ。確かに俺はミリタリー好きだけどサバゲーなんてやったことないし。」

「妹さんから聞いてますよ。でも残念、そこまで拒否されるなんて。」


そんなに強く拒否した覚えはないのだが。しかし俺もそう簡単に引き下がるわけにはいかない。面倒くさいことはお断りだ。


「でも人数の問題的にあなたが入ってくれないとかなり困るんですよ。何とか考え直してはもらえませんか?」


唯にジッと見つめられ、だんだんと心の天秤が傾いてきた俺だったが、そこにあの爽やか野郎が口を出してきた。


「東雲君はFPSゲームが得意だそうですね。ならば僕とゲームで勝負しませんか?」


何と言う提案だ。唯一と言っても過言ではない俺の特技で勝負しようとは。男としてこれは逃げるわけにはいかない!


「いいだろう。受けて立つぜ!」


速攻で誘いに乗った俺は、ゲームで決着?をつけることになった。こいつもそれなりの自信があるのだろうが、大会優勝経験を持つ俺に勝てると思っているのだろうか?いや、おそらく遥は俺の真の実力を知らなかったようだ。

そんな俺の目の前で、爽やか男がてきぱきとゲームの準備を始める。ん?なぜ部室にP○3があるんだ?俺が疑問を口に出そうとした時、画面から女性の悲鳴らしきものが聞こえてきた。どうやらセッティングが完了したようだ。


「それでは始めましょう。これはホラーハウスというゲームで、この薄気味悪い屋敷から脱出するというゲームです。ジャンルはちゃんとFPSなので安心してください。」


・・・あれ?俺が思っていたのと全然違うぞ?俺が考えていたのは戦場を銃撃戦を繰り広げるタイプの方で、そもそもこんなホラー要素が多いのなんてやったことないぞ・・・


「制限時間内に脱出できればクリアなのですが、それだけでは勝負になりませんから、より早くクリアした方の勝ち、ということにしましょう。」


そう言ってコントローラーを手渡してきた。どうする、このままでは負けが確定だ。必死に考え込むが妙案は出てこない。逃げるしかないかと辺りを見渡すといつの間にか囲まれていた。しかも皆逃がさんぞ、とでも言っているかのように俺から視線を離さない。

唯一の味方だと思われた妹に目で助けを求めるが天使のような笑顔でスルーされた。そうだった、こんなことになったそもそもの原因はこいつなのだ。

正に四面楚歌。はぁ、覚悟を決めて負け戦に行かねばならんのか。俺はコントローラーを握り締め、画面の前へと向かった。


「お手やわらかに」





40分後。俺は負けた。襲いかかるゾンビなどは俺の敵ではなかったのだが、無駄に複雑な屋敷に迷ってしまい、同じ所をぐるぐると回っているうちに30分経ってしまいタイムオーバー。一方爽やか男は手馴れたものでたった10分で脱出してみせた。

釈然としないが負けは負けだ。男らしく約束は守らなければなるまい。


こうして俺は、サバゲー部という奇妙な部に入部することになったのだ。


「改めてよろしく、東雲君、遥ちゃん。」


再び差し出してきた唯の右手を今度こそ俺は握り返す。遥は心底楽しそうだったが、残念ながら俺は女子に対してほとんど免疫が無い。手を握るなんてなおさらだ。顔は赤くなり、手も震えていたが、唯にはバレなかったと信じたい。


「それじゃあ部員の紹介をするわね。今東雲君と勝負をしたのは鷹村春樹、通称ハル君よ。」

「鷹村です。よろしくお願いします。」


爽やか男が俺と遥に爽やか~な笑顔を向ける。う~ん、ハル君って雰囲気じゃないなぁ。


「そこの茶髪も一応。彼は影山タケル。あんな髪してるけど悪い奴じゃないわ。」


紹介されたタケルは俺達の方を向いて軽く手を挙げた。まあ確かに悪い奴ではなさそうだ。


「そこで読書しているのは瑞澤水綺(みずさわみずき)。そしてこの子は陽野詩織(ひのしおり)。全員2年生よ。」


水綺・・・いや水綺さんが俺を見つめてくる。何か付いてるのだろうか?顔を触ってみるが何もなかった。彼女はその後も数十秒ほど俺を見ていたが、興味をなくしたのか今度は遥を見つめた後再び読書へと戻っていった。


「これからよろしくお願いします。」


詩織さんはそう言ってペコリと頭を下げた。それに釣られて俺もついつい頭を下げてしまった。


「私は東雲遥、1年です。皆さんよろしくおねがいします!」

「東雲瞬です。」


遥は元気いっぱいに、俺はテキトーに挨拶。


「みんなの自己紹介も終わったし、今日は歓迎パーティーね!ハル君、準備よろしく!」


部長の唯の指示で春樹は何かを取り出した。よく見るとそれはゲームのディスクで、さっきから電源が点きっぱなしのP○3に挿入した。有名なリアル系FPSで、俺が最も好きなシリーズだ。


「第2回ゲーム大会の始まりよ!さあさあ皆、準備して!」


唯の言葉を受けて俺達は画面の前へと移動した。コントローラーが2つしかなかったので優勝を決めるとなるとトーナメント戦しかない。ジャンケンで組み合わせを決めると、なんの因果かいきなり俺と春樹の勝負となった。

先に相手を規定回数殺す、というシンプルなルールだ。ふははは、先程の借り、今こそ10倍にして返してやるぜ!




ゲーム大会という名の部活動はたっぷり夕方まで行われた。トーナメントは俺が優勝。その後も何回やったかわからないほど対戦したが、そこでも負けなしだった。借りは10倍以上にして返してやったぜ。しかし水綺さんに


「次は必ず勝つから。それと面倒だから水綺でいい。」


とライバル認定されてしまった。彼女は俺に次ぐ勝率だったのでおそらく第1回大会は彼女が優勝したのだろう。

FPS初挑戦の遥はというと、予想通り全敗であった。まあ慣れるまでが大変だからな。おかげで遥の特訓に付き合わされる羽目になったのだが。


それにしても楽しかった!俺も遥もすっかりこの部に打ち解けた気がする。タケルも春樹もいいやつだったし、唯や詩織さんとも会話出来るようになった。水綺さ・・・水綺とも仲良くなった気がする。遥もずっと笑顔だったし、俺と同じ思いだろう。

あれ?でもここって何部だったっけ?


最後に唯の


「明日は8:00にルーインタウンに集合だから遅れないように。それでは解散!」


という言葉で部活動は終了。


「逃げるなよー新人君。」


タケルの声が聞こえてきたので軽く手を振って了解の意を示す。最後に遥が頭を下げ、俺達は部室を後にした。


帰り道、俺は唯の告げた集合場所であるルーインタウンがどこにあるか知らないことに気づいた。まぁ調べればわかるか。


家のパソコンで調べた結果ルーインタウンは自宅から自転車で30分ほどの場所にあることがわかった。場所は調べたので俺はパソコンの電源を落とし、明日に備えて珍しく早めにベッドへ入ったのだった。










感想批評何でも来いです!

でも手厳しいのは勘弁・・・

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