夜に体育館で見たもの
小4か小5の頃(どっちだったかは忘れた)、サッカーのクラブ活動で夕方まで練習することが多かった。スポーツクラブや中学以降の部活みたいに大会があるというわけでもなかったが、楽しかったのでいつもそんなぐらいの時間までサッカーをしていた。
ある日、顧問(正確には違うっぽいが他にそれっぽい言葉が見当たらない)に言われて体育館を見に行った。何をするでもなく、ただ「体育館を見てきてくれ」みたいなことを言われて、見に行った。
夕方(というか冬だったのでほぼ夜)の体育館はかなり暗くて不気味だったので、とりあえず中に入って、すぐに出ようとした。
しかし、そうはいかなかった。明らかにおかしい。いつもと何かが違う。
目が慣れてくると、向こうの壁のあたりにぼんやりと、大きな人型のシルエットが浮かんできた。デカい。2メートルどころじゃない。そして普通より首が長い。
そう思ったあたりで、さらに目が慣れた。
それは地面に足をつけていなかった。
バスケットゴールに括ったロープで、首を吊っていたのだ。
ショックで尻もちをついた私は、まず泣いた。足が立たない、腰に力が入らない。とにかく助けを呼ぼうと、そう思っても声帯がぷるぷる震えるだけで、まるで声が出ない。寒いのに汗が止まらない。こんな感覚は初めてだった。
少しして、慌てた様子で顧問がやってきた。
電気をつけ、「大丈夫か」と私に声をかける。
確か私は「大丈夫」と答えた気がする。
遺体は中年の男性で、明るい状態で見るのはかなりキツかった。
いろんなものが出たり体液や糞尿が垂れ流しになっているというような状態ではなかったが、異様に伸びた首と、生気のまったくない、完全に死んでいるとひと目で分かるあの顔は、言葉で言い表せる恐怖のレベルを完全に超えていた。
それからのことはショックのせいかほとんど覚えていないが、遺体を床に下ろした際に、マネキンみたいに体勢が全く変わらなかったことだけは覚えている。
遺体の身元は分からなかった。リーマンショックの頃の事件だったので、それでじゃないかと親たちが噂していたが、15年以上経った今でも何も分かっていない。
という事件を思い出したので、拙い文章だけど書いてみた。この時私、新聞に載ったんだ。顔写真とかはないけど、「サッカーの練習をしていた児童が発見」みたいな感じで、分かる人には私と分かる記事だった。ほんと、不況って嫌だね。




