新しい事を始めたい
放課後の空き教室。
西日に照らされた机に、佐伯が勢いよく両手をついた。
「決めた! 山本くんを特訓できる部活を作ろう!」
山本が目を丸くする。
「……特訓?」
佐伯はにやっと笑った。
「実はね、既存のものじゃなくて、未知でワクワクする部活を作りたかったの。
でも“何やるか”が決まらなくてさ。せっかくだから、山本くんを守ることとくっつけちゃえばいいじゃん!」
俺は椅子を少し揺らして言った。
「……つまり、元からやる気満々だったわけだ」
「そう! どうせなら今までにない部活にしたいでしょ?
例えば……困ったときにどう動くか、相手のベクトルを逆転させる練習とか」
山本は小声でつぶやく。
「そんな部活ねえよ‥」
!?山本のくせにツッコミ入れるとは!
西村がペンを指先で回しながら口を挟む。
「部活として許可をもらうなら、活動目的をはっきりさせる必要があるからねー。
“困っている人の悩みを解決するためのスキルを鍛える部”って名目なら、通る可能性はある」
佐伯は目を輝かせる。
「なるほど……じゃあ、“助けることで自分も強くなる”部活!」
山本は顔面蒼白。みんなのオモチャにされてるのか?
──名前も形もまだないが、その芽は確かに息をし始めていた。