知識欲求
俺は西村をじっと見つめる。
西村はちょっと意識している。
「なあ……西村を見て思ったんだが……知識欲求って、俺たちが立てた仮説の“サイサイセオリー”の主流に入るんじゃないか?」
西村(私に気があって見てたんじゃないのね)
「‥そうだね。ただ“知識欲求”という表現だと狭い。
本当は“知ること”自体が、人間を動かすエネルギーなんだ」
黒板に力強く書き込む。
Learning Energy。
「食欲や睡眠欲と同じく、ラーニング・エナジーは基盤的なドライブだと私も思う
ただ一番の特徴は、他の欲求を勢いづけたり、逆にブレーキをかけたりすることだ」
⸻
西村は矢印を描きながら説明する。
「例えば――」
• 「食欲にかかれば、“もっと美味しいものを知りたい”と加速する」
• 「セフティ欲求にかかれば、“どんな危険があるか学ばねば”と慎重さが増す」
• 「ユナイト欲求にかかれば、“相手のことをもっと理解したい”と絆が深まる」
• 「ランク欲求にかかれば、“知らないと見下される”とマウント戦争が激しくなる」
⸻
佐伯がぱっと顔を輝かせる。
「わかった! それってさ……みんなのエンジンにドーンってガソリンぶち込むみたいなやつだ!」
西村は苦笑してうなずいた。
「ガソリン‥まあ間違ってはいない。
ただし――」
彼は黒板に新しくブレーキのマークを書き加える。
「知りすぎると逆に足が止まることもある。
リスクを調べすぎて挑戦できなくなるとか、情報を詰め込みすぎて動けなくなるとかだ……人間は、本能的に“情報の取捨選択”をしているんだ」
山本
「確かに、ネットニュースなんてそうだね。
膨大すぎて、みんなタイトルだけ見て“いる・いらない”を瞬時に選んでる」
西村は黒板に描いた「Learning Energy」の文字を囲むように円を描いた。
「じゃあ――人間は“知りたい”を全部満たしているのか? 答えはノーだ」
チョークが走り、四本の矢印が外へ伸びる。
セフティ/ユナイト/ランク/生存。
「実際には“取捨選択”が起きている。
何を知りたいかは、他のエナジー(欲求)に引っ張られて決まるんだ」
高橋
「具体的には?」
西村は一つずつ指を立てた。
• 「セフティに支配されているときは、危険やリスクの情報ばかり拾う。
例:地震速報ばかり気にする」
• 「ユナイトが優位なら、仲間や推しグループのニュースに敏感になる。
例:推しのSNS更新に即反応する」
• 「ランクが優勢だと、他人より上に立つための情報を漁る。
例:テストの平均点、株価ランキング」
• 「生存欲求が直結していれば、食べ物や睡眠法に目がいく」
⸻
山本
「じゃあラーニンエナジーって、いつも“どの欲求がハンドル握ってるか”で行き先が変わるってことか!」
西村は満足げに頷いた。
「その通りだ。
ラーニング・エナジーは常に燃えているけど、どのベクトルに進むかは他のエナジー次第なんだ」
西村は黒板に描いた「Learning Energy」の文字を囲むように円を描いた。
「じゃあ――人間は“知りたい”を全部満たしているのか? 答えはノーだ」
チョークが走り、四本の矢印が外へ伸びる。
セフティ/ユナイト/ランク/生存。
西村は一つずつ指を立てた。
• 「セフティに支配されているときは、危険やリスクの情報ばかり拾う。
例:地震速報ばかり気にする」
• 「ユナイトが優位なら、仲間や推しグループのニュースに敏感になる。
例:推しのSNS更新に即反応する」
• 「ランクが優勢だと、他人より上に立つための情報を漁る。
例:テストの平均点、株価ランキング」
• 「生存欲求が直結していれば、食べ物や睡眠法に目がいく」
部室のドアが開いた。
「……いい話してるじゃない」
朝比奈は椅子に腰かけ、書類を机に置いた。
「西村の言う通りよ。ラーニング・エナジーは一番操作しやすい。
資本主義はそこを徹底的に利用してきたの。“ランキング” “セール情報” “トレンド”……全部“知りたい”を燃やす仕掛けよ。
知らなければ不安になる、知ったら安心できる、でも次の情報が欲しくなる。
この循環が市場を動かす。
『これを買えば安全』、『みんな持ってる』、『持ってる人は偉い』――ね」
高橋 「西村も朝比奈もそのラーニンエナジー(知的欲求)で全国制覇狙ってますよね!?」
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西村は華麗にスルーで黒板に新しい円を描き、静かにまとめた。
「サイサイセオリー的に言えば、資本主義とは――欲求のエネルギーを増幅させ、外部からベクトルを与える装置だ」
国枝先生がコーヒーを口にしながら
(これは‥恋愛解析に入る前のフリとみた‥)




