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パーソナルスペース



放課後の校庭。

西日に照らされた砂の匂いの中、佐伯が小走りで手を振りながら近づいてきた。


「ねえねえ、人ってなんで近づきすぎると嫌がるの?」


……またお前か!

(この唐突さ、もはや才能だろ)


俺はグラウンドの端で笑い合うグループに目をやる。

肩を寄せ合っているやつもいれば、半歩離れただけでぎこちなくなる二人もいる。


「……圧力と摩擦」


佐伯がぱちぱち瞬きをして首をかしげる。

「圧力と摩擦って、物理のあれ?」


そこへ白衣の裾を揺らし、西村が現れる。

ポケットから巻尺を取り出し、にやりと笑った。


「心理的摩擦だね。距離が近すぎると心も摩耗しやすくなる」


そう言いながら、俺と佐伯の間に巻尺を伸ばす。

「ほら、90センチ。これがパーソナルスペース。超えると脳が“警戒モード”になる」


「わ、ほんとにメジャーで測るんだ!」

佐伯はくすっと笑い、わざと半歩近づいてみせる。


俺は付け加える。

「その警戒も安全欲求の一種やね。未知や危険の数値を足した距離」


西村が頷く。

「摩擦を減らすには潤滑剤が必要。人間なら“慣れ”や“小さな共通点”がそれになる。

逆に距離をとりたければその数値を大きくなる何かを足してやればいい」


「へぇ〜、じゃあ明日から共通点探して距離縮めてみよっかな!」

佐伯は肩をぽんと叩き、ひらひら手を振って駆けていく。



西村はじっと俺を見つめた。

「あなたの説明は理系の私にはしっくりくる。やっぱり面白い」


──人は距離を取りたがるのに、この二人はどうしてそんなに詰めたがるんだ?

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