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第7話バレた。終わった。

チュンチュン。

鳥が元気に鳴く。私は爽やかな気分で朝を迎えようと……



「お前は何者だ。何故氷室様の寝床に居て、氷室様は居ない。答えろ。じゃないと、足を切り落とすぞ」

「幸村。それで、どうしますか?」

こ、怖っ。

私は目を開けて入ってくる光景に顔を青くさせた。

幸村が私の首の横に刀を思いっきり差している。そして信之は幸村をたしなめながらも目を怖く光らせて問う。

というか何をいっているんだろうか二人は。私が貴方の言う氷室様なんだけど。どういうこと?

「あの、それってどういう……え?」

二人に聞こうと思い声を出してみると声に違和感を感じる。男の時の声より声が高い。

私は何かを察しそうになったがあり得ない、いや信じたくないと二人に改めて聞く。



「あのーお二方、私の今の状況と外見を教えて頂いても……」

そういうと二人は何言ってんだこいつと言っていないけど絶対言っている目を私に向けながら答える。

「……俺たちが目を覚ましたらお前がそこに居たから剣を抜いた。お前の容姿は、女だとしか」

「……」

私は血の気が引いていくのを感じた。こうなった以上隠し通すのは無理だと思い私は正直に話すことにする。

「あのっ、話すので剣をどけて下さると」

幸村はまだ警戒を解かないまま、剣を鞘に戻した。

「マ、マスカレード」

私は二人から目をそらしながら男の姿に変身する。

「「「……」」」

私は気まずさで下を見ながら、二人の様子をチラリと見る。幸村は驚きのあまり顔を硬直させており、信之は目を揺らしながら戸惑いが目に浮かんでいた。

「えっと、黙っていてすみません」

私は気まずさに耐えられなくてペコリと頭を下げた。



「おーい、三人とも。……どうした?」

声がした方へ振り向くと、信玄が服を着崩しながら首を傾げて聞いてきた。私は信玄にも説明しておこうと思い「解除」と言って元の姿に戻る。

「うおっ」

元の姿へと戻った私に信玄は思わず驚きの声を上げ、どういう事だと目を白黒にさせている。

「今まで黙っていてすみません。医者になるには男性になった方がいいと思ってこの不思議な力を使って男に変装してたんです。途中で話した方がいいとは思ったんですけど言い出しづらくて」

言い出しづらくて言わなかったのは大噓である。面白そうだからやっただけだ。

「すみません」

私は肩を落として言った。

「つ、つまり氷室様は男じゃなくて女なのですか?」

「まあ、はい」

「そんな……!だって昨日一緒に風呂入りましたけどそんな感じは」

「能力で体を男にしてたから……」

思った以上に深刻な問題へとなりかけているので笑って済ませることは出来ないなと私は思う。やっぱり騙してたのが駄目だったのかな。

信玄は驚いてるだけだけど幸村は少し傷ついたような顔をしている。信之は顔を下に向けていて表情は分からないけれど幸村と同じような表情だろう。


ダッ。


沈黙が流れ始めた時、信之は庭の方へと駆け出した。

「信之!」

私が信之を追いかけようと立ち上がろうとすると、ギュッと服の裾の部分を誰かに掴まれた。下を見ると、幸村が私の服の裾をギュッと掴んでいた。

「幸村……」

私は戸惑いながらも幸村の背中をさする。

どうすればいいの……?


◇   ◇   ◇   ◇   ◇


氷室様。

俺はそう心の中で呟く。



あの日俺はいつもと同じように病気にかかって伏せている母上に会いに行っていた。そこで氷室様と出会った。

最初はイケメンなくせしていつもと同じような医者かと思った。

だから俺は憎まれ口を叩いて彼を挑発した。それに怒って本性を表せばよかったのに彼は優雅に微笑みながら俺の事をお母さん思いだなんて褒めてくる。

変な奴だ。

俺は調子がくるって父上を部屋から連れ出し部屋の前で医者を待つ。それからすぐに二人分の気配を感じて、母上が起きたんだと部屋の中へ飛び込む。


「母上!」


最初に目に入ったのは母上が彼に迫っている姿だった。俺はそいつが誑かしたんだと思い、母上から離れるように言う。

母上から弁明が入るが、母上は誑かされているのだから言う事は当てにならない。

俺は彼の肩をぶんぶんと振っていたが、父上が間に入ったことでやっと冷静になった。俺は難病を直してくれて金も要らないと言う彼になんてことをしてしまったのだろうかと自分を責める。

「大丈夫ですよ幸村さん。気にしないで下さい」と彼は言ったがそんな訳にはいかないと思う。というか幸村さんって。この人に「さん」なんてつけてもらう筋合いは無いのに。

俺はそう思って彼に幸村と呼ぶように言ったが、分からなかったらしく、3回言う事になった。

顔を少し赤くさせながら言うと、彼はフハッと面白そうに笑う。



「なっ、なんで笑うんだよ!」

そう言うと俺が面白いとか意味がわからないことを言ってくる。しかしそう思っている間に彼は、いや氷室様は入口の戸に手をかける。

「なあ!」

俺は少し焦り気味に氷室様に声をかける。

「また会えるか?」

「きっとね」

そう尋ねると氷室様はフフと色気ある笑みを浮かべる。

「またな」

それに顔を赤くさせていると氷室様はそう爽やかな笑顔を俺に見せ、戸を閉じる。

いつか、早いうちに氷室様とまた出会えたら良い。

俺は玄関から足を動かさないままそう思った。


 ◇   ◇   ◇    ◇   ◇


何でですか氷室様。何故嘘をついていたんですか。あの時見せてくれた笑顔は作り物だったんですか。

俺はそう、答えられることのない問いを頭の中に張り巡らせる。

何故っ……。何故教えて下さらなかったのですか?あの俺が好いた性格も全て能力で作り出された偽物だったのですか?

俺はチラリと氷室様の方を見ると、氷室様は俺と兄上が走って行った方向を目で行っては戻っていた。

その姿に俺は思う。

氷室様は体を男にしたと言っていた。あの性格は、笑顔は、優しさは、彼、いや彼女の作り物ではない本当の素の姿だ。

このままでいいのか。いやダメに決まっている!自分の困惑だけで優しく強く太陽のような彼女を俺が引き止めてはいけない。

「氷室様……」

俺がそう小さな声で呟くと、氷室様は俺を不安そうに見つめる。

「すみません。俺はもうちょっと時間が必要なのでどうか兄上の所に行ってください」

そう言うと、氷室様は少し不安そうにしていたが顔を正して強くうなずき、「メタスターシス」と言って、視界から消える。

消えたとたん、お館様が見ているのも忘れてだらりと床へ寝そべる。



氷室様。

貴女が例え男ではなく女だとしても、嘘を付いていたとしても、俺は貴女の事を信じます。貴女の事を一生信じ、守り続けます。

あの日俺に向けてくれた優しさを、笑顔を守るために。

そう思っているうちに視界がぼやけていく。



氷室様、俺は貴女を――。

最後は幸村視点です。次も知花じゃない人からの視点です。

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