第22話信じられない出来事に目を丸くする【信玄】
「皆よ我に明るき未来を授けたまえ。雲外蒼天……!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
知花は、振るった刀を持ちながら荒く呼吸する。
「うおおおおおおおっ」
間が開いて歓声が湧く。男は、”木刀で斬られた”刀をポカンと見つめていた。
そう、木刀が刀を斬ったのだ。
……信じられないな。刀とはいえ木を加工したものに、鉄が斬られるなんて。
「…ハッ……ハハッ!」
そう俺は笑い声を上げる。
相変わらず、知花は面白い。見ていて飽きない。
「え……いや夢ですかね。皆さん、私の目が壊れました。木刀が刀を斬るなんてことあり得ない……!」
司会者の言葉は真っ当だ。普通、木刀で刀を斬ることなんて絶対に出来ない。
周りの人たちも、「俺もだ!」「現実だ!」と言っている。刀を木刀で斬った当人は、男へ手を差し出している。
「ありがとう大輝さん。貴方すごく強いのね。負けそうになっちゃった。楽しかった。本当にありがとう!」
男は握手に応じず、「修行して強くなってお前をたたきのめしてやる。首洗って待ってろ」と知花を睨み、サッサと待機所へ戻っていった。
「次は藤宮晴と天宮真」
将来が楽しみな晴と、堂々としている男だ。
「開始」
晴は駆けながら真に近づいていき、刀を鞘から抜いて構える。真も構えたが、晴より綺麗ではない。
この勝負、晴が勝つ。
そう俺は確信する。
二人は互いに駆けて、刀を振るう。すると、真はガクリと倒れる。
「真様ぁぁぁ。チッ!あいつ負けたふりをしとけばいいものを」
「きっと、真様を脅してわざと負けさせたんだわ。なんて奴なのかしら」
根拠も無いのに言いようが酷い。晴の相手は、何故対戦相手が女のファンが沢山居る奴なのだろうか。たまたまが続いているのであれば、晴は不幸体質だろう。
そのまま、戦いは続いて良い決勝戦となる。
「皆さん誰がやるのかお分かりでしょうが言いたいと思います。知花さんと晴さんです。今回凄いですね。どちらも初参加です。しかも知花さん女性ですよ」
男女差別と思われても仕方がないような言葉が司会者から出てきたが、そんなことより観客から冷たい言葉が飛び出ていることが気になった。
「どうせ負けるんだから辞退しなよ」
「こいつが決勝戦だなんて」
「そんなに強くない人に当たっただけなのに」
「調子に乗るな」
相変わらずだ。
晴は顔をうつむかせている。
見かねた知花が晴に何かを言うと、彼は顔を上げて驚くように彼女を見つめる。
さらに知花は観客に穏やかに言う。
「皆さん、私彼の戦い見てましたけど、彼は強いと思いますよ。そうじゃなくても、真剣に彼と戦いたいので静かにしてくれますか?言い方厳しくなって、ごめんなさい」
そうするると、会場が静まり、知花に視線が集まる。
流石だな。
「お願いします」と司会者に彼女が声を掛けると、司会者はハッとし慌てたように「開始」と言った。
知花は軽くジャンブしてから、間合いを詰める。晴は分かっていたように刀を振り上げる。しかし、その表情は不安そうだ。
知花は刀を避け後ろに回り、木刀を振り上げる。その間に晴は知花へ振り向き、刀を構える。
カキーン
刀がぶつかる音が静かな会場に響く。
晴のは真剣だが、知花のは木刀だからこのような音は出ないはずだがと、その音を疑問に思う。
知花は木刀に力を込めるが、振る前に晴に横に行かれ、前に少し態勢が崩れる。だが、足を横に出し、転ぶよう仕掛ける。
しかし、晴は足を少し上げ、ギリギリのところで避ける。
知花と、剣術では見た感じ実力が同じくらいだ。凄いな、士官できないだろうか。
そう感心する。
知花はもう一度木刀を振り、晴に近づく。
彼女が口を動かし何かを言うと、晴は目を見開き、頷いた。
知花は満足したように笑顔を見せ、足を振り上げた。晴はそれが当たる前に後ろへのけぞり、刀を振る。
知花は刀を受け止めては受け流し、木刀を振ることを繰り返す。
彼女の攻撃が当たって晴が怯んだ隙に、知花は体を空中へ上げた。
「花は風に吹かれて散り、葉が落ちるように世は移り変わっていく。世の無常を示せ。飛花落葉。」
そう彼女が言うと、どこからか現れた花が、フワッと会場全体に舞い広がった。
花により、視界から2人が隠される。
花が視界から消えると、俺はバッと2人を見る。
……知花が、後ろを向いている晴の肩に優しく木刀を置いていた。その姿が何故か神々しく見えた。勝敗が決まった場ではなく、神聖で優しげな雰囲気の場に思えた。
知花が晴の首に置いてある木刀を下ろすと、晴は彼女に振り返る。
「知花さん」
「晴さん……」
「ありがとうございます。強いんですね」
「こちらこそありがとうございます。晴さんも強くて……」
2人は取り繕った言葉を交わす。
「「……」」
沈黙が流れ、知花が口を開く。
「晴さん、自信を持ってくださいね。貴方は自己肯定感が低すぎです。自信を持つに貴方はふさわしい人間ですよ」
「……ありがとうございます」
信じてないような目だ。
陰口を言われすぎて、何も信じられなくなったのかもしれない。
「本当ですよ!自信を持ってください」
彼女は顔を近づける。
すると、晴は目を大きく見開き、徐々に顔を赤らませていった。
「……っ。分かりました。……ありがとう、ございます」
晴は頬を少し赤くさせながら、そうふんわりと微笑んだ。
落としたな。
そう確信する。
「では表彰式に移りましょう」
司会者が話を進め、知花に何が欲しいか聞いた。
「一位には商品が贈呈されますが、何にしますか?」
「んー。ちょっと待ってくださいね」
そう言い、頭を悩ませていたが、「あ!」と言い、刀だと言う。
「まあいいですけど……本当にそれで良いんですか?」と、司会者はもう一度確認をする。
「はい。駄目ですか?」
「いえ、……ではそれでいきますよ」
司会者は、部下らしき人から刀を貰うと、それを見せるように高く上げる。
「大会優勝者、知花さんに三日月宗近を」
「は!?」
「うおおおおおおっ」
『三日月宗近』という名に俺は耳を疑った。どういうことだと考えようとしたが、会場に響き渡る歓声に邪魔される。




